浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ブダペスト四重奏團によるブラームスの弦樂四重奏曲第2番

2008年04月14日 | 器楽奏者
Frei aber einsam(自由であり、しかしながら孤独であり)これはこの四重奏曲のテーマだそうだ。ヨアヒムによって初演されたこの曲は、異郷の地で媚び諂うことをせず理解者を探すといふ孤独な戦いに挑む僕の心境と重なるものがある。

間違いだらけの異郷の地での仕事はきついものだ。友人Mも福岡の工場の建て直しの為に単身赴任で飛んで行ってしまった。今までの風習や悪しき前例を片っ端から壊していくのは、うまくいけば正直言って快感なのだが、世の中それほどうまくはいかない。水戸の黄門さんのやうな権力があればテレビの如く気持ちの良い展開となるわけであるが、残念ながら僕には陰毛はあっても印籠はない。

ブラームスにはヨアヒムといふ良き理解者が居た。僕にも友人Mといふ良き理解者が居たが、そういつまでも傍に居てくれるものではないのだ。残る350日を改革に捧げようといふ決心をする為には、この四重奏はあまりに切ない。

この作品を聴いてゐると、順調に改革の進むこの異郷の地の生活に居心地の良さを感じ始めてゐる僕自身の妥協に、なんとも言へぬ惨めな気分が込み上げてくるのだ。この小さな成功に甘んじてゐて良いものか。僕の人生はそれで満足してしまって良いものか。そろそろ、351日目以降の身の振り方を考えておかねばいけないのかも知れない、今宵はそんなことを考えながら、ブダペスト四重奏團によるブラームスに聴き入ってゐる。

盤は、伊太利亜Stringsによる1945年3月22日のライブ録音のリマスタリングCD  QT99-330。


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