私が装飾品を並べている店の前で立ち止まった時
『カイ』は面倒臭そうに
「何か買うの?」と問いかけてきた。
「これ、これが良いわ」
私は最初に目に止まった物を手にとって『カイ』に見せた。
「そう?……作りも雑だし、止めた方が良いよ」
『カイ』は別に声をひそめる事もなくそう言ったので、
店主が私達の方をチラリと見た。
「でも、こんな作りの物は初めて見たし。
珍しいからお土産に」
「村で待っている、ヨツバの彼、に?」
私は、頷く。
今頃あの人何しているんだろう。そう考えながら。
そんな私を見ながら少し考えるそぶりを見せた後、
『カイ』は自分の袖口をまくって見せた。
私が買おうとしていた品と
同じ作りの装飾品が じゃらり と揺れた。
「この飾りは、俺達の村の物。
多分それは模造品かな。出来が悪い」
そうして、自分の腕から一つを外して私にくれた。
「欲しいならヨツバにあげるよ。
俺はいくつも持っているし」
「でも、私はこれ、彼にあげるかもしれないわ」
だって、お土産だし。そう答えた。
「好きにしたらいいよ」
気にする様子もなく『カイ』は答えた。
そして、私が持っていた模造品の方を奪い取ると、面白そうに笑った。
「これは俺が買って帰ろう
偽物なんて面白い。逆に良いお土産だ」
どこかイタズラをしようとしている子供のようで
私は、あぁそうか、と思った。
「それは、村で待っている彼女への?」
『カイ』は返事をしなかった。
店主がその土産を包装紙で包んでいたから
私の声は聞こえなかったのかもしれない。
だけど、『カイ』は店主でも私でも、その土産でもなく
どこかずっと遠くの方を見つめていた。
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