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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

吉田裕史指揮ボローニャ歌劇場フィルハーモニーのプッチーニのオペラ・ハイライトを聴く

2014年09月25日 07時00分43秒 | 日記

25日(木)。昨夕、渋谷のオーチャードホールでボローニャ歌劇場フィルハーモニーのコンサートを聴きました これは指揮者・吉田裕史が同フィルの芸術監督に就任した凱旋公演です。プログラムは第1部がプッチーニの歌劇「蝶々夫人」よりハイライト(コンサート形式)で、第2部がプッチーニの歌劇アリア集です

私がこのコンサートを聴こうと思ったのは、吉田裕史(よしだ・ひろふみ)という名前に覚えがあったからです 昨年、京都の清水寺の舞台でイタリアの古いオペラ(マルティーニ神父『ドン・キホーテ』『音楽の先生』)を上演したのが彼だったのです。(マルティーニ神父って、モーツアルトの手紙に出てくるあの有名な神父?)。NHKテレビのニュースを見て知りました。後でネットで調べると、その公演は吉田が芸術監督を務める”響きの森”オペラの祭典(KYOTO OPERA FESTIVAL)であることが分かりました 清水寺の舞台という限られた空間の中でイタリアの知られざるオペラを上演するという意欲と情熱を垣間見て、彼はどんな指揮をするのか見てみたいと思ったのです

したがって、興味は指揮者にあり、オーケストラや歌手ではありません。イタリアで約250年の歴史を誇るボローニャ歌劇場の管弦楽団の主要メンバーで構成されるというボローニャ歌劇場フィルハーモニーを聴くのはもちろん初めてのことです

吉田裕史は東京音楽大学指揮科と研究科を修了し、ウィーン国立音楽大学マスターコースでディプロマを取得、1999年に文化庁派遣芸術家海外研修員として渡欧し、バイエルン、マンハイム、マルメの各歌劇場で研鑽を積みました 2010年にマントヴァ歌劇場音楽監督に就任、2014年の今年ボローニャ歌劇場フィルハーモニーの芸術監督に就任しました

 

          

 

自席は1階34列9番、かなり後方のセンターブロック左通路側席。客席は8割くらい埋まっている感じです ざっと見渡してみると、子連れも多く、普段聴きなれたコンサートとは一味違う客層のように感じました と思って前の席を見ると、小学生3人組が座っています。いや~な予感がして”こりゃだめだな ”と思いました。残念ながら予感は的中してしまいました

1階席中央を見ると、今回の主催者である「さわかみオペラ芸術振興財団」の澤上篤人氏が、来客者に挨拶をしています。彼は長期保有型の株式投信「さわかみファンド」の伝説的なファンドマネジャー(現・会長)です。彼が芸術の分野に興味を持っているとはちっとも知りませんでした

拍手の中、オーケストラのメンバーが登場します。総勢50名強の中規模編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラというオーソドックスな態勢をとります チューニングが終わり、指揮者・吉田裕史が速足で登場します。客席に一礼し、振り返ってタクトを振り下ろす様を見ていて「若き日の小澤征爾によく似ているな 」と思いました。かなりキオイを感じますが、イキオイがあり情熱的です

その瞬間からプッチーニ「蝶々夫人」の世界に誘います。かなり速いテンポで音楽を進めますが、オケによく歌わせます プログラム前半は「蝶々夫人」のハイライトです。なぜこの曲を選んだのかに対し、吉田は「つい先日、9月19、21日に京都の二条城で屋外公園を行いましたが、その時のプログラムです」と答えていました。有名なアリア、二重唱、三重唱をソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンが入れ替わり立ち代わり歌います はっきり言って、歌手陣の名前は一人も知りません。が、聴いていていくうちに、いかにイタリアという国の声楽のレベルが高いかがよく分かります とくにアントニオ・デ・パルマは明るく軽いテノールで会場を圧倒しました また、当初の出演者降板で急きょ登板したソプラノのサントディロッコの歌う「ある晴れた日に」は感情がこもっていてなかなか聴かせました

曲を聴いている間、前の席の少額生3人は落ち着きがなく、始終身体を動かし、内緒話をしています 「残念ながら、この席は外れだな」と半ば諦めました そんな彼らは会場が拍手で湧くと、歌手たちに向けて手を振ったりしてアピールしています。「おまえら、ろくに歌を聴いてねーだろうが」とツッコミを入れたくなりましたが、ここはグッと大人の我慢です

曲の合間にフリーアナウンサーの司会者が、吉田を通訳にして歌手たちにインタビューしましたが、メゾ・ソプラノのコライアンニは、日本に来て「ラーメン」が大好きになったそうで、打ち上げには「ラーメン」を食べると宣言していました

25分の休憩(ちと長いが、歌手陣の咽喉を休ませるには仕方ないか)が終わり、席に着いたのですが、前の症我苦生どものすぐ前の席が空いていたので、ズルをしてその席に移りました いつまでも落ち着きのない笑学生の犠牲になっている義務はありませんから。正当防衛です

 

          

 

プログラム後半はプッチーニのアリア特集です。最初にバリトンのジョッシが歌劇「エドガール」から「この愛を、俺の恥を」を深みのある声で歌い、次いでメゾ・ソプラノのコライアンニが「マノン・レスコー」から「マドリガル」を弦のピチカートに乗せて軽やかに歌いました

インタビューで「オーチャードホールの音響はどうですか?」と訊かれたジョッシが「素晴らしいホールです」と答えると、すかさずコライアンニが「その答えはパーフェクト」とフォローしていました。個人的なことを言えば、オーチャードホールはコンサートホールの中で一番嫌いなホールだったのですが、耐震工事でリニューアルをした後は音響が良くなったような気がします 以前は、音が頭の上をスースーと通り越していくような感じでした

次にパルマが「トスカ」から「妙なる調和」を、続けてサントロディロッコが「マリオ!マリオ!マリオ!」を歌い、そのまま二重唱を歌い上げました。二人とも演技ともども凄いと思いました

ここでオーケストラにより「マノン・レスコー」から「第3幕への間奏曲」を演奏しました その後、「ボローニャ歌劇場フィルハーモニーの特徴は何ですか」という質問に、指揮者・吉田は「イアリアのオーケストラは音が明るいのが特徴ですが、このオーケストラはとにかく良く歌う、というより歌いまくる。カンタービレというか、音のうねりというか、そうしたところが特徴です」と答えていました

次に「ジャン二・スキッキ」から「ああ、勝利だ、勝ったぞ!」がジョッシのバリトンで歌われ、最後に「トゥーランドット」からリュウのアリア「氷のような姫君の心も」をサントディロッコが切々と歌い上げ、カラフの有名なアリア「誰も寝てはならぬ」をパルマが感動的に歌い切りました

フィナーレは全員がステージに登場し、カーテンコールを繰り返し(カーテンはないけれど)、最後に一同が手に手を繋いで日本語で「ありがとう」と挨拶して、拍手とブラボーが飛び交う中公演を閉じました

この公演はS席5,000円、A席3,000円、B席2,000円と、外来オケとしては破格の安さになっていますが、これはスポンサーの「さわかみオペラ芸術振興財団」がかなりの部分で経費を負担しているから可能なのだと思います 澤上篤史氏は指揮者・吉田裕史に長期投資するつもりでいるようです

今回、初めて吉田裕史の指揮を観て聴いて、将来が楽しみな指揮者だと思いました オペラだけでなく、純粋なオーケストラ曲も聴いてみたい気がします

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