杏子は、舟を降りる。
空を見上げる。
月だけが、そこにある。
杏子は、圭を見る。
彼と、目が合う。
云う。
「ありがとう」
圭は、何も云わない。
「圭の、家族の方に迷惑をかけてしまったね」
再度、杏子が云う。
「ありがとう」
圭はただ、杏子を見ている。頷く。
「私、もう少しだけ、頑張ってみる」
「・・・え?」
杏子の言葉に、圭は、目を見開く。
「もう少しだけ・・・、頑張ってみる」
「うん」
「圭も頑張ってね。あなたの村で」
杏子は云う。
「本当にありがとう。さようなら」
杏子は、もう一度、圭を見る。
そのまま、背を向け、歩き出す。
東一族の村へ。
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