浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ウィルヘルム・ケンプの熱情奏鳴曲 

2008年06月20日 | 洋琴弾き
僕は幸せな少年期を送った。中学生だった頃に一度、ケンプの演奏会に招待されて聴きに行った記憶がある。そのときにこの「熱情奏鳴曲」がプログラムに入ってゐたと思ふ。今日は、SP盤に残されたケンプの演奏を聴きながら、懐かしい思い出に浸ってゐる。

ケンプは1936年に初来朝し、それ以降10回ほど日本を訪れ、こよなく日本といふ国を愛してくれた。僕が聴いたのは何度目の来朝かは知らないが、細身のケンプのステージ上での紳士的な態度が印象に残ってゐる。

ケンプのフルトヴェングラーとの交遊関係はよく知られてゐるが、大切なのは、この二人はともに「自分は作曲家である」といふ立場で演奏活動を行ってゐた点だと思ふ。

今日は久しぶりにポリドールの青レーベル3枚組の熱情奏鳴曲を聴いてゐるが、第2楽章が実に美しい。第1楽章での感情の高揚や終楽章コーダでの加速などの場面では、テクニックがもう少しあればもっと凄い表現になったのでは、と思ふ部分があるので、いま一つ聴く側も感動を憶えない。このことについては技術的な細かなことになるのでここでは取り上げない。それに比べ、第2楽章の回想的な変奏はやや速い目のテンポで進められるが、実に深いところから音が出てくる。

目を閉じるとケンプのステージ上での笑顔が瞼の裏に浮かんでくる。

なお、ケンプの熱情は、僕の知る限りではポリドール、独逸クラモフォンに4回録音を残してゐるやうだが、この初回録音は入手が難しいやうだ。現在、1960年録音の限定盤もCD化され(下の写真)、モノラルLP、ステレオLP時代の3種類は簡単に聴く事ができるやうだ。僕としては、一味異なる初回録音も多くの人々に聴いてもらいたいやうな気もする。


ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27の2 「月光」
ケンプ(ウィルヘルム)
ポリドール

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私家盤復刻CD 復刻堂765-0004PF、原盤は、独逸Polydor 40527~9。


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