11月1日(日)。昨日の朝日朝刊に「ウィーン・フィル 来日し来月公演」という記事が載っていました 超訳すると、
「ウィーン・フィルが11月に来日すると、招聘元のサントリーホールが30日、発表した コロナ禍における海外オーケストラの本格的な来日公演は、これが初めてとなる サントリーホールによると 今回は、チャーター便での来日や公演会場と宿泊先の往復のみという行動制限の徹底、4日に1度のPCR検査などの感染予防措置を取るとし、『できる限りの対策を施し、より安全・安心な公演の開催を目指す』としている 来日公演は、11月5日の北九州から始まり、6日は大阪、8日は川崎、9、10,13,14日は東京で開かれる」
このコンサートがきっかけとなり、次第に来日公演が増えていくことを祈るばかりです 参考までに指揮は全公演ともワレリー・ゲルギエフで、11月10日の公演は①プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」から、②同「ピアノ協奏曲第2番」(P:マツ―エフ)、③チャイコフスキー「交響曲第6番」です チケット代はS席:39,000円、A席:34,000円、B席:29,000円、C席:24,000円、D席:19,000円となっており、現在販売中です 個人的には オペラならともかく、オーケストラ公演でこの金額は出せません
ということで、わが家に来てから今日=11月1日で記念すべき2222日目を迎え、4ケタぞろ目にひと言感想を述べるモコタロです
2222ってアヒル4羽の散歩にも見えれば 誰かの小学校時代の通信簿にも見えるな
昨日、新文芸坐で「幸福」と「ダゲール街の人々」の2本立てを観ました
「幸福」はアニエス・ヴァルダ監督による1965年製作フランス映画(79分)です
フランソワ(ジャン=クロード・ドルオー)と妻のテレーズ(クレール・ドルオー)は幼い2人の子どもと幸せな家庭を営んでいた 休日になると家族そろって近くの森にピクニックに行くことを習慣にしていた ある日、フランソワは仕事でよその町に行き、郵便局で働くエミリー(マリー=フランス・ボワイエ)と出会うが、偶然 エミリーはフランソワの住む町に引っ越す予定だと分かる やがてエミリーが引っ越してくると、2人の仲は深くなっていく エミリーはフランソワが妻子持ちであることを知っているが、何の罪悪感も抱いていない ピクニックに行った時、「あなた、この頃とっても嬉しそうね」と尋ねるテレーズに、フランソワはエミリーのことを告白する テレーズは「あなたが幸せなら私はいいの」と言って言葉では許す しかし、うたた寝から醒めたフランソワはテレーズがそばにいないことに気が付く 彼女は池の中で溺死体となって発見される 誰もがフランソワを、愛妻を事故で亡くした男として慰め、エミリーも悲しんでくれる やがてエミリーが子どもたちの世話をし、家事を手伝うようになる 休日になると4人は何事もなかったかのように森にピクニックに出かける
フランソワ役のジャン=クロード・ドルオーと妻のテレーズ役のクレール・ドルオーは私生活の上で本当の夫婦で、子供たちも彼らの実子です どうりで子供たちが自然に両親に懐いているわけです
フランソワがテレーズにエミリーのことを告白するシーンでは、フランソワはこう語ります 「僕たちは区切られたリンゴ畑の中にいる でも畑の外にもリンゴはあるんだよ」と。するとテレーズは女の感で「あなた、誰かほかの女性に愛されたのね」と言います フランソワは躊躇しながらも「僕は正直だから嘘をつけない。だから話そう」と語り「僕にはお前を抱く腕がある。でも別の腕が別の女性を抱くんだ」と言います 女性の立場から言えば、「何と身勝手な男だ、許せん」といったところでしょう テレーズはフランソワの言うことに理解を示したような態度をとりますが、本心は信頼していた夫に裏切られたという悔しさと悲しい思いでいっぱいです その本当の気持ちを彼に伝えるため、子供たちを残して自ら命を絶ったのです そのとき初めてフランソワは、自分自身のあまりの身勝手さと能天気さに気が付くのです
この映画では、モーツアルトの2つの曲が全編を通して効果的に使われています 1曲は映画の冒頭で家族そろってピクニックに行った野原で咲く向日葵の花のバックで流れる「アダージョとフーガ ハ短調 K.546 」の「フーガ」です この曲はモーツアルトが1783年12月29日に完成した「2台のピアノのためのフーガ」ハ短調K.426 を編曲し、冒頭にアダージョの序奏を加えた作品です 「フーガ」は映画の前半では管楽器のみで演奏されますが、テレーズが死に、エミリーが家族に迎えられてからは弦楽器のみで演奏されます 同じメロディーでも家族の構成員が異なると違った曲想に聴こえるということを表しているかのようです
もう1曲は「クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581」です この曲は1789年9月29日に完成した協奏曲で、クラリネットの名手アントン・シュタードラーのために作曲されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「メヌエット」、第4楽章「アレグロ・コン・ヴァリアツィオー二」の4楽章から成ります この映画では第1楽章「アレグロ」が使われていました なお、この作品は元々クラリネットと弦楽四重奏のための五重奏曲ですが、この映画では「フーガ」と同様に、クラリネットと他の木管楽器(オーボエ、バス―ン等)によって演奏されていました
アニエス・ヴァルダ監督は2019年製作映画「アニエスによるヴァルダ」の中で、映画「幸福」における音楽について、「モーツアルトの音楽は明るい中に、どこか陰があるように感じるので使用することにした」旨の発言をしています ヴァルダ監督のこの発言は「クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581」についてコメントしたものだと思いますが、モーツアルトの音楽の本質を突いています この曲は悲しみや暗さを感じさせる「短調」ではなく 喜びや明るさを感じさせる「長調」の曲です しかし、曲を聴いていると幸せな気持ちを抱くと同時に、なぜか寂しさや孤独感を感じます こうした二律背反的な性格こそがモーツアルトの音楽の特徴だと言えます 誰が見ても「幸福」そのものにしか見えない夫婦や家族でも、お互いに本当は何を考えているのかは分からないし、ちょっとした出来事がきっかけで バランスの取れた人間関係が崩壊していく危うさを孕んでいる・・・ヴァルダ監督はそんなメッセージをモーツアルトの音楽に託したのかもしれない、と思いました
「ダゲール街の人々」はアニエス・ヴァルダ監督による1975年製作西ドイツ・フランス合作映画(79分)です
この映画は、アニエス・ヴァルダ監督のドキュメンタリー作家としての代表作で、自身が事務所兼住居を構えるパリ14区のダゲール通りに暮らす人々の姿を捉えた作品です
パリ14区、モンパルナスの一角に、銀板写真を発明した19世紀の発明家ダゲールの名を冠した通りがある パン屋、肉屋、香水屋など様々な商店が立ち並んでいる。そんな下町をこよなく愛したバルダ監督が、温かいまなざしで人々の姿を映し出しています
この作品はアニエス・ヴァルダのドキュメンタリー作家としての代表作です 近所に住むごく普通の人たちを撮ったにすぎませんが、その普通の人たちが実に”いい顔”をしているのです マジシャンがやってきて、レストランみたいな所でマジックを披露するシーンがありますが、近所の理髪店の主人やパン屋のおかみさんをマジックのアシスタントにして楽しむ様子は何とも微笑ましい雰囲気です 当時は、近所の人たちが集まってマジックを楽しんだりしていたのかもしれません マジシャンが女性の頭に箱を被せて外から何本もの刀やナイフを刺すシーンではムソルグスキー「禿山の一夜」が流れ、他のマジックシーンではベルリオーズのオペラ「ファウストの劫罰」の「ラコッツィ行進曲」が流れていました
ヴァルダのナレーションを聴いてると、人間が好きなんだろうな、と思います
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