「ノギなら、さらわれちゃったわよ」
ヨシノさらり。
「さらわれっ!!?」
「ヨシノさらっと過ぎる!!」
「でも、もったいぶることでもないでしょう?」
うわぁああああ、と、息を吐くケヤ。
「さらわれちまったか、ついに」
「ついに!?」
「それ、どう云うこと!?」
「だから、俺が心配して見張っていたって!」
ケヤが云う。
「何かありそうだったんだよ」
「何かって」
「いったい何が?」
「だから、何かありそうな予感」
えぇええ。
「ノギは、お嫁さん探しの旅に出ようとしていたじゃない」
ヨシノは首を傾げる。
「それのこと?」
「いや、そうじゃなくてだな」
「砂一族だって、村外に出るのは自由でしょう?」
「それはそうだけど。もっと危険と云うか、さ」
「よく判らないわ」
「だから予感だって!」
同じ一族であるノギに悪いことが起きそうな
「なんだろう、こう。・・・男の勘?」
「キモイ・・・」
「キモイ、とはっ!!」
ケヤくん、カッ!!
「落ち着こう、みんな!!」
ツイナが立ち上がる。
「今からどうするかを、考えなきゃ!!」
「ツイナ!!」
ヨシノのパスペ(パーソナルスペース)ゼロが発動。
「そうよね、ツイナ! かっこいい!!」
「おぉおお、ヨシノ!」
「そうだな、前回の話では、ずいぶんと妄想していたようだが」
「ふふ、やらしい、とかね!」
「その話はめっ!!」
ツイナは立ち上がる。(2回目)
「まずは、今、どうしたらいい、ケヤ!?」
「さっそく、ふったね」
ケヤが云う。
「移動するべきか、野宿するべきか、だろう?」
「そう」
「楽器とか奏でたいわ~」
「いや、ヨシノ。それメインじゃないから」
ケヤはあたりを見る。
「ひとまず、野宿。日が昇り次第、移動」
それが妥当であろう。
「きゃぁ、楽しみ~」
ヨシノは手を握る。
「BBQに、食後のコーヒー、星空を見ながら☆」
「楽器の演奏付きで?」
それ、キャンプじゃん。
「そして、やらしいことがぁああああ!」
「おいおい、大丈夫かよ、海一族」
ツイナ、本当にどうした。
「ちょっとほっておくか」
ケヤは自分の荷物を取り出し、手際よく、火を起こす。
小さいフライパンで、目玉焼き。
食パンを取り出し、ふたりに配る。
「まずは、お腹を満たす」
目玉焼きにはお好みで、と、謎のスパイスも取り出す。
「毒か」
「毒よね」
「失礼だな。元気なる薬と云え」
「元気になるって、いったいどこが」
「今から仮眠するのに、元気になる必要ある?」
3人は食事をとる。
3人の周囲には、ぐるりと、線が引いてある。
簡単な魔法。
「いわゆる、防御線と云うか」
「猛獣から身を守る、とかかしら」
「そう云うこと」
ケヤはスープを飲む。
「この中にいれば、猛獣に気付かれない」
「やっぱり、何かいるのか砂漠には・・・」
ここに来ての、新しい設定なり。
「でも、見回りの東一族には無理だわな」
ケヤが云う。
「東一族からは逃れられないよ」
「東、」
「一族・・・」
「夜の砂漠当番さんには、何も意味ないから、これ」
「なんてこったい」
「でも、なぜ、東一族に狙われるの?」
「ん~。なんでだろうねぇ」
「そして、やらしいことが!!」
「ツイナ、いつまでやらしさを求めているの?」
「だって見て! この男女比!!」
「・・・男女比?」
「2体1だよ!!」
「・・・ツイナ」
「ヨシノは、俺とケヤだったら、!!」
「それは砂先生の、ケヤよね」
ごーーーーーん。
そのやり取りを、ケヤは遠い目で見る。
さっと毛布を取り出す。
ふたりに渡す。
「ほら、冷えるから」
「ありがたいわ~」
3人は、毛布にくるまる。
朝になるのを、待つ。
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