浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

エドワード・キレニーといふテクニシャンのリスト「タランテラ」など

2007年12月29日 | 洋琴弾き
エドワード・キレニーはSP時代に名を馳せた洋琴界のスーパーテクニシャンである。レイボウィッツとやった「死の舞踏」の乾いた感触やショパンのエチュードの冷たい印象が記憶に残ってゐる。久しぶりにCD盤でキレニーを聴いてみた。

キレニーの父はガーシュインの作曲の師匠でもあり、音楽一家の恵まれた環境で育った彼は、ドホナーニに才能を見出され、25歳となった1935年から欧州でオーケストラとの協演を重ね、名声を不動のものとしたやうだ。協演した指揮者の名を見ると、ビーチャム、クナパーツブッシュ、ミュンシュ、ミトロプーロス、オールマンディ、クレンペラー、ウッド卿、パレー、バルビローリなど、多彩な顔ぶれが並ぶ。

1940年には故郷である亜米利加でのデビューを果たしたが、キレニーの録音はこの時期のものしか知らない。リストの「巡礼の年:ヴェネツィアとナポリ」の中の「タランテラ」などは強靭なタッチで、ガンガン弾きまくってゐる。洪牙利狂詩曲第15番「ラコッツィ」も正確な打鍵と猛烈なスピード感で圧倒される。当時、一般的にはソロモンの盤の方が入手しやすかったが、痛快さといふ点ではキレニーが勝る。

キレニーはつい最近まで現役として活躍してゐたらしいが、同世代のリパッティ、リヒテル、チェルカスキ、ボレらと比べると、その知名度は著しく低い。特別な個性が印象に残らない単なるテクニシャンは忘れ去られる運命にあるのかも知れない。

盤は、伊太利亜The Piano LibraryによるSP復刻CD PL226。


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