明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(836)手術に関してのご報告

2014年04月26日 21時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140426 21:30)

みなさま。
今日はチェルノブイリ原発事故の日でしたね。今日、明日と各地でいろいろな催しがあると思います。
世界各地で同様の取り組みがなされていると思いますが、トルコではシノップにたくさんの方が集まって、大きな行動がなされているようです。心が熱くなります。
情報が入ったらお知らせします。

そんな今日一日ですが、僕自身は、すでにお伝えしてきた通り、昨日25日に京都市内のある病院に入院し、手術を待つ身となりました。
すでに術前の検査をすべて終えており、28日午後に手術を受けます。手術は正式には「経尿道的前立腺切除術(TURP)」というもので、前立腺肥大症を治すものです。

開腹を伴わない内視鏡手術ですので、それほど大げさなものではありません。
術後、一週間ぐらいの入院を必要とするようですが、その後は通常の生活が送れます。もちろん活動もできます。
また術前の明日27日に病院から亀岡市に講演に行きますが、医師からまったく問題ないと言われています。無理をするわけではありませんのでご心配は無用です。

ちなみに前立腺とは膀胱の下にある男性性器の一部ですが、加齢とともに肥大する傾向があり、尿道を圧迫して尿の出を悪くします。
といっても誰にも起こるというわけではなく、ましてや僕の年齢で症状が出ることは珍しくて「早いですねえ」と言われるのですが、症状が進むと何かのおりに閉尿し、尿がでなくなってしまうこともあります。
投薬で症状を抑えることもできるとされていますが、僕の場合、それなりの年月をかけていろいろと試しましたが、ホルモン剤投与などでもあまり症状の改善が見られませんでした。
それでも手術は避けたいと思い、漢方薬の利用なども行いつつ、病との共存を目指してきました。

今回、手術の決断に至った理由は、ベラルーシ、ドイツ、トルコをまわる旅の中で身体に負担がかかる中で、前立腺が悪化し、排尿困難となってしまったことによります。
このことで本当にたくさんの方にお世話になると同時に、ご迷惑もかけてしまいました。
今後も再び、トルコやドイツ、ベラルーシや各国へ必要に応じて赴きたいし、赴く必要を強く感じていますが、そのためにはこれまで共存してきた身体上の弱点を克服しておきたい。

またこれまでも薬でコントロールしつつも、急な冷えや体調変化で症状が変わりやすかったり、座っているポジションが長く続くとうっ血して悪化しやすいなどの問題がありました。
尿が貯まることも良くないのでどうしてもトイレが近くなるし、緊張感など心理的状態にもにも左右されます。
そのため自由にトイレにいけない講演会の前後などで困ることも多く、心理的負担も増えていました。それやこれやで外科的処置によって身体の限界を取り除く決断をしました。


同時にこのことを機縁として、今一度、自らの身体を通しての放射線防護活動のレベルアップを図っていきたいと思っています。
これまでも書いてきましたが、このことを僕に教えて下さり、気づかせてくださったのは、被爆医師の肥田舜太郎さんです。肥田さんは講演の中で、たびたびこうおっしゃいます。
「自分の命などちっぽけだ・・・などとけして思っていはいけない。みなさんの命は世界に一つのかけがえのないものだ。その命をいかにすれば長くすることができるかを毎日、考えなくてはいけない」

また次のようにも語られます。
「みなさんは病気になったら病院にいって治せばいいと思っている。それは間違いです。普段からどうすれば健康にいいかを考えて行動しなければいけない。」
これは被爆医師としての経験だけでなく、戦後に日本の民主的医療の創成期を担い、長らく臨床医として奮闘してきた肥田さんの実践に裏打ちされた言葉です。

「病いを治すのに必要なのは何か。それは医師の知識と経験とともに患者の主体性だ。病は患者自らが治すものであり、医師は自分が治してやるという奢りを捨てなけれなならない。」
「患者の自己治癒に一番大きな影響を与えているのはナースだ。なぜならナースがもっとも患者に近いところにいるからだ。医師はもっとこのことに自覚的であるべきだ。」
肥田さんはこうしたことを自らにつきつけつつ、医師の家父長的な権威が圧倒的に強かった当時の医療のあり方を現場から変えていこうと奮闘されました。

僕はこの点は膨大な放射能が福島原発から飛び出してしまった現代において、非常に示唆に富む指摘となっていると思うのです。
いや放射能だけでなく、無数の化学物質が作られ、食品をはじめあらゆるところに使われて、複合的な汚染を人々が襲っている深刻な現状に対してといった方がよいかもしれません。
これほどの汚染による人体へのダメージが、医療界に大変な驚異として襲いかかっているのは間違いのないことであり、それに対抗するために、人々の主体性、能動性を高めることがかつてなく重要になっているのです。

低線量被曝の危険性に対するしっかりとした知識を身に付け、被爆防護を強めていくことももちろんその重要な一つの柱です。
その上で、もっとあらゆる領域で身体を守る知識、対処法を学び、健康を守り抜いていくこと。あるいは病と闘っていく能力を伸ばしていくことが本当にかつてなく問われている。
そのために私たちは私たちの病に対する能動性を強めていく社会的ムーブメントを作り出し、相互の関わりの中で「健康力」とでも言うべきものを伸ばしていくことが必要なのです。

もちろん現代医学においても「患者教育」の重要性は認識されており、とくに看護学の中にしっかりと位置づけられています。患者と最も接するナースという専門職の必須の課題としてです。
例えば福岡大学人文論叢第43巻4号をみると、日本看護科学学会が患者教育を「自己で疾病管理や生活調整をするための知識・技術・態度の習得を助けること」と位置づけていることが紹介されています。
しかし同時にこの論文の中には、欧米に比較して日本では「患者教育」がまだまだ遅れているという注目すべき指摘がなされています。

「このように患者教育は医療者が患者会の中で実践されてきたが、欧米諸国に比べると内容や活動共に未だ発展途上といわれている。
欧米での患者教育は病院内にとどまらない。患者が学会組織に参加し、学会が患者会と共に学会のプログラムや発表者を選定したり、患者自身が発表者となって病状報告をしたりしている。
そして患者会の役割、政府との連携などを学び合う患者教育が実践されている。」

「日本では一部の学会組織や民間の患者会などが患者教育の活動に取り組んでいるのみで、内容も欧米に比べて見劣りし、活動自体も少ない。
こうした状況は、日本の患者教育が医療費抑制策の解決手段として取り扱われてきたことと、医師、看護師、患者会など、各団体組織によって患者教育の認識や方法が異なることに問題があるからではないだろうか。
そのため、患者の人権保証という観点が乏しい。このことが日本の患者教育の課題である。」

・・・指摘は多岐に渡っており、患者教育が医療費削減策の解決手段として扱われてきたことの限界なども重要なポイントですが、さしあたってここでは僕は欧米の患者教育が「病院内にとどまらない」という点に注目したいと思います。
つまり病院の外で、あるいは病気になっているそのときだけでなく、もっとひろく「患者教育」はなされなければならない。
というよりも「患者」に限らず、この世を生きる必須の課題として、もっと健康のことが取り上げられ、例えば学校教育の中で、あるいは社会教育の中で教えられるべきなのです。

要するに病に対して誰もがもっと能動的になる。専門職としての医療従事者は当然にも必要だとしても、もっと多くの人が、いや誰もが、自分の命を預かっており、かつときに他の人々の命をも預かるのだから、もっと主体的になるべきだというとです。
命を大事にし、少しでも長くしていく方法を学ぶ。それをみんなで実践していく。そのことが重要なのです。
僕はそれは結果的に医療費の削減、というよりも真の効率化につながると思います。医療費は必要なら増やせばいい。もっとも大事な命に関わることなのですから。しかし効率的であって欲しい。それを高めるのに医療を受ける側の能動性はかなり寄与するはずです。

こうした諸点を、肥田先生が辿られてきた戦後の歩みを捉え返しつつ、ぜひ文章の形でまとめたいとも思っているのですが、そのためには-当たり前の事ですが-何よりも僕が、現状を克服してその実践者たらねばならない。
そうして自分自身の身体を通した説得力ある主張を打ち出していく必要があります。たからこそ自分自身が手術を受けるこの機会に、もう一度、自らの医療との向かい合い方を真摯に問い直したいと思います。
その中から、自らをきちんと治癒することを通じて、放射線防護活動のレベルアップに寄与していきたいです。

さてそうした観点から言えば・・・多くの方が思っておられると思うのですが・・・僕はこの手術の期間にもっとたくさんの休みを取る必要があります。
月末の入院を見越して、今月はこれまでできるだけと切らさずに「明日に向けて」を書いてきましたが、手術後にはペースダウンさせていただき、休養を優先することとします。
実はそれが一番苦手なのですが、「明日に向けて」僕は本当にきちんと休まなくてはいけませんよね。そう思って、術後の生活を送らせていただこうと思います。変な言い方ですが一生懸命に休みます!

みなさま。私たちの命を心から慈しみながら、前に進みましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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