人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

外山雄三 ✕ 上野耕平 ✕ 新日本フィルで大澤壽人「サクソフォン協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第7番」他を聴く~《ルビー》第34回定期演奏会

2020年10月17日 07時19分43秒 | 日記

17日(土)。わが家に来てから今日で2207日目を迎え、韓国の人気アイドルグループBTSが所属する芸能事務所「ビッグヒットエンターテインメント」が15日、韓国株式市場に上場し、時価総額が8兆7300億ウォン(約8千億円)となった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     メンバーの誰かが兵役に取られたりスキャンダルに巻き込まれたら株価はどうなる

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」と「生野菜サラダ」を作りました 昨日の午後はコンサートのハシゴだったので、午前中に作り置きしておきました こういう日は朝から忙しいです

 

     

 

         

 

昨日、午後2時から すみだトリフォニーホールで新日本フィル「《ルビー》第34回定期演奏会」を、午後7時からサントリーホールで読売日響「第602回定期演奏会」を聴きました ここでは、新日本フィル《ルビー》演奏会について書きます

プログラムは①外山雄三「交響曲」、②大澤壽人「サクソフォン協奏曲」、③トマジ「アルト・サクソフォンと管弦楽のためのバラード」、④ベートーヴェン「交響曲 第7番 イ長調 作品92」です 演奏は②③のサクソフォン独奏=上野耕平、指揮=外山雄三です

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの新日本フィルの並び。コンマスは西江王子です 座席は前後左右が空席の市松模様です。11月末まではこのままの配置でいくようです

 

     

 

1曲目は外山雄三「交響曲」です この曲は外山雄三(1931年~)が名誉指揮者を務める大阪交響楽団の委嘱により2018年(87歳の時!)に作曲、翌2019年2月に作曲者自身の指揮で初演された単一楽章形式の交響曲です

外山氏は とても89歳とは思えない矍鑠たる足どりで指揮台に向かいます 冒頭のブラスによる力強い響きが印象的です 中間部は弦のアンサンブルが美しく、重松希巳江のクラリネットが華を添えます そして再び力強い響きが戻りフィナーレを迎えます 全体を通して聴いた印象は、枯れた作曲家からは決して出てこないエネルギーを感じました

2曲目は大澤壽人「サクソフォン協奏曲」です この曲は大澤壽人(おおさわ  ひさと:1906-1953)が1947年に作曲した日本初のサクソフォン協奏曲と言われています 大澤壽人はボストン大学音楽学部とニューイングランド音楽院で学び、その後、フランスに渡りパリのエコール・ノルマル音楽院で学んだという日本人としては稀有な作曲家です 大澤壽人で思い出すのは2017年度「サントリー芸術財団  サマーフェスティバル」で、片山杜秀氏のプロデュースにより大澤壽人の①コントラバス協奏曲(世界初演)、②ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」、③交響曲第1番(世界初演)が演奏された同年9月3日の公演です コントラバス独奏は都響の佐野央子さん、ピアノ独奏は福間洸太朗氏で、山田和樹指揮日本フィルの演奏でした ピアノ協奏曲第3番の「神風協奏曲」は「神風特攻隊」の神風ではなく、朝日新聞社所有の飛行機「神風号」のことです この曲の第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」ではサクソフォンによるバラード調の音楽が奏でられますが、その公演でサクソンフォンを吹いていたのが上野耕平氏でした 昨日のコンサートの直前に開かれたワンコイン講座での小室敬幸氏の解説によると、上野氏は「大澤壽人という人はこんなに素晴らしい曲を書いているのか」と感銘を受け、調べてみたら「サクソフォン協奏曲」を作曲していることが分かったので、是非演奏したいと思い、自分で音符を書き起こしたとのことです したがって今回の演奏は上野氏の熱望によって実現したプログラムだったと言えます

この協奏曲は故・オヤマダアツシ氏の解説によると単一楽章とのことですが、外山氏は3つの楽章に分けて指揮をしました 冒頭はティンパニの連打を背景にクラリネットとファゴットが主題を奏でます ジャズの要素が取り入れられているな、と感じます 中間部では上野氏の独奏サクソフォンが良く歌います 興味深かったのは最後の部分で、なぜか外山雄三氏の代表作「管弦楽のためのラプソディー」の民謡調の音楽が聴こえてきて、思わずニヤリとしてしまいました これを聴いて、アメリカとヨーロッパで活躍したクリスチャンの大澤壽人と言えども、やはり日本的なDNAは音楽に表れるのだなと思いました なお、大澤は自筆スコアのタイトル部分に並行して「ラプソディ」という文字を書いていたそうです

参考までに前出の大澤壽人「ピアノ協奏曲 第3番 ”神風協奏曲” 」は「交響曲 第3番」とのカップリングでCD化されています。素晴らしい曲です。是非聴いてみてください

 

     

 

プログラム前半の最後はトマジ「アルト・サクソフォンと管弦楽のためのバラード」です    この曲はアンリ・トマジ(1901-1971)が1938年に作曲した作品で、スザンヌ・マラールという詩人による道化師の憂鬱をテーマにした幻想的な詩にインスピレーションを受けて作曲したものです   「アンダンティーノ」「ジーグ」「ブルース」の3楽章から成ります

「アンダンティーノ」ではアルト・サクソフォンのアンニュイな雰囲気が良く出ています  「ジーグ」では乗りのいい音楽が奏でられます   「ブルース」では再び  嘆きのような物憂い(アンニュイ)な雰囲気の音楽が奏でられますが、フィナーレは速いパッセージで明るく結ばれます    この曲では、上野耕平氏の表現領域の広さと完璧なまでの技巧の裏付けを感じました

かくして、年齢差61歳の協演による珍しいサクソフォンを主役とする2曲の演奏に 惜しみない満場の拍手が送られました

 

     

 

プログラム後半はベートーヴェン「交響曲 第7番 イ長調 作品92」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1811年から翌12年にかけて作曲、1813年にウィーンのルドルフ大公邸で私的に初演され、同年ウィーン大学講堂で公開初演されました 第1楽章「ポコ・ソステヌート:ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

新日本フィルはこの曲を今年8月4日(火)の「フェスタサマーミューザ2020」参加公演で演奏しています 指揮は 9月1日から新日本フィルの Composer  in  Residence  and  Music  Partner に内定していた久石譲氏でした 正直言って、私は久石譲という名前で連想したのは「となりのトトロ」の のんびりしたテーマ音楽でした ところが、演奏が始まるや その先入観は見事に打ち砕かれ、高速テンポによる軽快な音楽運びにビックリしました 良い意味で予想を裏切られた気がします したがって、「同じ曲を同じオーケストラが演奏するのに 違う指揮者がタクトをとるとどうなるのか」が最大の関心事になります

第1楽章冒頭の和音は、ズシンとくる重さを感じました 音楽が重力を持っているかのようです 想像以上に遅いテンポです しかし、それだけにベートーヴェンの「第7番」の構造が明確に浮き彫りにされます 第2楽章はさらに遅くなりますが、弦楽セクションのアンサンブルが極上の美しさです 第3楽章でベートーヴェンの求める速度は「プレスト」ですが、外山 ✕ 新日本フィルの演奏は、せいぜい「アレグレット」です しかし、ここまでくると演奏の遅さを感じなくなってきます いつの間にか「これが普通のベートーヴェンなんですよ」と説得されてしまっているかのようです これには既視感(聞き覚え?)があります。それは1960年代に大活躍したオットー・クレンペラーの演奏です。スローテンポながら説得力があるのです それは第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」に至ってさらに明確になりました。普通の指揮者であれば第4楽章だけはテンポアップしてフィナーレを飾ります しかし、外山氏はまったくテンポを上げず、スローテンポのままフィナーレに向かいます 低弦のうねりが素晴らしい 外山氏はベートーヴェンの演奏に対する確固たる信念を持っています それは、8月に新日本フィルを指揮した久石譲氏の第7番が「ベートーヴェンはロックだ」というコンセプトだったのに対し、外山氏の第7番は「現代のスピード感に溢れるベートーヴェンの演奏に対するアンチテーゼ=異議申し立て」だということです 私には、外山氏が「コロナ禍でこれまでの行動様式が見直しを余儀なくされる中、演奏についても一度落ち着いて考え直してみませんか」と問題提起しているように思われました

クレンペラーが生きていたら、きっと外山氏のような指揮をしただろうな、と思います クレンペラーが大好きな私にとっては申し分のない素晴らしい演奏でした

いずれにしても、同じオーケストラでも指揮者が違うと全く違う演奏になる これがクラシック音楽を聴く醍醐味です

 

     

 

この日は、新日本フィル事務局パトロネージュ部の登原さんと開演前、休憩時間、演奏後に「フェイス・シールドの着用や市松模様の座席配置はいつまで続くのか」や「この日の演奏の感想」から、私のブログの話題に至るまで、いろいろとお話しができてラッキーでした 登原さんから「マスクを着用しない入場者とのトラブルもある」という話も出ましたが、私も社団法人の事務局に長年勤め、講座・セミナーを運営した経験があるので、そういうご苦労は良く理解できます 一人の客がマスクをしないためにその会場でコロナ感染者が出た場合、そのオーケストラだけでなく、オーケストラ全体が再び厳しい規制の対象に置かれることになります 「俺は主義としてマスクはしないんだ」というトランプみたいな頑固な客に対しては、理詰めで根気よく説得することが求められます

このことに限らず、事務局の皆さんのご苦労は大変だと思いますが、オーケストラを支え、ひいては日本の文化を支えるために頑張っていただきたいと思います 頑張れ新日本フィル


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2 コメント

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Unknown (miminga33)
2020-10-17 16:06:57
こんにちは。
昨日は同じ会場にいらしたんですね!
マエストロのベートーヴェン、素晴らしかったですね!
返信する
いつも拝見しています (tora)
2020-10-17 17:11:30
miminga33さん、コメントありがとうございました。
同じ会場とは奇遇でしたね。
いつもブログを楽しく拝見しております。
お子さんの成長が楽しみですね。毎日が大変ですが。
これからも気軽にコメント頂ければ嬉しいです
返信する

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