浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

リリー・クラウスによるショパン

2010年09月19日 | 洋琴弾き
リリー・クラウスが珍しくショパンを弾いてゐる。普段はモーツァルトやベートーヴェンを弾いてゐる洋琴家が、実はショパンも素晴らしい演奏をするといふことはよく在る事である。バックハウスなどは晩年になってベートーヴェン弾きになったが、指がよく回る若い時期にはリストやショパン弾きとして知られ、「獅子王」と呼ばれてゐた。内田光子はショパン競技会の準優勝者で「日本最初のショパン弾き」と云はれてゐる。

リリー・クラウスは昔、神戸で聴いたことがあった。硬質な音色が気に入らなかった。しかし、今日聴いてゐる1938年のパルロフォンへの録音では、潤いのある粒だった美しい音色で弾いてゐる。神戸のピアノの調子が良くなかったのであらう。あそこのフルコンは僕も弾いたことがあるが、僕にとっては自宅のピアノよりも良い音がするのでなんの文句も無かったのだが。

此のショパンはなんと表現すべきなのだらう。即興曲第弐番と前奏曲第四番の2曲だ。ショパンから民族色を一切取り除いたら此のやうな表現になるのだらうか。音楽として良い流れがあって、粒の揃った音で歌い上げてゐるのだから、心は当然満たされるはずなのだが何か残念な気持ちが残る。女性的でとても優しいショパンである。

盤は、英國PearlによるSP復刻CD GEM0053。


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