今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

コーワ・SWのメンテナンスの巻

2022年06月18日 21時30分00秒 | ブログ

マニアの方に人気のあるコーワ・SW(スーパーワイド)です。特に大きな故障はないようですので(と思った)メンテナンスをして行きます。特徴的な円錐状のケプラー型実像ファインダーが特異なデザインです。

過去に分解修理を受けていますが、ファインダーにカビが発生していますので清掃します。先日のキヤノン・デミよりもっと高級なファインダーです。

 

対物側は円錐孔が2mm程度なので組立状態では清掃出来ませんね。

 

2つのプリズムが入っていますが、対物側に影響のない軽微な欠けがあります。前回の清掃時に無理をしたようです。

 

何枚ものレンズで構成されています。コーティングの劣化やバルサム劣化などで見え方に影響がありそうですので慎重に拭き上げをします。

 

接眼側も多くの厚いレンズが入っていました。1枚づつ清掃をして行きます。

 

本体との接合部のモルトが劣化していますので交換しておきます。その他、巻上げ機構とカウンター機構の清掃と注油をしておきます。

 

裏蓋の鍵部カバーがグラグラ緩んでいます。これは取付けネジが緩んでいるのでシボ革を剥がしてやり直します。

 

鍵板とカバーを清掃してグリスを塗布して組み立てたところ、開閉のレバーの動きが固くなって爪でも緩まない状態になりました。厚み調整用のワッシャーを追加しておきます。

 

シャッターはセイコーシャSLVと高級なユニットです。セルフタイマーが不調のためメンテナンスをしました。セルフレバーをセットしてもピンセット先のギヤが左側に移動しない状態。画像は正常に作動する状態での歯と噛み合って約9秒のタイマー時間を稼ぎます。

その他、ヘリコイドグリスが抜け気味でしたので追加しておきました。内部は非常にきれいです。

 

駒数窓が曇り気味でしたので研磨をしてスッキリ見えるようになりました。

 

巻き上げレバーやレリーズボタンの位置が自然で手に馴染み、操作性は非常に良いと思います。ピント合わせは目測式ですが超広角レンズですので問題はないのでしょう。

 

発売は1964年と言うことですので昭和の東京オリンピック開催の年ですね。非常にシャープな写りをするカメラだそうです。

 

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ベビーローライの不具合の巻

2022年06月17日 21時15分00秒 | ブログ

久しぶりに梅雨の晴れ間と思いましたら気温が上がって蒸し暑い陽気でしたね。そんな時にやりたくない作業はベビーローライです。フィルムの巻き止めが出来なくなったと言うことで、点検をして行くと確かに巻き止めのレバーが作動していない。なんで? レバーを外して地板の奥を見ると、何やら小さな部品が変形して詰まっていました。この部品がチャージ機構に挟まって不具合となっていたようです。これはフォーカシングのギヤのバックラッシュを押さえるための部品で、金属部品は変形していたものを元の形状に戻したところ。

の部分に付いていた部品です。

 

 

形状を修正して取り付けました。押さえる機構が無いのが脱落の原因でしょうね。

 

地板を元通りに組み立ててフィルムの巻上げテストをします。

 

 

関連の部分を組み立てて行きます。

 

 

逆転防止機構のコロとVバネを組み込みます。

 

 

二眼レフの宿命、シボ革を貼ります。

 

 

このような故障は多いのでしょうかね。これで直りました。

 

 

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ローライフレックス3.5Fとレンズの巻

2022年06月15日 17時15分00秒 | ブログ

関東地方は梅雨に入ってから雨が続いていて気分が滅入ってしまいますね。作業はボチボチで特にUPするネタもありません。このレンズはウルトロン50mmf2というレンズですが、レンズ清掃と絞り羽根の洗浄などをしますが、すでに前玉はホルダーごと緩めらた状態で来て、その後ろにある絞りリングも緩んで、クリック用のスチールボールを無くしています。1/16""ですのでズイコーレンズ用に新品をストックしておいて良かったです。

絞りの指標の色入れが抜けているので白で(たぶん)入れておきます。

 

 

絞り羽根も洗浄をしてきれいになりました。

 

 

絞りリングのグリスを交換して組立完成。

 

 

これはM42・フレクトゴン35mmf2.4というレンズ。こちらはA(自動絞り)で22が絞れないというもの。

 

分解してみると、レンズ本体は左のように小さいですね。やはり絞り羽根に油が回っていますので洗浄をしておきます。

 

ローライフレックスは重いですから落とされるとのように脚が陥没してしまいます。これを修正して行きます。

 

セルフタイマーの作動不良がありますので前カバーを分離します。いつも見慣れた景色ではありません。シャッターダイヤルや絞りダイヤルの制御メカが一新されています。道理でダイヤルの作動が軽いと思いました。タイマーユニットとリンケージ関係をメンテナンスして良好なので仮に前カバーを取り付けると再び作動しない。

原因は前カバー側に付いているセルフレバーの動きが渋いのでした。

 

 

シャッターのカム板関係が変更されています。

 

 

3.5Fはいろいろなタイプが永く生産されたようで、この個体はそれほど古くはないようです。セレンメーターも元気に作動します。

 

3.5Fは完成された美しさと貫禄がありますね。レンズはクセノタール付きです。

 

 

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こちらも初期型PEN-FVの巻

2022年06月12日 21時30分00秒 | ブログ

その前に、ここ数日で中古カメラ店様と直接のお客様からPEN-Fの修理お問い合わせを頂いておりましたが、どちらの個体もファインダーが汚れているとのことでした。拝見して見ると画像のように黒い腐食がありますね。これはプリズムの蒸着メッキの内側が腐食しているもので清掃では取り除くことが出来ません。この不良はかなり以前からボチボチありましたが、最近は現存の多くの個体に発生しているようです。FTでは極初期の個体で経験した記憶がありますが、それ以降の個体ではまず発生しません。製法を改良したか外注工場を変えたのかは分かりませんが・・

こちらのPEN-FVもPEN-Sと同じオーナーさんですけど、#1013XXとやはり初期型の個体なんですね。初期型を狙って入手をされているのな? いえ偶然と思いますが・・1967年1月の生産と思われますので極初期の生産です。FTで言うと12万台付近と同じですので、そういえばFTの10万台はめっきり修理ご依頼が無くなりました。それだけ生産が古く、改良前のユニットが使われていますので現役がきびしいのです。巻上げの重さ以外はとりあえず作動しています。外観もきれいで、あまり使用されなかった個体でしょう。しかし、過去に修理を受けた形跡があります。

特に問題も無さそうですのであまり書くことも無いと思いますから簡単にしますね。古いモルトを取り除いて洗浄しました。非常にきれいなボディーです。

 

リターンミラーユニットも改良前ですので使い込まれた個体は問題が多いのですが、摩耗は軽微です。過去にファインダーのピント調整を受けています。

 

シャッターユニットとシャッター幕も分離されていました。何を修理したのでしょうね。本体と前板側が完成しました。

 

オーナーさんから、シャッターダイヤルがガタが多く動かすのが怖い。とのことでしたが、設計が本体側と前板側をジョイントで繋ぐ構造のため、個体の嵌合によりセンターがズレるのを吸収する目的もあって敢えて遊び量を設けてあります。FTでは、ASA感度が組み込まれる関係で、裏側の組立ネジが緩んでガタが大きくなっている場合もありますが、FVの場合はその機構はありませんのでネジ緩みは発生しません。ダンパーグリスなどで感覚的に緩和する処置をしておきます。

全反射ミラーは反射率の低下はありますが、見にくい腐食はありませんので再使用とします。

 

これでほぼメカは完成です。巻上げユニットのフィルムカウンター部は改良前のタイプです。

 

初期型のユニットですからコマギヤ(駒数盤)をナットで留める設計になっています。これ以降は逆に軸に雌ネジが切られていてネジで留める設計に変わります。なぜか? 生産ラインで普通のドライバーで締められるからじゃない?

やはり初期型ですから巻き戻しダイヤルのノブはローレットタイプです。以後は大型の樽型に変わります。ローレットタイプでも良いのですが、実際にダミーフィルム(普通のフィルムより材質が強健)を巻き戻してみると、ノブの外径が小さ過ぎて回しづらいのです。

過去にSSで修理を受けていますが、殆ど使用されていないようです。PEN-F系のレンズマウントは材質が真鍮と柔らかいため、簡単に傷が付いたり歪が起こり、スムーズなレンズの脱着が出来ない個体がありますが、このマウントは傷も無く状態は非常によろしいです。

最後にファインダーのピント調整をして完成です。奇しくも2台共初期型ですが、調子は良好となっています。

 

 

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初期型PEN-Sを復活させるの巻

2022年06月10日 14時15分00秒 | ブログ

PEN-Sは長く生産されて発売は1960年6月とかなり古いです。この個体は1961年6月の生産のようですので生産開始1年後の個体と言うことになります。状態はシャッターはやっと羽根が開く程度でファインダー内の曇りや外観も汚れ放題と言うジャンクですね。良い方に救われて今回オーバーホールでやって来ました。

しかし、点検をして行くと・・ピントリングの指標が変なところにありますよ。これは固定ピンから外れているということでイヤな予感がします。

 

裏側から見てみると・・あぁ、シャッターユニットを留める4本のネジのうち2本の頭が飛んでいます。

 

その他、両耳が陥没していますので修正をしておきます。使用されての磨滅もありますが、この頃の梨地クロームは粒度が細かく、かなりピカピカするのが特徴です。後年のPEN-S3.5など時代が進むと梨地の粒度が荒くなって艶が無くなります。これは手汗で滑りにくくするためか、あるいは製造過程で傷による不良品を減らすための対策かもしれません。

ピントリングを外してみると、の固定ピンが孔から脱落しています。固定ピンのカシメも緩んでグラついていますので、それが原因で孔から脱落したものでしょう。使用者が必要以上の力でリングを回して、初期の生産に多いカシメの弱さで破損したものかも知れません。

シャッターユニットを分離してみると、ネジ孔に折れたネジが残っています。

 

本体を洗浄しておきます。余計に梨地クロームがピカピカになりました。

 

内部の古いモルトも完全に取り除いてきれいです。フィルムはあまり通していません。

 

固定ピンを再カシメしておきます。

 

 

折れたネジを取り除いてリング関係を洗浄しておきました。

 

 

このシャッターはPEN-S3.5など生産の後期で変更を受けた他はあまり変更はありませんが、初期生産特有の嵌合精度の悪さがあって、そのままではチャージに不具合があるのでシムにより修正をしながら組みました。

初期生産ユニットの特徴はのネジです。以後は逆に地板から生えたネジにナットで留める方式になっています。初期型のユニットにしては調子は良いと思います。

 

ファインダーのレンズ分解清掃、駒数ガラスはすり傷の研磨をして本体に組み込みます。

 

意外なことにレンズは非常にきれいです。初期型は製法が異なるのでしょうかね。これほどきれいな後玉は見ませんね。

 

これで堂々の初期型個体の現役復帰です。一見きれいに見える未整備の個体より全然良いコンディションです。#1762XX コパルにてシャッター製造1961年6月、オリンパスにて製品完成1961年7月。

 

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