5日(金)。昨夕、ヤマハホールで「二大クラリネット五重奏曲の世界」公演を聴きました プログラムは①モーツアルト「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」、②ハイドン「弦楽四重奏曲第39番ハ長調」、③ブラームス「クラリネット五重奏曲ロ短調」です。クラリネットはクロード・フォーコンプレ、弦楽四重奏はクァルテット・エクセルシオです
クロード・フォーコンプレは1978年から国立リル管弦楽団首席奏者に就任、今年8月下旬に日本で開かれた第2回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールで審査員を務めました 一方、クァルテット・エクセルオはヴァイオリン=西野ゆか、山田百子、ヴィオラ=吉田由紀子、チェロ=大友肇の4人から成る常設の弦楽四重奏団です
自席はE14番、センターブロック5列目の右端です。会場は満席 拍手の中、フォーコンプレとエクセルシオのメンバーが登場します。フォーコンプレを真ん中にして、左から西野、吉田、大友、山田という態勢をとります 女性陣はデザインこそ異なるものの色はパープル系のドレスで統一しています 西野ゆかさんと吉田有紀子さんの左顎の下が、ヴァイオリンの顎あての跡で赤くなっているのが何とも痛々しい様子です。このアザはヴァイオリニストの勲章でしょうか 音楽家というのは、チラシの写真と大きく異なり、「これ、本人?」と疑いたくなるケースが少なからずありますが、フォーコンプレも例外ではありません 写真よりもっと恰幅が良く、にこやかな中高年といった風情です
1曲目のモーツアルト「クラリネット五重奏曲イ長調K.581」は「シュタドラ―」という愛称で呼ばれていますが、これはモーツアルトの親しい友人でクラリネットの名手アントン・シュタドラーの演奏技術に惚れて作曲したからです
クラリネットのふくよかな響きと弦楽合奏の優しい響きが重なり合って、美しいメロディーを奏でていきます 第2楽章は天国的な穏やかさです。メヌエットの第3楽章を経て変奏曲の第4楽章に移りますが、クラリネットと弦楽が見事なアンサンブルを奏でていきます 聴き終わって思うのは、生きてモーツアルトを生で聴ける幸せです
2曲目はエクセルシオだけで、ハイドンの弦楽四重奏曲第39番ハ長調を演奏します。この曲は「鳥」という愛称で呼ばれていますが、鳥のさえずりを連想させるメロディーが聞かれることから付けられたものです ハイドンは弦楽四重奏曲を80曲以上も作曲したので、ニックネームでも付けなければ、どれがどの曲かさっぱり分からなくなってしまいます それは100曲以上作曲した交響曲も同じですが、ニックネームは必要悪ですね エクセルシオのメンバーは軽快にハイドンの世界を現出していきます
休憩後はブラームスのクラリネット五重奏曲ロ短調です。第1楽章冒頭からクラリネットの深い響きが会場を満たします この楽章を聴いただけで”人生の黄昏”を感じます クラリネットに絡む弦楽合奏のアンサンブルが何とも言えず魅力的です 第2楽章アダージョでは、ヴァイオリンとクラリネットとの共演が素晴らしかったです 第3楽章アンダンティーノを経て第4楽章のコン・モートに入りますが、ブラームスの室内楽の魅力に溢れています これから本格的な秋を迎えるのに相応しい曲と言えましょう
会場一杯の拍手 とブラボーに応えて、5人はアンコールにウェーバーの「クラリネット五重奏曲」の第3楽章を演奏しました 速いパッセージのユーモアを湛えた素晴らしい曲です
この日はハイドンからモーツアルト、そしてブラームスへと、クラシックの王道を行く名曲を聴くことが出来て幸せでした