TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」60

2014年03月21日 | 物語「水辺ノ夢」

ゆらゆら、と、水面が揺れる。

水辺は、相変わらず、霧に覆われている。
肌寒い。

そう思いながら、辺りを見る。

水辺は、静かだ。
誰もいない。

麻樹は、梨子から預かった装飾品を握りしめる。
本来は、次期宗主の光院から、自分の娘に渡されるはずだったもの。
なのに
今は、そのふたりとも、いない。

娘は

杏子は、いったい、どこへ行ってしまったのだろうか。

麻樹は、ため息をつく。

水辺を見る。
揺れていた水面が、不規則な動きをする。

麻樹は首を傾げる。
霧の向こうを、見ようとする。

霧の向こうに、ほのかな光。

その光が、近づいてくる。

麻樹は、ただ、その光を見つめる。

そして、現れる舟。

舟なんて
ずっと昔に、一度、見たきりだ。と、麻樹は思った。

「誰だ」

麻樹は訊ねる。

「君は、誰だ」

東一族ではない者に、訊ねる。

「君は、どこから、来た?」

麻樹は、彼を見る。
彼と目が合う。
彼は、自分とは違う容姿。

ゆらゆらと揺れる舟。

そこに、若い西一族がいる。


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