PEN-Sは長く生産されて発売は1960年6月とかなり古いです。この個体は1961年6月の生産のようですので生産開始1年後の個体と言うことになります。状態はシャッターはやっと羽根が開く程度でファインダー内の曇りや外観も汚れ放題と言うジャンクですね。良い方に救われて今回オーバーホールでやって来ました。
しかし、点検をして行くと・・ピントリングの指標が変なところにありますよ。これは固定ピンから外れているということでイヤな予感がします。
裏側から見てみると・・あぁ、シャッターユニットを留める4本のネジのうち2本の頭が飛んでいます。
その他、両耳が陥没していますので修正をしておきます。使用されての磨滅もありますが、この頃の梨地クロームは粒度が細かく、かなりピカピカするのが特徴です。後年のPEN-S3.5など時代が進むと梨地の粒度が荒くなって艶が無くなります。これは手汗で滑りにくくするためか、あるいは製造過程で傷による不良品を減らすための対策かもしれません。
ピントリングを外してみると、←の固定ピンが↘孔から脱落しています。固定ピンのカシメも緩んでグラついていますので、それが原因で孔から脱落したものでしょう。使用者が必要以上の力でリングを回して、初期の生産に多いカシメの弱さで破損したものかも知れません。
シャッターユニットを分離してみると、ネジ孔に折れたネジが残っています。
本体を洗浄しておきます。余計に梨地クロームがピカピカになりました。
内部の古いモルトも完全に取り除いてきれいです。フィルムはあまり通していません。
このシャッターはPEN-S3.5など生産の後期で変更を受けた他はあまり変更はありませんが、初期生産特有の嵌合精度の悪さがあって、そのままではチャージに不具合があるのでシムにより修正をしながら組みました。
初期生産ユニットの特徴は↘のネジです。以後は逆に地板から生えたネジにナットで留める方式になっています。初期型のユニットにしては調子は良いと思います。
ファインダーのレンズ分解清掃、駒数ガラスはすり傷の研磨をして本体に組み込みます。
意外なことにレンズは非常にきれいです。初期型は製法が異なるのでしょうかね。これほどきれいな後玉は見ませんね。
これで堂々の初期型個体の現役復帰です。一見きれいに見える未整備の個体より全然良いコンディションです。#1762XX コパルにてシャッター製造1961年6月、オリンパスにて製品完成1961年7月。