竜頭(巻芯)が欠落して放置され、不動状態の個体は1960年より発売されたグランドセイコーのファーストモデルですぞ。う~ん、もう少し程度の良い時にお会いしたかったですね。クロノメーターとなっていますが、スイスのクロノメーター優秀規格と同一の社内検定に合格して歩度証明書付で世の中に出た個体ですね。
ケースは14Kの金張りですが、残念ながら母材の真鍮の腐食は如何ともしがたく、特にベゼルと裏蓋の接合面が激しく腐食をして側の金のみが残っているという状態。よって部品の嵌合精度が変化をして圧入にならないのです。キャリバーはcal3180で、セイコー・クラウンベースですから、取りあえずクラウンから竜頭(巻芯)借りてO/Hをしていきます。
流石、腐っても鯛。ケースが厚めのためか機械に水の侵入などがないのはラッキーでした。証明書付の高級機ですから機械には個体番号が刻印されています。
では、洗浄をして組み立てをしていきますよ。基本的にクラウンと同様ですが、秒針規正装置が付いています。
手巻き機械で25石ですから、香箱にも石が使われています。
追加された秒針規正装置。テンワではなく、直接四番車を止める構造です。
特に問題は無くスムーズに組立が進みます。あとはテンプを取り付けます。
ダイヤショックの受石に注油をしてバネをセットします。この作業が時計組立で一番難しいと思います。
めでたく再び動き出しました。普通のクラウンと異なり角穴車などの作りが高級ですね。
問題のケースです。画像は軽く研磨をしたところ、普及機の20ミクロンとは違いメッキは厚いですから、あまり角が出ることは心配せずに磨けます。裏蓋のメダリオンは完璧に残っています。
風防には細かな内部崩壊がありますが、純正品は入手出来ても極めて高価ですので研磨で再使用としますが、べセルが痩せた分、圧入とならないので接着をしておきます。
ロービート5振動ですが、歩度調整では流石に高精度の片鱗は見えました。しかし、現在の7S系ファイブの方が高精度でしょうね。文字盤は高級仕上げのSD文字盤(6時上のマーク)ですから、曇っていたインデックスを拭くと、ご覧のようにピカピカです。18金無垢ということらしいです。針も肉厚で立派です。(記述後の測定では平置きで日差0でした!)
裏蓋を閉めて組立終了。メダリオンが渋いですね。
意外にラグ幅は現在の主流18mmですので、ベルト選びには困らないでしょう。少し気張って良いベルトを着けて上げると良いでしょう。オリジナルの竜頭は探して是非交換をしたいところです。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/