今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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暑いけど頑張りますの巻

2022年07月24日 10時40分00秒 | ブログ

暑い時期の焼付塗装は避けたいところですが、ご常連さんからPEN-EE2のサイドカバーの塗装剥離を何とかできないかとのご希望。ここは剥がれやすいですね。

 

この部分は材質がスチールでクロメートのような表面処理がされていますので、チープなプライマー無しの1回塗り塗装では塗膜の密着が弱く持たないのです。そもそもシボ革側に剥離した塗膜が付いて来るという・・

で、PENのグレーは白/黒の単純なナチュラルグレーではありません。そこに経時劣化の黄ばみが入っているので尚厄介です。特に今回のような小面積の部分塗装では調色する塗料の量もわずかですので余計に精密な調色を困難にします。まぁ、夜目遠目ということで。

これは極初期型のPEN-F #1195XXですが、PEN-Fの生産開始は1963年9月とのことですが、この個体は1964年2月の生産と思われます。現状は全くの不動状態で来ましたが、応急的に作動を見るためにアンダーカバーを外そうとしても片方のネジが固着していて、さらにすでに緩めようとしてネジ頭を損傷しています。仕方がありませのでカバーを強制的に取り去ります。

残ったネジを削り取ってタップでネジ山を再生させました。これでやっと作動を見ることが出来ます。暑い時にやりたくない神経を使う作業。

 

不動の主な原因はブレーキの固着でした。殆どの個体はブレーキが利かないだけですので作動には問題は出ないのですが、逆に錆やOリングの膨張などで固着となると作動に問題が出ます。当初の予定にはないブレーキのO/Hが必要です。

プリズムには黒点の腐食はありますが、極初期型の古い個体としては、それほどひどい状態でもありません。再使用とします。

 

では、いつものように洗浄したダイカストから作業を始めて行きます。

 

 

日曜日の朝は部屋の掃除の日。ファイルを片付けていましたら若い頃のロードレースの写真が出て来ました。富士スピードウェイのレースで3位に入賞した時です。今見ると痩せています。確か53kgだったので長身でも小排気量クラスに乗れたのです。

画像を撮り忘れましたが、ブレーキを留めるリングナットに工具を滑らせた形跡がありました。あちぁ~、ここは緩み止めのポンチも打たれていますので、一発で緩めないと永久に緩められなくなるのです。で、Oリングを外してみると・・やはり激しく錆びていました。これが原因でOリングが盛り上がり、ブレーキの固着になるのです。

シャッターユニットのメンテナンスとブレーキの調整をして正常に作動するようになりました。

 

画像は撮ってありました。過去に工具を滑らせた形跡があり、結局緩められなかったようです。ここは正ネジですが、締め込む方向に傷がありますので、或は左ネジと思い込んで締め込んでいたのかも知れません。

三脚環のネジ孔が微妙に合っていませんね。良く観察すると右側の孔が小判孔に修正してあります。これはダイカスト側の穴位置が不正確と思いますが、製造ラインでは救済のためにヤスリ加工をしたのでしょう。それでは生産数が上がるわけがありません。

この状態ではプリズムの腐食は軽微に見えますが、ファインダーを通すと大きく見えるんですね。

 

初期型なので巻き上げレバーのバネはリン青銅の板バネ式です。この後はコイルバネ式になります。レンズマウントのバネが摩耗気味でレンズの合致が緩いのでバネの矯正をしてあります。手垢で数字が読めないほど汚れていたシャッターダイヤルを洗浄してこれでメカ部の組み立て終了。

最後に抜け掛かっていた彫刻文字の色入れを補修しました。極初期型はスローガバナーや各ユニットの摩耗などで信頼性を確保するのが困難の個体も多いですが、この個体は非常に安定した作動をするようです。外観のへこみやアンダーカバーが外れないなど、最初はどうなることかと思いましたけどね。一般的には敬遠されやすい個体を修理ご依頼頂きましてありがとうございました。

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