浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ティボーのサンサーンス提琴協奏曲第1番&序奏とロンド・カプリチオーソ

2009年12月05日 | 提琴弾き
サンサーンスの提琴協奏曲の第3番は知ってゐたが、まさか第1番が作曲されてゐたとは思わなかった。初期の作品のやうだがサンサーンスの持つ華やいだ雰囲気とやや古典的な空気を持った作品である。ティボーの演奏は亡くなる直前のライブ録音のやうだ。

ティボーの甘美な提琴の音色を存分に聴くことができるのは、ヘッセン放送局による録音技術の高さと、伴奏を付けてゐるヘッセン放送管絃團の水準の高さと、ティボーの高音域の音程の高さに因る。ティボーの音感は独特のやうで僕には4分の1或いはそれ以上のうわずった音程に聴こえてしまふ。これはかなり厄介な問題である。

序奏とロンド・カプリチオーソも同じ日に同じメンバーで録音されてゐる。こちらも素晴らしい演奏なのだが、カプリチオーソでは次のフレーズへの溜めでオケとティボーの息が合わない。思い切り拍節構造が壊れてしまって残念。二度やっても同じことを繰り返すので、またまた残念。しかし、そのやうな傷は直ぐに忘れることができる。ティボーは熱を帯びてゐて、ガリエラの指揮も見事である。音楽が高揚して、この単純な作品を実に面白く聴かせてくれる。

来朝途中の飛行機事故で亡くなる4ヶ月前の、1953年4月29日の録音。
盤は、英國Appian P&R社の復刻CD APR5644。


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