浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

貴志康一 日本組曲より市場 自作自演

2006年10月15日 | 日本國の作品
貴志康一については、「道頓堀」を取り上げたことがあるが、今回は日本組曲の1曲である「市場」をご紹介したい。貴志康一は友人Tの大先輩にあたり、そういった関係から母校の甲南高校がキングレコードと制作したLPを僕に紹介してくれたのだ。これが、僕の貴志康一との出会いである。

日本の情調を大管弦樂の上に表現した珍しい作品といふ紹介が載った当時の「カイセツ」がおまけに付いたマニアックな17cmLP盤である。曲の冒頭は市場の雑沓の有様を描き、物寂しいファゴット、クラリネットの独奏、行進曲風のフルート、オーボエの独奏、そして再び哀愁を帯びた提琴独奏を経て冒頭の雑沓に戻るといふ構成になってゐる。

1930年代の伯林フィルハーモニーはトゥッティではフルトヴェングラーを思わせる重厚な響きを聴かせ、ソロの部分ではそれぞれの奏者が素晴らしい音色を聴かせてくれる。録音は1933年といふことなので、提琴独奏はおそらくシモン・ゴールドベルクが担っている。

しかし、悲しいことに関西が世界に誇るべき天才は、29歳の若さで病に倒れ帰らぬ人となった。デビュー盤に続いて発売された本レコヲドが追悼盤となってしまったのは残念の極みである。

盤は、キングレコードによるSP復刻LP ND―171(原盤はテレフンケン 20625)。


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