6日(木).昨夕,サントリーホールで江副財団40周年記念コンサートを聴きました 8月末まで当ビルのテナントだったS社のF氏から招待券をいただいたので,聴かせてもらうことにしました バックを務めるのは菊地彦典指揮東京フィルハーモニー交響楽団です
出演者は江副財団の第21回から36回までの奨学生で,砂川涼子,藤田美奈子,佐藤康子,山口佳子(以上ソプラノ),下原千恵子,河野めぐみ(以上メゾソプラノ),佐野茂宏,樋口達哉(以上テノール),谷友博(バリトン),久保田真澄(バス)の10人です コンサートは第1部が「日本歌曲の部」,第2部が「オペラ名曲の部」から構成されています
舞台後ろ側のP席と舞台両サイド2階席には客を入れていません.それを除いて9割程度の入りでしょうか.招待席が少なくないと思われます 自席は1階18列39番,右サイドの通路側です.オーケストラはいつもの東京フィルの配置で,コンマスは荒井英治です
開演に当たってソプラノの山口佳子(よしこ)がマイクを持って登場し「本日はお暑い中お出でいただきありがとうございました・・・・」と挨拶をしました.そして指揮者の菊地彦典が登場,第1部の幕開けとなりました
第1部「日本歌曲」は「荒城の月」(谷),「さくらさくら」(山口),「この道」(佐藤),「からたちの花」(藤田),「小さい秋見つけた」(山口,佐藤),「落葉松」(樋口),「初恋」(河野),「宵待草」(砂川),「ふるさと」(佐野),「夏の思い出」(全員)というラインアップです
全員を取り上げるのも大変なので,特に印象に残った歌手だけピックアップしてみます まず,「さくらさくら」を歌った山口佳子です.東京芸大卒,藤原歌劇団員でイタリアに留学経験があります.明るく伸び伸びとした良く通る声で,出場者の中で一番声が出ていた歌手でした 「初恋」を歌った河野みぐみも東京芸大卒,藤原歌劇団員でイタリアに留学経験があります.深くしみわたる声で歌います
第1部の締めくくりの「夏の思い出」は会場も巻き込んで歌われました.この歌を歌ったのは何十年ぶりでしょうか?貴重な体験でした 日本の歌曲を,オーケストラをバックに聴くのは初めてでしたが,オケの盛り上げもあって,なかなかドラマチックで良かったと思います
第2部「オペラ名曲」はチレア「アドリア-ナ・ルクブルール」より「苦い喜び,甘い苦しみ」(河野),プッチーニ「トスカ」より「妙なる調和」(樋口),ロッシーニ「セビリアの理髪師」より「町の何でも屋」(谷),モーツアルト「魔笛」より「ああ,私には分かっています」(砂川),同「自殺の歌~パパパの二重唱」(藤田,久保田),ヴェルディ「ドン・カルロ」より「惨い運命よ」(下原),同「共に生き,共に死のう」(樋口,谷),ここでオーケストラによるベッリーニ「ノルマ」前奏曲を鋏んで,ベッリーニ「ノルマ」より「ノルマよ,ご覧なさい」(佐藤,下原),ヴェルディ「リゴレット」より「慕わしい人の名は」(藤田),同「椿姫」より「パリを離れて」(山口,佐野),マスネ「ドン・キショット」より「笑うなら笑え」(久保田),プッチーニ「ジャン二・スキッキ」より「私のお父さん」(山口),同「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」(佐藤),同「トスカ」より「星は光りぬ」(佐野)というラインアップです
「オペラの部」の方は,さすがに出場メンバーの実力発揮といったところです 誰もが素晴らしい歌声を聴かせてくれました ソロで印象に残ったのは,武蔵野音大卒,藤原歌劇団員の砂川涼子の歌ったパミーナのアリアです 哀しみを湛えたアリアを切々と歌い上げました.彼女は今や藤原歌劇団のソプラノの顔と言ってもいいくらいの存在です.そして,山口佳子の「私のお父さん」.次に,東京芸大卒,イタリアに留学中の佐藤康子の「ある晴れた日に」です 伸びのある声で母として,女としての心情をドラマチックに歌い上げました テノールでは東京藝大卒,内外のコンクール入賞者・佐野成宏の「星は光りぬ」です.この人の歌は自然と無理なく出ていて聴いていて心地良く感じます
曲によって管楽器が減らされ(モーツアルト等),あるいは増やされ(ヴェルディ等),演奏者が頻繁に入れ替わります.楽譜に忠実にということでしょう
なお,デュオはすべてが素晴らしかったと思います.藤田美奈子と久保田真澄による「パパパの二重唱」,樋口達哉と谷友博による「共に生き,共に死のう」,佐藤康子と下原千恵子による「ノルマよ,ご覧なさい」,山口佳子と佐野成宏による「パリを離れて」・・・・すべてが良かったです
この日の公演で一番びっくりしたのは下原千恵子の変わり用です 私が認識していた下原千恵子とはまるで別人でした それはそうでしょう.彼女の歌う姿は20年以上見ていませんから.彼女のソロによるヴェルディ「ドン・カルロ」から「惨い運命よ」は,聴いていて,ちょっと苦しそうかな,という場面もありましたが,佐藤との二重唱によるノルマのアリアでは素晴らしい歌声を聴かせてくれました
ところで,またしても出ました おしゃべりオバタりアンの登場です とくに後半の「オペラ名曲の部」に移ってから,舞台上で歌っているにも関わらず,後方席でおしゃべりをしている高齢女性がいるのです.しかも,一組ではなく,少なくとも二組はいました なぜか,必ず女性なのです.「あなた方の”おしゃべりリサイタル”を聴きに来たんじゃないんだからね」と言いたくなるのをグッとこらえて舞台に神経を集中しました.ところが,左後方のナフタリン・オシャベリ・オバタりアンが舞台上の「パリを離れて」のデュオに合わせて同じメロディを歌い始めたのです これには唖然としました.”しゃべれる”だけでなく”歌える”というのが驚きです・・・・・・特に今回のような招待客が多い場合には,こういうとてつもない客が紛れ込んでいることがあるようです.気をつけねば
第2部の最後に出演者全員が舞台に登場,再び山口佳子がマイクで締めくくりの挨拶をしました
「皆さま,本日は長時間にもかかわらず最後までお聴きいただき,ありがとうございました.これからも江副財団をよろしく(・・・・・・・)申し上げます」
山口さん,(お願い)が抜けていたんですけど・・・・・・会場からは”天然”の彼女に温かい拍手が贈られていました
その後,会場も巻き込んで滝廉太郎の「花」を合唱してコンサートを締めくくりました 会場を出たのは9時40分,盛りだくさんのコンサートでした