明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(410)放射線測定器の数値改ざんを要請した文科省が新たに放射線量公表を開始

2012年02月21日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120221 23:30)

このところ、内部被曝を解説するブックレットづくりなどに追われて、「明日に
向けて」の更新ができていませんでした。みなさま、申し訳ありません。まだ
他の原稿の執筆中なのですが、どうにも見逃せない記事を発見したので、論じて
おこうと思います。作成中のブックレットについては、後に詳しく報告させてい
ただきます。

さて問題の記事は、「福島県内の空放射線量、10分毎にHPで公開 文科省」
というタイトルで書かれてものです。記事内容によると文科省は約26億円か
けて「リアルタイム線量測定システム」と作ったとのことで、ウェブでデータが
みれるとされています。

しかし注目すべき点はそのあとに書いてあること。以下、記事をコピーします。
「このシステムをめぐっては、昨年7月に最初の600台分の競争入札をし、東京
都中野区の「アルファ通信」が落札。しかし、文科省は測定精度に問題があるなど
として同社との契約を解除した。」

この記事を読んだときに、僕は「ああ、あれのことか」とピンときました。実は
1月16日に福島市を訪ねたときに渡利地区を訪問し、「子ども福島ネットワーク」
の中手聖一さんに数カ所を案内していただいて、渡利小学校も訪れたのですが、そ
のときにいまだ校庭に設置されたままになっていて目撃することができたのが、
この装置だったからです。

中手さんは次のように説明してくれました。「あれは文科省が鳴り物入りで設置
した器械ですが、しばらくして数値の精度が悪いということで、使用されなくなっ
たのです。ところが文科省の発表に対し、納入会社の社長が激怒し、数値がおかし
いのではない。そもそもこれはアメリカ軍も使っているものだ。それを設置すると
き、文科省が低い値をだせと強行に要請してきたのだ、と事実をバラしてしまった
のです」

ようするに文科省が数値改ざんを行なっていたわけです。今回の記事で僕ははじめ
てこの業者が「アルファ通信」という会社であることを知りましたが、それで検索
してみて、この事実を、昨年12月に日刊ゲンダイ紙が報道していることを知りま
した。同社の豊田社長のコメントも載っているので、末尾に貼り付けておきます。

この事実からすぐにも推察できることは、今回の「リアルタイム線量測定システム」
もまったく信用できないということです。どんなに優秀な機材でも、当たり前の
ことですが、数値設定を変えれば、いくらでも測定値をごまかすことができてしま
います。実際にこうしたことを行い、なんの反省もしてない文科省が、今回ばかり
は誠実に測定すると考えるほうがまったく不合理です。

こうした悪質な改ざんに対抗するには、市民の側がイニシアチブをとった測定を
行い続けることが重要です。各地で市民放射能測定所の設置が進んでいますが、
この動きをさらに加速させていきましょう。

それにしても、僕は小さい頃に、大人たちから「嘘つきは泥棒のはじまり」と教え
られたものでした。同じ言葉を聞いた方が多いと思います。それを文科省に当ては
めたらどうなるでしょうか。しかも文科省は、教育を司る省庁なのです。こうした
文科省の「うそ」に、この国の暗い状態が象徴されているように思えます。国の役
人が平気で「うそ」をつき続けるこうしたあり方を覆すこと。僕にはそれもまた
子どもたちの未来を守る大切な行いであると思えるのです。

**********

福島県内の空間放射線量、10分毎にHPで公開 文科省
朝日新聞 2012年2月21日18時11分
http://www.asahi.com/national/update/0221/TKY201202210442.html

文部科学省は21日、福島県内の学校や公園など約2700カ所で計測した放射線
量の公表を始めた。10分ごとの線量を文科省のウェブサイト
(http://radiomap.mext.go.jp/ja/)で見ることができる。

約26億円をかけた「リアルタイム線量測定システム」。幼稚園、保育園、小学校
では地上50センチ、中学・高校や公共施設などでは地上1メートルのガンマ線の
空間線量を測る。太陽電池で動き、内蔵の携帯電話端末でデータを自動的に文科省
のサーバーに送る。

ウェブサイトでは、地図に重なって線量計の位置が表示され、現在の線量やこれま
での線量の変化を確認できる。

このシステムをめぐっては、昨年7月に最初の600台分の競争入札をし、東京都
中野区の「アルファ通信」が落札。しかし、文科省は測定精度に問題があるなどと
して同社との契約を解除した。その後、NEC、富士電機の両社と契約し、当初予
定より約4カ月遅れて稼働にこぎつけた。

福島県のウェブサイト(http://wwwcms.pref.fukushima.jp/)からもアクセスできる。

**********

放射線測定器「文科省は数値改ざんを要求してきた」
日刊ゲンダイ 2011年12月9日 掲載
http://gendai.net/articles/view/syakai/134129

設置業者が怒りの告発

「文科省が放射線測定器の数値“改ざん”を求めてきた」――。福島の小学校に放
射線測定器の設置を進めてきた業者が怒りの告発だ。この業者は、測定器設置の事
業を落札した「アルファ通信」(東京)。11月中旬、測定器の「欠陥」や「納期
遅延」を理由に文科省から契約を解除されたのだが、豊田勝則社長(66)は「解
除された真相は全く違う」と反論するのだ。

文科省は現在、福島県内の学校、公園などの放射線量を測り、結果をホームページ
で公開する事業を進めている。測定器は2700台の設置を予定し、このうち600
台を落札したのが「アルファ通信」だった。豊田社長がこう言う。

「文科省は、契約を解除したのは『測定数値が4割低いなど誤差が大きい』『技術
仕様に沿っていない』と説明していますが、とんでもない。納品したのは米軍でも
使われている測定器です。性能に問題はありません。それに文科省も入札時の技術
審査で認めたからこそ、契約したはずです」

確かにその通りだ。「アルファ通信」は10月上旬、県など行政関係者が見守る中
で「福島第一小学校」への公開設置も行っている。測定器が「欠陥」なら、文科省
はもっと早く指摘できた。

「納期遅延」も原因は文科省にあるという。

「600台中、130台の納品が遅れたのは事実です。しかし、それは文科省がム
リな仕様変更を迫ったからです。測定器は測った放射線量の数値をそのまま表示す
るわけではなく、機器に内蔵されたソフトで計算して表示します。文科省はそのソ
フトに『補正』を求めてきた。米国製の測定器は、他の測定器と比べて数値が高く
表示される。これを嫌がったのでしょう。文科省は表示される数値を2割程度、低
くするように言ってきました。2割も補正するなんて、数値改ざんです。案の定、
測定器メーカーに相談すると、『世界仕様なのになぜ、日本基準にする必要がある
のか』と断られました。そうこうしている間に納品が遅れたのです」(豊田社長)

これが本当なら驚きだ。文科省に事実確認すると、こう答えた。

「第三者機関の放射線計測協会で検査したところ、誤差が大きかった。(ソフトに)
数値の補正を求めたかどうかはともかく、仕様書にのっとっていないと判断して解
除しました」(原子力安全課)

放射線測定器の性能をめぐるバトルで設置が大幅に遅れるのは確実。福島県民も
タマったもんじゃないだろう。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明日に向けて(409)滋賀県大津... | トップ | 明日に向けて(411)アメリカは... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
怒り (chizuko)
2012-02-22 09:54:20
この件については講演でも拝聴しさらに政府に対する不信感が増しました。こんなことが許されるなんて、この国で子供に教育を受けさせてよいものか!?本当に不安になります…。
この社長さんは名誉棄損で訴えることはできないのでしょうか。
返信する

コメントを投稿

明日に向けて(401)~(500)」カテゴリの最新記事