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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」136

2016年02月19日 | 物語「水辺ノ夢」

「久しぶり」

巧は、その声の方向を見る。

そこに、湶がいる。

「・・・・・・」

巧は、湶を一瞥し、歩き出す。
水を運んでいる途中だった。

湶も、巧に続く。
声をかける。

「聞いたよ」
「・・・何を」

「東一族のこと」

「・・・・・・」
「杏子、お前のところにいるんだろ?」

巧は立ち止まらない。

水を汲み、運び、甕に入れ、また、水を汲みに向かう。

湶は、ただ、その様子を見ている。

「杏子は、元気か?」
「・・・・・・」
「今は、」
「今は、中で横になっているんだろ」

巧は、水を甕に入れながら、訊く。

「いつ、西に戻ってきたんだ?」
「俺か?」
「お前以外に誰がいる」
「まあ、数日前、と云うか」
「ひとりで来たのか?」
「そう」
「どうせ、また、南に行くんだろ」
「そうだな」

湶が云う。

「杏子に会えるか?」
「横になっていると云った」

巧が云う。

「起こすなよ。面倒くさい」

湶は、巧を見る。

「聞かないのか」
「何を」
「・・・圭のこと」
「・・・・・・」

巧は再度、歩き出す。

「あいつ、杏子のことを案じていると思う」
「・・・・・・」
「それを、わかってやってくれないか」
「・・・・・・」

「いろいろと、すまない」

巧は立ち止まる。

云う。

「その言葉の意味がわからない」


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