人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アラべラ・美歩・シュタインバッハ―のブラームス「Vn協奏曲」を聴く~東響オペラシティシリーズ

2012年09月09日 07時05分56秒 | 日記

9日(日).昨日,東京オペラシティコンサートホールで,東京交響楽団のオペラシティシリーズ第69回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」,②チャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」の2曲,指揮は英国出身のウィグルスワース,ヴァイオリン独奏はアラベラ・美歩・シュタインバッハ―,オケのコンマスは第1コンサートマスターのグレブ・ニキティンです 

このシリーズ定期公演は低料金で魅力的なプログラムを一流の演奏家で聴けるということで,いつも満席です かなり多くの人が定期会員を継続しているのではないでしょうか.私も10年以上定期会員継続中です

1曲目のブラームス「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は,ブラームスの長年の友だったヴァイオリン奏者ヨーゼフ・ヨアヒムのために作曲しました 当初は交響曲のように4楽章の構想だったのが,後に伝統的な3楽章形式に変更されました.初演はヨアヒムによって1879年1月1日にライプチッヒで行われました

開演に当たって,ヴァイオリン独奏のシュタインバッハ―がどんな色のドレスで登場するか予想を立てました 私の予想は”赤”です.コンサートのチラシで彼女が赤のドレスを着ていたわけではありません.が,何故か赤以外の色が思い浮かびませんでした

さて,指揮者ウィグルスワースに伴われてシュタインバッハ―が登場しました.”深紅の”ドレスです・・・・・・当たりましたね でも,ヨーロッパ一周無料ご招待はありません.主催者が”赤字”体質なものですから チラシの写真で見る彼女は大人びている表情ですが,実際に目の前に見た彼女は,もっと幼いというか,少女に近い感じがします 女性の演奏家の場合,年配者は若い時の写真を使うことが多く,逆に若い演奏家は,あえてベテランに見えるようにメーキャップをする傾向があるような気がします.どっちにしてもプロの演奏家は大変ですね

 

          

 

ウィグルスワースのタクトで第1楽章が始まります.序奏に次いでヴァイオリンの独奏が入ります シュタインバッハ―は数小節目で若干音が不安定なところがありましたが,すぐに立ち直り,この曲特有の,オケと対等の独奏を展開します

第2楽章は冒頭,オーボエの美しいソロがあり,途中からヴァイオリンが絡んでいくのですが,彼女は抒情的にアダージョを演奏し,聴衆を引き付けます そして,第3楽章のアレグロ・ジョコーソ・マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェに入ります.この楽章は,言ってみればブラームスの「喜びの歌」です シュタインバッハーは軽快に演奏を進めます

会場一杯の拍手に,アンコールを演奏しました.最初のメロディーを聴いた時,「ああ,バッハの有名な無伴奏ね」と思ったのですが,すぐに違うメロディーが続いたので,あれっ?と思って聴いていると,バッハの無伴奏ヴァイオリンの曲を少しずつ集めた曲のようでした 後でロビーの掲示で確かめると,イザイの「無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番」の”第1楽章”でした.彼女の演奏は鮮やかでした

後半の,チャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」は,プログラムの解説によると,チャイコフスキーの残したメモに次のように書かれていたといいます.

「この交響曲の本質は人生.第1楽章はあらゆる衝動,情熱,自信,行動への欲望.終楽章は死!崩壊の結果としての.第2楽章は愛.第3楽章は失望.そして終楽章が消え入るように終わる

このメモのうち,第1楽章の”衝動”・・・,第2楽章の”愛”,第4楽章の”死”は判るような気がします でも,第3楽章の”失望”はまったく判りません.この楽章はスケルツォと行進曲が展開する闘争的な激しい楽章です とても”失望”とは思えません.チャイコフスキーはどんな思いでこのメモを書いたのでしょうか.チャイコフスキーはこの曲の初演の9日後に急逝してしまいます その意味でも,この曲はチャイコフスキーの人生の縮図だったのではないかと思います

そこで思い出したのがオットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団による1963年録音の”悲愴”です 他のほとんどすべての指揮者が,第3楽章の行進曲を文字通り勇ましい”行進曲”風に演奏するのに対し,クレンペラーは慌てず騒がずゆったりと演奏しています チャイコフスキーのメモによる”失望”に一番近い解釈かもしれません

演奏では終始バスーンが大活躍するのですが,首席の福士マリ子の演奏が光っていました 指揮者ウィグルスワースの指揮の特徴は,ここぞ,というメイン・テーマが出てくる場面で,たっぷり”間”を取って,やっとテーマを提示することです 聴衆は”まだか,まだか”とじらされますが,それが指揮者の狙いです

聴衆は大喝采を贈っていましたが,私は何故かテンポの設定が若干違うような感じがしました 彼の指揮による演奏のテンポと私のイメージするこの曲のテンポとが微妙にずれているということです.別の言葉で言えば「彼のテンポでは,いっしょに呼吸が出来ない」ということです.私が”良い演奏”というのは”聴いていて,いっしょに心地よく呼吸が出来る演奏”ということです

ところで,下の写真は東響の9月のプログラムですが,「楽団人事欄」に「コンサートマスターの高木和弘が今年9月末で契約満了につき退団する」旨が告知されていました 東響のコンサートマスターは,ソロ・コンマスが大谷康子,第1コンマスがグレブ・ニキティン,コンマスが高木和弘,アシスタント・コンマスが田尻順,廣岡克陸という陣容ですが,高木の代わりに外から招聘するのか,あるいはアシスタントのどちらかを昇格させるのか,判りません.そして,高木和弘はどこへ

 

          

           〔プログラム表紙の絵はクリムト”メーダ・プリマヴェージ〕

  

  閑話休題  

 

日比谷公園の中にある「日比谷図書文化館」に行ってみました 先日,会社の同僚とほんのちょっとだけ見学したのですが,ゆっくり観る時間がなかったので,思い切って行くことにしました ちなみに下の写真では,当PCビルは文化館に隠れてまったく見えません

 

          

 

地下にハヤシライスが美味しいレストランがあると聞いていたので,階段を下りてみました 「ライブラリー・ダイニング・ヒビヤ」という名前の,かなり広いスペースのレストランがありました さっそく美味しいと噂のハヤシライスを注文しました.サラダとスープが付いて1100円ですから,まあリーズナブルと言えるでしょう 独特のデミグラ・ソースが美味しいハヤシライスでした 室内にはブラームスのクラリネット五重奏曲が静かに流れていて,いい雰囲気を出していました

           

          

          

 

〔追伸〕

文化館は毎月第3月曜日が休館,開館時間は平日10時~22時,土曜10時~19時,日曜・祝日10時~17時です.ダイニングは平日11時~21時,土曜11時~19時,日曜・祭日11時~17時です

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