人生の目的は音楽だ!toraのブログ

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スダーン最後の音楽監督公演を聴く~東響第618回サントリー定期でシューベルト「第2交響曲」再び!

2014年03月30日 09時07分03秒 | 日記

30日(日)。昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第618回サントリーシリーズ定期演奏会を聴きました。プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番”皇帝”」、②シューベルト「交響曲第2番変ロ長調」で、①のピアノ独奏はゲルハルト・オピッツです。指揮は3月いっぱいで東響の音楽監督を退任し4月から桂冠指揮者に就任するユベール・スダーンです 3月22日に東京オペラシティコンサートホールでオール・ハイドン・プログラムを指揮しましたが、昨日のコンサートは実質的に東京での東響・音楽監督として最後の演奏会です

 

          

 

サントリー定期はいつも9割位は入っているのですが、昨夕は残席ゼロではないかと思うほど文字通り満席の状況でした コンマスはグレブ・ニキティン。チューニングが終わり、ソリストのオピッツがスダーンとともに登場します ピアノの前に座るオピッツを見ていたら、まるでベートーヴェンの音楽に向き合うブラームスのような風貌です 彼はドイツの巨匠ウィルヘルム・ケンプの直弟子で、ケンプの音楽的な伝統を受け継ぐピアニストです

ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第5番」は『皇帝』の標題で親しまれています。この呼び方は出版社のクラマーが、この作品に相応しいものとして付したものですが、ベートーヴェンのスケッチ帳にも「戦闘へ、歓喜の歌」「攻撃」「勝利」などの言葉が書きこまれているように、『皇帝』の名に値する最高峰の作品です

第1楽章の「アレグロ」は、オーケストラの総奏に導かれて、勇壮なピアノ独奏が入ってきます オピッツは終始、頭や身体を大きく揺らすことなく自然体でピアノに対峙します。これは冷静沈着な演奏をしていた師匠ケンプの演奏スタイルと同じではないか、と思いました

終盤にはカデンツァが置かれていますが、この作品のカデンツァはベートーヴェン自身が作曲したものです。それまではピアノ奏者の創意に委ねられていたのですが、この作品の楽譜には「演奏者によるカデンツァ不要」という指示が書きこまれています。難聴が進行していたベートーヴェンにとって、「勝手な解釈をして演奏してもらっては困る」という気持ちが強かったのではないか、と思います

オピッツのピアノは一音一音が粒立っていてとても綺麗です 特に高音部の輝きが美しく響きます。力強く、また、抒情的です。スダーンは東響をコントロールし、しっかりとサポートします

終演後、スダーンと握手をしてオケにも頭を下げ、聴衆の拍手に応えます。ニコニコ顔のブラームスを見ているような気がしました

 

          

              (終演後、プログラムにサインをもらいました)

 

休憩時間にチラシを見ていたら、スダーン+東響のシューベルト「交響曲第2番・第3番」のCDが1,000円で売っていることが分かり、ロビーのCD売り場に行くと「サイン会あり」の文字が目に入ったので、躊躇なく買い求めました。絶対サインもらわねば後で後悔するぞ

 

          

 

ピアノがステージ左サイドに片付けられ、オケは約50人ほどに縮小します。いよいよ東京における最後の演奏曲目・シューベルト「交響曲第2番変ロ長調」です この曲を含めて、スダーン+東響が2008年に演奏した「シューベルト・チクルス」は「第21回ミュージック・ペンクラブ賞」を受賞するなど音楽界で大きな話題を呼びました 私は2008年に78回コンサートを聴きましたが、今振り返ってみてその年のベスト・コンサートだったと確信します

交響曲第2番は1814年から15年にかけて作曲されましたが、公開初演として記録に残っているのは1877年のロンドンにおける演奏会とのことですから、何と62年後のことです。シューベルト、可哀そう

スダーンの指揮で第1楽章「ラルゴ~アレグロ・ヴィヴァーチェ」が始まります。冒頭はモーツアルトの交響曲第39番に曲想がよく似ています。ゆったりしたメロディーが続いていたかと思うと、一転、躍動感に溢れたアレグロ・ヴィヴァーチェに移ります ひとことで言えば「疾走する青春」とでも表現したらよいでしょうか 前へ前へと前進する音楽が心地よく響きます。第2楽章「アンダンテ」の冒頭は、ロザムンデの音楽にちょっと似ています。主題と5つの変奏なのですが、主題の輪郭を留めながら変奏していくので「シューベルト特有の、同じメロディーの繰り返しか」と思ってしまいます しかし、美しいメロディーです

第3楽章「メヌエット」を経て、第4楽章「プレスト・ヴィヴァーチェ」に移ります。冒頭部分はロッシーニ風のメロディーです。再び「疾走する青春」のような溌剌としてリズミカルなメロディーが展開され、フィナーレを迎えます

終演後、スダーンは会場一杯の拍手とブラボーに何度も頭を下げ、オーボエの池田肇、フルートの甲藤さち、クラリネットの吉野亜希菜、ファゴットの福士マリ子を立たせ、次いでオケ全体を立たせて聴衆の声援に応えます スダーンは深く頭を下げて涙をぬぐい、頭を上げて、拍手を制してお別れの挨拶をしました。マイクなしで英語だったので、よく分かりませんでした ここに紹介できず残念です。どなたか、分かった方は教えてください。今日、同じプログラムの演奏会がミューザ川崎で開かれるので、その時、同じ挨拶をされるかもしれません

アンコールに、シューベルトの「ロザムンデ」間奏曲第3番を穏やかに感動的に演奏しました 東京での公演はこれで終わりです。もちろん、これからも桂冠指揮者として何度か東響を振りますが、これまでの10年間、素晴らしい演奏を聴かせてくれたことに心から感謝したいと思います

 

          

 

終演後、サインをもらおうとロビーのCD売り場に行くと、だれも並んでいないので、訊いてみると、サイン会場は通路の奥のスペースでやるとのことだったので、出口に向かう聴衆の波に逆らって、通路の奥に進みました すでに20人近くの人がサインを求めて並んでいました。後ろを振り返ると通路の突き当りまで列が続いていました。20分ほど待たされ、やっとサイン会が始まりました。向かって左にスダーン、右にオピッツが並んでサインするようです

私はCDジャケットの表紙部分を抜き出して、そこにスダーンにサインしてもらいました 隣のオピッツにはプログラムにある彼の写真のところにサインをもらいました。CDにサインをもらうのはほとんどがスダーンで、オピッツはプログラムばかりだったので、ちょっと気の毒に思いました まあ、しかたないですね。スダーンは東京での”有終の美”ですから

あらためて、スダーンにお礼を言います。長い間お疲れ様でした。ありがとう 素晴らしい演奏の数々、決して忘れません。これからも桂冠指揮者としてわれわれ聴衆を楽しませてください

 

          

          

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