田舎生活実践屋

釣りと農耕の自給自足生活を実践中。

正岡子規の病牀六尺を読む 3/3(2013/1/26)

2013-01-26 22:38:40 | 俳句、短歌
印象に残った箇所(3/3)

病牀六尺(岩波文庫 ワイド版 p174)
いよいよ暑い天気になつて来たので、この頃は新聞も読む事出来ず、話もする事出来ず、頭の中がマルデ空虚になつたような心持で、眼をあけて居る事さえ出来なくなつた。去年の今頃はフランクリン自叙伝を日課のやうに読んだ。横文字の小さい字は殊に読み慣れんので三枚読んではやめ、五枚読んではやめ、苦しみながら読んだのであるが、得たところの愉快は非常に大なるものであつた。フィラデルフィアの建設者とも言うべきフランクリンが、その地方のために経営して行く事と、かつ極めて貧乏なる植字職工のフランクリンが一身を経営していく事と、それが逆流と失敗との中に立ちながら、着々として成功していく所は、何とも言はれぬ面白さであつた。この書物は有名な書物であるから、日本にもこれを読んだ人は多いであろうが、余の如く深く感じた人は恐らくほかにあるまいと思う。去年はこの日課を読んでしまふと、夕顔の白い花に風が戦いで(そよいで)初めて人心地がつくのであつたが、今年は夕顔の花がないので暑苦しくて仕方がない。(九月一日)

 子規はこの20日後、明治35年9月19日に結核・脊椎カリエスが悪化し激痛の内に亡くなる。満35歳。フランクリン自伝は、私も高校生~大学にかけて何度も読んだ(翻訳 冒頭の写真)面白い本。アメリカでは、昔から社会に出る若者の必読の書であると聞いている。日本の太閤記とよく似た、痛快で、経験に基づき仕事の優れたやり方が懇切丁寧にこれでもか、これでもかと明示されている名著。子規が実業家としても大輪の花を咲かせることの出来る人であったとこの一節を読むと分かる。

 
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