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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺外伝・成院と晴子」

2013年12月27日 | 物語「水辺ノ夢」
成院(せいいん)が晴子(はるこ)を訪ねてきたのは
天気がよい、ある日の事。

「戒(かい)?」

最初、家を訪ねてきた成院を晴子は別の人だと思った。
彼がもう一度訪ねてきてくれる、と
期待していたのかもしれない。

「……あ、成院。ごめん、私ったら」

成院は玄関から動かない。
ちょうど晴子からは逆光で成院の表情がよく見えない。

「成院 どう、したの?
 ねぇ、具合悪いんじゃ」

「晴子、あいつが、俺」
「成院?」

成院の言葉はおぼつかない。
やがて、深く息を吐いて
天を仰いだ後、改めて晴子の方を向いた。

そこでやっと成院の表情が見えて
あぁ、少し落ち着いたみたい
と、晴子は少しほっとした。

「戒院(かいいん)が死んだよ」

突然、彼の名前が出てきて
晴子は動きを止める。

「え?」

「あいつ、流行り病だったんだ
次期宗主様と同じ」

「ねぇ、成院、冗談は止めて」

「晴子」

成院はすがるように晴子を見る。
本当の事、だと。

「うそ」

そんな事があるわけがない、と。
晴子は首を横にふる。

「そうだな」

成院は言う。

「戒院は、いつも、ほんとの事なんて
はぐらかして言わないやつだったから」

戒院の兄である成院は
彼と、戒院と同じ声で言う。

「晴子の事、キライになった、とか
もう、会いたくない、とか
他に気になる人が出来た、とか」

全部、嘘だったのになぁ、と。
目が合った成院は
不思議な表情をしていた。

きっと、泣いてしまいそうになるのを
我慢しているんだ、と
晴子は思った。

「なのに」

「どうしてこれは
嘘じゃないんだろうな」


ある、晴れた日の。
東一族の話。



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