修理のご依頼は夏枯れ状態ですので9月のカメラ市に向けてコンパクト系PENをやっています。特に大きな出来事はありません。PEN-EE2は裏蓋が蝶番式となり、より使いやすくはなっていますが、遮光用のモルトが多用されています。それが加水分解で溶けてベトベトになり、果ては黒塗装を侵してしまいます。元は同じ石油ですからね。ふぅ、まずは手間の掛かる除去作業です。
裏蓋はコストダウンのため、一般的な製法の2枚重ねではなく、ペラペラな1枚物になっています。そのモルトが接する端部の塗装が侵されています。
パトローネ部分も厳重な遮光対策がされていますね。すべて除去清掃をした上で貼り替えます。
EE精度はセレンが生きている個体でも1~2段程度は低下しています。セレンの起電能力だけでなく、メーターの磁束減少も原因です。
これも多い。PEN系は後玉が弱いです。2枚貼り合わせのバルサムが良くありません。貼り合わせ面に空気層が出来るものや、この個体のように曇りが発生するものがあります。バルサム貼り直しについては研究するとして、今回は良好な部品と交換します。
これはPEN-D3 #4093XXと1968年8月製と思われる後期の個体です。よく見るとメーターの樹脂ガラスが欠落しています。通常は裏側から接着するのが普通ですが、なぜかD系は表から接着をしています。内側にガラス厚みを収容するスペースが無かったのでしょう。よって、無理なエポキシ接着を組立作業者に強いています。ストック部品から調達して再接着をしておきます。
D系もやはり後玉が問題です。この個体のようにシャッター羽根の前後にカビが発生するのはどのシャッターでも同じですので清掃が可能ですが、曇るレンズも多いのです。新種ガラスの採用なども影響があるのでしょうかね。
では、洗浄の上、シャッターを組み立てて行きます。非常に状態の良いシャッターです。
後玉はきれいになりました。完成したシャッターにヘリコイド部をドッキングします。
この頃になると駒数板下のギヤは黒い樹脂製になっています。不用意に分解するとネジ〇カになりますので注意が必要です。カムは従来のものより角が丸くなってバレルを掛けたようになっています。巻上げフィーリングの改善かと思います。
シャッタースピード用のクリックは中期までのスチールボール式からピン式になっています。組立の容易性を狙ったものか?
露出メーターですが、永い間使われなかったものはマイクロスイッチの接点が不良となり、針が振れないか、振れても不安定な症状が出る場合があります。