今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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こちらも初期型PEN-FVの巻

2022年06月12日 21時30分00秒 | ブログ

その前に、ここ数日で中古カメラ店様と直接のお客様からPEN-Fの修理お問い合わせを頂いておりましたが、どちらの個体もファインダーが汚れているとのことでした。拝見して見ると画像のように黒い腐食がありますね。これはプリズムの蒸着メッキの内側が腐食しているもので清掃では取り除くことが出来ません。この不良はかなり以前からボチボチありましたが、最近は現存の多くの個体に発生しているようです。FTでは極初期の個体で経験した記憶がありますが、それ以降の個体ではまず発生しません。製法を改良したか外注工場を変えたのかは分かりませんが・・

こちらのPEN-FVもPEN-Sと同じオーナーさんですけど、#1013XXとやはり初期型の個体なんですね。初期型を狙って入手をされているのな? いえ偶然と思いますが・・1967年1月の生産と思われますので極初期の生産です。FTで言うと12万台付近と同じですので、そういえばFTの10万台はめっきり修理ご依頼が無くなりました。それだけ生産が古く、改良前のユニットが使われていますので現役がきびしいのです。巻上げの重さ以外はとりあえず作動しています。外観もきれいで、あまり使用されなかった個体でしょう。しかし、過去に修理を受けた形跡があります。

特に問題も無さそうですのであまり書くことも無いと思いますから簡単にしますね。古いモルトを取り除いて洗浄しました。非常にきれいなボディーです。

 

リターンミラーユニットも改良前ですので使い込まれた個体は問題が多いのですが、摩耗は軽微です。過去にファインダーのピント調整を受けています。

 

シャッターユニットとシャッター幕も分離されていました。何を修理したのでしょうね。本体と前板側が完成しました。

 

オーナーさんから、シャッターダイヤルがガタが多く動かすのが怖い。とのことでしたが、設計が本体側と前板側をジョイントで繋ぐ構造のため、個体の嵌合によりセンターがズレるのを吸収する目的もあって敢えて遊び量を設けてあります。FTでは、ASA感度が組み込まれる関係で、裏側の組立ネジが緩んでガタが大きくなっている場合もありますが、FVの場合はその機構はありませんのでネジ緩みは発生しません。ダンパーグリスなどで感覚的に緩和する処置をしておきます。

全反射ミラーは反射率の低下はありますが、見にくい腐食はありませんので再使用とします。

 

これでほぼメカは完成です。巻上げユニットのフィルムカウンター部は改良前のタイプです。

 

初期型のユニットですからコマギヤ(駒数盤)をナットで留める設計になっています。これ以降は逆に軸に雌ネジが切られていてネジで留める設計に変わります。なぜか? 生産ラインで普通のドライバーで締められるからじゃない?

やはり初期型ですから巻き戻しダイヤルのノブはローレットタイプです。以後は大型の樽型に変わります。ローレットタイプでも良いのですが、実際にダミーフィルム(普通のフィルムより材質が強健)を巻き戻してみると、ノブの外径が小さ過ぎて回しづらいのです。

過去にSSで修理を受けていますが、殆ど使用されていないようです。PEN-F系のレンズマウントは材質が真鍮と柔らかいため、簡単に傷が付いたり歪が起こり、スムーズなレンズの脱着が出来ない個体がありますが、このマウントは傷も無く状態は非常によろしいです。

最後にファインダーのピント調整をして完成です。奇しくも2台共初期型ですが、調子は良好となっています。

 

 

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