先月最後のLHR、奨学金についての勉強会を実施した。
「奨学金」という名称だが、給与でない限り「借金」なのだということを、どれほど丁寧に伝えても、生徒になかなか現実感をもって受け止めてもらえない感じがする。
大学初年度の学納金(入学金+授業料+実習費)に加えて、間違いなく高校の教科書より高額な教科書・図書代金、交通費等。細かく話してもピンと来ないようだ。そこで、こんな切り口で話しをしてみた。
「一回の授業、いくらだと思う?
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あくまでも平均値だが、文部科学省のウェブサイトに掲出されている『私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について』という資料を用いて話をしてみた。これは、『私立大学、私立短期大学及び私立高等専門学校における平成26年度入学者に係る初年度学生納付金について』の調査結果である。
それによれば、おおよそ以下の様になる。
授業料864,384円
入学料261,089円
施設整備費186,171円
合計1,311,644円
これらに、実験実習料等を含めた初年度に納める総計は、1,434,996円。
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これらの数字を見ても、まだ響かない。
こんな考え方をさせてみた。
履修上限の単位数が各大学でどのように定められているかにもよるが、年間44単位を上限に、2単位科目を22科目履修すこと仮定する。すると1科目(2単位)の「お値段」はこうなる。
864,384÷22≒39,290円
2単位科目の場合、通常1科目、90分の講義を15回実施。加えて考査が1回である。39,290円を考査を含めた16で割ると2,455円、講義回数で割ると、おおよそ2,620円である。これを1科目の1回の授業料とする。
90分で500円玉5個プラスα
この言い方が、ちょっと響いたようだ。
1学年で前期で11科目履修の場合、1週間に2,620円×11で28,820円である。これが15週間続く。後期もこれと同じことをすると、年間の授業料は上記の864,384円に近くなる。
何単位取れれば卒業できるのかを考えさせる。
四年制大学卒業に必要な単位数は124単位である。124単位を2で割ると、62になる。62科目に39,290円をかけると、2,435,980円である。これが卒業最少単位数を取るための「お値段」である。
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生徒たちにスマホやケイタイの電卓機能を使わせて、色々計算をさせた。このあたりの数字を見て、コストを考えることができたようである。数名の生徒が気がついた。
「センセ、授業料は4年間同じですか?
「うん。だいたい同じだよ。
---ザワザワ---
「何か気がついた? あれ、ちょっとまてよって思えた?
授業料が4年間同じだとすると、どういうことになるか気づかせる。
授業料864,384円×4年分=3,457,536円であり、卒業最低単位数の総額のお値段2,435,980円である。そこには1,021,556円も差がある。「多く」支払うことになるのだ。
これって、どういうこと。
そして44単位ずつ履修・習得できれば、3年間で132単位になる。卒業最低単位数を超えている。でも、大学の修業年限は4年が原則。卒業はできない。
これって、どういうこと。
生徒たちの顔に大きな?が出たところで、一区切り。大学の学びについては後日ということになった。
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翌日以降進路室に出向いた生徒が少し増えた。放課後の相談も色々出てきた。「知らないことがあることを知る。」「わからないことに直面させる。」のは、とても大事なことだ。