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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」65

2018年05月01日 | 物語「約束の夜」

潮風が吹き、
海が見えない場所でも
磯の香りを感じることが出来る。

朝日が水平線から昇る、
満樹には見慣れない景色。

でも、どこか懐かしいような
そんな。

「昨日も見た景色だからな!!」
「あぁあ、
 海一族の村に戻って来ちゃった」

やけに説明的に始まる
満樹&ツイナ。

「あとは1人で大丈夫だな」
「んん!?」
「俺は先に南一族の村に向かい
 そこでお前を待つ」
「………んんん?」
「それじゃあ、
 後で!!」

「ちょっと、ちょっとちょっと!!」

流れるような動作で立ち去ろうとした満樹に
待てぇい、とツイナがタックルをかます。

「なぜに!!」
「なぜに、もなにも、
 部外者の俺が居たのでは
 聞き出せる話も聞き出せないだろう」

ツイナの出生について
本人が何も知らないのは
あえて知らされなかったという事も考えられる。

一族内でもタブーなのかもしれない。

「だから、俺は居ない方がよい」
「えええ」
「真実を知るのは
 もしかしたらつらいかも知れないが」
「そんな事。言わんといてぇ!!」

村に戻ってきてから
ツイナはやけに必死だな。

「俺、兄さんがいてくれないと」
「都合の良いときだけ
 兄さんは止めろ」
「具体的には
 なぜ俺があまりにも短期間で帰宅したかを
 みんなに説明して欲しい」

何よりも、そこ。

「そうだとは思ったが。
 ………仕方無い」

ごほん、と咳払いする満樹。

「お集まりの皆さん!!」

「突然の大声!?」

なんだなんだ、と集まり出す村人達。

「ここにいるツイナですが、
 昨日、俺と旅立ったばかりです」

「あれ、ホントだツイナだ」
「え?旅立ってたの?」
「そうらしいよ、知らんけど」
「おやまぁ、司祭様じゃないの~」
「ばあちゃん、司祭見習いだよ」
「東一族と一緒なんだ」
「でも俺が聴いた話しだと
 もう1人、西一族も居たとかなんとか」
「なになに、痴情のもつれ!?」

「………俺が思ってた説明と違う」

「昨日の今日で帰って来たその理由は
 ずばり、村で調べることが出来たから!!」

だから、と
更に大きな声で
念押しする満樹。

「決して!!
 自分探しの旅が一泊で飽きたとか
 メンバーと仲違いとか
 不祥事発生とかではではありません」

「ちょちょちょ、満樹!!」

「ホントに、本当です!!
 嘘じゃない、本当だよ!!」

満樹、これで解説終わりですの礼。
ぺこり。

「よし、こんなもんか。
 それじゃあツイナ
 南一族の村でな」

そう言うと
すたすたすたーと去っていく。

本当、本当、本当だよーと呟きながら。

「「「「……………」」」」

残される村人とツイナ。

「あぁ~、ゴホン。ツイナ」

村人の先頭には
いつの間に来ていたのかミツグが。

「ミツグ兄さん!!」
「大丈夫、うん。
 どんな理由であれ
 ケガ無く帰って来たのは良い事だ、うん」

うん。これは。
ツイナはもう姿が見えなくなった
満樹を想う。

「説明することにより
 余計怪しくなってしまったパターン」



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