温故知新~温新知故?

音楽ネタが多いだろうけど、ネタのキーワードは、古きを訪ねて新しきを知ると同時に新しきを訪ねて古きを知るも!!

日本史を暴く 礒田道史著 読了 〜この本で概要を知り、詳しい内容はYouTubeや新たな本で読むべきかな?〜

2024-03-13 10:12:41 | 
この本は、有名だけど、やはり朝日新聞の書評がきっかけだと思った。大変人気のある本のようで図書館予約人数は100人くらいだったかな。
内容は、基本的に磯田氏が手に入れた古文書から、歴史の裏側的な話を以下のような目次で簡単に紹介している。
目次
第1章 戦国の怪物たち(大仏を焼いたのは松永久秀か;久秀が大悪人にされた理由 ほか)
第2章 江戸の殿様・庶民・猫(三代・徳川家光の「女装」;甲賀忍者も勤め人 ほか)
第3章 幕末維新の光と闇(西郷隆盛、闇も抱えた男;幕末、公家の花見行 ほか)
第4章 疫病と災害の歴史に学ぶ(ねやごとにも自粛要請;感染楽観で繰り返した悲劇 ほか)
好書好日で紹介されている、織田信長の遺骸の話、秀頼の実父は祈禱師、儒学者の貝原益軒がカブトムシを嫌っていたなど、私にとっては興味深い話がいろいろある。本書によれば江戸時代は、一部の一般庶民の日記まで古文書として残っているとのことだ。ちょっと、古文書を探してみたくなる。しかし、くずし字が読めなければいけないし、歴史のある程度の知識が必要だ。(私にはないな)

大河ドラマなどの歴史時代劇で描かれる時代と言えば、戦国時代か幕末維新と、最近は、おおよそ相場が決まっている。
 理由は歴史小説などの題材として盛んにとりあげられてきたため、登場人物になじみのある名前が多く、視聴者が入り込みやすいこと。もう一つは同じ理由から、コアな歴史ファンがすでについていることだ。
 本書は歴史番組などのコメンテーター・モデレーターとして、すっかりおなじみになった歴史学者、磯田道史(みちふみ)・国際日本文化研究センター教授が2017年から22年にかけて新聞に連載したコラムをまとめたもの。
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  1582年に起きた本能寺の変で討たれたまま行方不明となった戦国武将・織田信長の遺骸が、実は本能寺近くの阿弥陀寺の僧侶によって収容され、同寺に葬られていたという史料があるとの話は、その真偽は別として、どきっとさせられた。
   さらに「豊臣秀吉の子とされる秀頼の実父は祈禱師(きとうし)だった可能性が高い」とした服部英雄・九州大学名誉教授の説を踏まえながら、父親の名を史料で追いかけ、当時の公家の日記に出てくる、ある人物に注目するくだりには思わず引き込まれた。
   このほか、本草学者で儒学者の貝原益軒がカブトムシを嫌っていた話や、初代首相・伊藤博文と安芸の宮島をめぐるエピソードまで、全4章のうち2章を戦国と幕末維新に割きつつ、自らの専門の近世史や最近関心が高まっている感染症史などについても、幅広く目配りしている。
また、磯田氏は忍者について興味があり、他のことも詳しいが忍者に関しては以下のように特に詳しいようだ。肩書きも「国際日本文化研究センター教授」、「甲賀市ニンジャファインダーズ団長」とのことである。
【前編】「忍者を追う歴史学」磯田道史教授/シリーズ「日本研究のトビラをひらく」
YouTube上には礒田氏の解説動画がいろいろあるようで、この本で触れた内容が詳しく説明されている。時間のある方、興味のある方はYouTubeの方がいいかもしれない。
そうそう、江戸時代の感染症の話やスペイン風流行の話なども本書では触れている。YouTubeでも述べられているので参考までリンクを紹介しておく。
【磯田道史解説】恐怖の感染症で人口3割減とも 幕末のワクチン接種とは(2023年2月19日)

万物の黎明 読了 〜常識を覆す、興味深い本。〜

2024-02-28 15:46:37 | 
この本は、いろいろメディアで取り上げられているのだが、やはり朝日新聞の書評で興味を持ったのだろう。
「万物の黎明」 [著]デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ  数年に一度、人類史の全体像を提示する本が現れ、国際的なベストセラーとなることがある。
原書が2年前に英語で刊行された本書も、その一冊だ。
副題を見て『サピエンス全史』のような本を思い浮かべるかもしれないが、その印象は裏切られるだろう。人類学者と考古学者の手で書かれた本書は、このジャンルの前提に正面から挑戦する。
 その前提とは、人間社会が一定のパターンに沿って進化するということだ。典型的には、小規模で平等な狩猟採集社会が、定住農耕による生産力の向上を経て、階級格差を伴う大規模な国家へと発展する。
 本書によれば、こうした思考は西洋人の偏見にすぎない。近年の考古学は、農耕が始まる前に巨大な都市が築かれたことを示す遺跡など、従来の先史時代のイメージに反する事例を数多く発掘してきた。
また、人類学は、一般的には「未開」だと見なされる人々の暮らす社会が、実は極めて豊かな多様性を持つことを明らかにしてきた。
中身は、下に見開きページを撮った写真を紹介するが、2段、全約640ページというヴォリューム、かつ下の写真の左側にあるように、随所に脚注が小さな文字である。借りて手に取った途端、これは2週間では読了できないなと諦めていたが、毎日50~100ページというペースでなんとか読了できた。しかし、脚注は無視したし、随所に出てくる人物名や地名、遺跡、歴史的人物のなんたるかは追求しないことでやっと読了できた。本来は購入して、手元におき、じっくりと史実や説明を熟読して読むべきだろう。
さて内容だが、以下のAmazonのある方の書評が簡潔に集約したものだろう。古代についての現在の常識がくつがえる内容だ。
ゲームチェンジャー
私たちが頭までどっぷりと浸かっている西欧中心的な歴史観、社会観が、ガラガラと崩れ落ちる体験をした。
今2度目の精読をしている。一番の強みは考古学や文化史の事実の見直しに基づいていることだ。社会科学のゲームチェンジャーといえる。既存の学説に依存している権威者には是非論争を起こしてほしい。
内容が膨大なので、本書の内容を詳しく紹介したり、要約することは大変難しい。よって、いかにいくつか私がポストイットをつけた内容について紹介する。
すなわち、古代の人類は原始的な未開の民だという常識がいくつかの例でそうとは限らないことが述べられている。
古代は、戦闘にあけくれ平等主義とは遠い世界と考えられていたが、そうではないようだ。古代に対して、なぜヨーロッパ人は競争心がかくも強いのか、なぜヨーロッパ人は食べ物を分かち合わないのか?なぜヨーロッパ人は競争心がかくも強いのか?なぜヨーロッパ人は他人の命令に服従するのか?という形で色々な例示が示されている。
そのなかで、我々は現代社会の常識で古代の生活や社会様式を説明してしまいがちであるが、一つの例を挙げると、シェイクスピアの時代の事柄を恐竜に例えてしまったりするが、シェイクスピアの時代にはだれも恐竜の存在を知らなかったはずなので、あたかもそれが当時の人たちの考えと叙述してしまうのは危険だろう。
アメリカインディアンについても、西部劇で描かれ、そこから我々はある既成概念を持ってしまうが、下のポヴァティポイントの例をみても、もしかしたら、彼らは我々より進んだ社会形態を実現していたかもしれないのだ。
ポヴァティ・ポイントの記念碑的土塁群
ポヴァティ・ポイントの記念碑的土塁群は、ルイジアナ州ウェスト・キャロル・パリッシュにあるアメリカ先住民族の遺跡です。
2014年に世界遺産に登録されました。ポヴァティ・ポイントの名は、遺跡の近くにある19世紀のプランテーションか名付けられました。
ミシシッピ渓谷の中の小高く狭いところにあります。
ここは紀元前1500年から紀元前700年の間、狩猟採集民が居住や祭礼の場として数百年間使っていたと考えられています。
周囲は森林と湿地で、これらを利用して都市が造られたと考えられています。中心部は6つの同心八角形から成り、最も外側の直径は約1.3km。1つずつ土を盛った畝で出来ています。
農耕の発達がブレークスルーとなって世界は大きく変わったという考えが主流だが、いいかえると、世界は、コムギ、コメ、キビ、トウモロコシによって養われているのであって、これらのない現代生活を想像することは難しい世界となって、それによる制約に縛られる世界となっている。
日本でも弥生時代に農耕文化が成立して、進化した弥生時代の農耕民と進化前の縄文時代の狩猟採集民という考えが主流となっているが三内丸山遺跡の発見で、その考えの修正が必要ではないかとなっている。
三内丸山遺跡とは
 三内丸山遺跡では、平成4年(1992年)から始まった発掘調査で、縄文時代前期~中期(紀元前約3,900~2,200年 現在から約5,900~4,200年前)の大規模な集落跡が見つかりました。
たくさんの竪穴建物跡や掘立柱建物跡、盛土、大人や子供の墓などのほか、多量の土器や石器、貴重な木製品、骨角製品などが出土しました。
 青森県は遺跡の重要性から、平成6年(1994年)に遺跡の保存を決定しました。
平成7年(1995年)から遺跡の整備と公開を行い、平成9年(1997年)3月には史跡に指定され、さらに平成12年(2000年)11月には特別史跡に、平成15年(2003年)5月には出土品1958点が重要文化財に指定されました。
また、令和3年(2021年)7月には三内丸山遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されました。
 青森県では、縄文時代の「ムラ」を体験できる場所として、三内丸山遺跡の保存・整備・活用をこれからも進めていきます。
その他、現代選挙に金がかかるので政治には裏金が必要だという話題がメディアを賑わしているが、古代には真に民主的である役職の選出方法はくじ引きであると考えられていた時代もあったようだ。私も、公平な選挙あるいは金のかからない選挙のためには抽選も一つの選択肢になりうると思う。古代にこのような考えがあったというのは大変驚きであった。
その他、不消化だが気になったキーワードを挙げておく。
ー 三つの原理(暴力の統制、情報の統制、個人のカリスマ性)が社会的権力の三つの可能な基盤である
ー 南北アメリカのいくつかの地域では、競技スポーツが戦争の代理として機能していた。e sportsなどでゲーマーが職業となっているが、人間は本来戦うのが好きだ。戦争をなくすには、それをゲームに置き換えることができれば戦争で犠牲者が発生するのをなくすことができるのではと思う。
ー 「バンド」、「部族」、「首長性」、「国家」という進化の過程は?
ー 古代は農耕を離脱する動きが選択の自由としてあった。フレキシブルな社会であった。
ー 女性のリーダーは古代にもあった。新石器時代の社会における革新は、ある天才的な男性が孤高のヴィジョンを実現するというものではなく、主に女性たちによって、何世紀にもわたって蓄積されてきた知識の集合にもとづいており、そこには一見すると地味であるものの実際にはきわめて重要な発見が延々と繰り返されていた。例:酵母という微生物を加えることでパンを膨らませることを最初に考えたのはだれだったのだろう?それは女性であることはほぼ間違いない。
ー 社会が複雑化すれば国家が形成されるし、国家が形成されているところは社会が複雑であるという常識。
膨大な内容で、原書は英語特有の関係代名詞が使われているのか、単語の説明的な部分が多いので、非常に読みにくいが、じっくり読むべき本だと思う。現状の打破にむかうヒントがいろいろあると思う。

師匠はつらいよ 杉本昌隆著 読了 〜将棋の師匠や棋士の生活や悩みが新鮮〜

2024-02-15 15:19:08 | 
この本は、やはり下の朝日新聞を読んで予約したと思う。
現代の若者のことを、Z世代、と呼ぶことがある。
案外この言葉が世間で定着し、広く使われているのは、「Z世代の若者とどう接していいかわからない」という悩みが普遍的なものだからではないだろうか。
そんな悩みをもった大人たちに手渡したいのが、本書である。
本書はZ世代の筆頭である将棋棋士・藤井聡太さんを弟子に持った、通称「杉本師匠」の日常エッセイである。
私の感想は、以下のAmazonの書評を書かれた方と同様で、藤井聡太・八冠とのやりとりが微笑ましい。また、とても想像できない将棋の棋士・師匠の日常が語られているのが、興味深い。ほっこりする本です。
引用した方のコメントでも取り上げている以下の6つが私的には面白かったというか、印象に残りました。各エピソードが1〜2ページなので、細切れで読めて楽しめました。
★ 第23回 「 A I 」との付き合い方
★ 第43回 棋士とバレンタインデー
👑第54回 パソコンショップでの攻防
★ 第67回 家族サービス
★ 第76回 「人間将棋」の妙味
★ 第78回 「おやつ」のルール
〝観る将〟の父ともども、心楽しく、さくさく読めたエッセイ集。ほっこりとしたおかしみに、癒やされました。
『週刊文春』をよく読んでいる父から、「この連載、毎回楽しみにしてるんだ。
一冊にまとまったのを読んでみたいから、買ってくれないか」頼まれて購入した一冊。将棋好きの父がさくさくっと読み終えたみたいなので、「〝観る将〟の僕も読んでみたいんやけど、貸してもろても良いですか?」言うて、借りて読んでみました。
藤井聡太・八冠(2023年12月の現時点で。本書の初めでは二冠だったが、最後のほうでは〈棋王〉を獲得して六冠に)とのやり取りのなんとも言えないおかしみ、微笑(ほほえ)ましさを始め、師匠の日常のあれやこれやがのびのびと綴られていて、心が随分癒(い)やされました。なんというか、〝おやつ〟もろたみたいな、嬉(うれ)し懐(なつ)かしほっこりした心持ちになりましてん。
師匠の人柄を端々(はしばし)に感じる、温かみのあるユーモラスなエッセイの数々。ほんま、あちこちでくすり、にやり、させてもらいましたわ。
師匠が十代の頃から大好きだという星 新一のショートショート(第23回の文章に記載あり)。あの妙味に通じる、とぼけているようでハッとさせられるおかしみがあるようにも感じました。
本書に収められた 100のエッセイ + 先崎 学 九段との対談の中、以下に挙げる24のエッセイが良かったですね。(👑印の回の文章には、特に心惹かれました。)
★ 第4回 スギモト一族
★ 第9回 対局前夜症候群
👑第12回 縁台将棋愛好家たちの挽歌(ばんか)
👑特別編 先崎 学 × 杉本昌隆 「藤井聡太と羽生善治」
★ 第18回 棋士に向いている五輪競技?
👑第22回 二人のスーパースター
★ 第23回 「 A I 」との付き合い方
★ 第32回 最高の誕生日
★ 第43回 棋士とバレンタインデー
★ 第45回 将棋との出会い
👑第49回 一人暮らしのススメ
👑第54回 パソコンショップでの攻防
👑第57回 棋士の涙
★ 第66回 愛(いと)しき動物たち
★ 第67回 家族サービス
★ 第72回 「詰め将棋」の天才
★ 第75回 将棋を愛する人たち
★ 第76回 「人間将棋」の妙味
★ 第77回 「将棋は体力」
★ 第78回 「おやつ」のルール
👑第84回 最高のプレゼント
👑第91回 修羅(しゅら)の道
★ 第92回 ぎっくり腰はつらいよ
★ 第100回 連載百回の〝感想戦〟

WIFI不具合騒動〜WiFi接続を失った時の不便さを味わいました〜

2024-02-10 17:58:03 | コンピュータ、ハイテク
今回、2月1日から東京に来ている。その際、まずカミさんのiPhoneがスムーズにwifiに繋がらなかった。過去にも何回かそのようなことはあったので、またかということで再接続して過ぎていた。
その後、カミさんのiPhoneにはデータ接続オーバーなので、接続制限となり遅くなりますとのメールがDocomoより届いたりした。WiFi接続していない状態でネット検索、ブラウジングをしまくっていたせいだ。
その後2月5日くらいから、時々1〜3時間くらいしか繋がらなくなってきたので、ルータのElecomやプロバイダーのアサヒネットにメールや問い合わせをした。そして、2月7日には時々繋がっていたのが全然繋がらなくなった。そこで、8日に、NTTの終端機RT-S300NEかVDSL VH-50ⅡEに問題がありそうとのことで、NTTから紹介されたトーメイという会社の方と2時間ほど電話で、色な設定を試して、NTTの機器が悪いということで交換が必要ということだったが、とりあえずの接続を確保できこれで、機器交換までなんとか大丈夫と思ったが、1時間もすると、やはり突然切断の現象が再発。そこで、9日にNTTへ連絡して、本日10日やっとNTTの方が来て機器交換をしてもらい復活しました。
この間、毎日10回くらい、Elecomのルーターの設定を初期化したり、再設定したりを繰り返して、疲れました。
WiFi の接続が失われると、パソコンもダメ、かろうじてiPhoneの電話接続によるネット接続しかダメで、非常に不便でした。今の世の中、インターネット接続を失った際の不便さを思い知りました。

弁護側の証人 小泉喜美子著 読了 〜被告は誰か? なかなか面白かった〜

2024-01-19 16:46:41 | 
この本は、以下の方と同様に「王様のブランチ」で湊かなえさんがミステリの傑作というような言い方をしていたので、それは読まなくてはと、図書館で検索して、読みました。
松田悠士郎
「王様のブランチ」BOOKコーナーで、湊かなえさんと呉勝浩さんが激賞していたので俄に興味を持ち、書店を3軒回って漸く手に入れた。
で、地味に読み進めていたら終盤で「え? え?」とマジに声が出た。ネタバレは嫌なので詳しく書かないが、正に「書き方」の妙(描き方、ではなく)。参りました。
sawa
テレビで紹介されて気になったのだけど、本屋にもない、図書館にもない、古本屋にもない、どこにもない。
諦めてたところで発見した時は小躍りしたい気分でした。
今までの経験からいうと、こんなに期待してから読む本はイマイチだということが多いのですが。昔に書かれた本なので、表現の仕方が独特というか、まどろっこしいというか。面白くないことはないのです。
だけど、めちゃくちゃ面白い!ってわけでもなく。それとも私の読解力がないのか。道尾秀介さんがあとがきを書かれているのですが、小泉氏の亡くなった理由の方がびっくりでした
RN
ネタバレ文体が古いと思ったら、1963年の小説。
最初の刑務所の面会、どっちが内側とるか、がカギだね。
タイトルの弁護側の証人が誰か、最後までわからなかったけど、この人なんだ、という驚きがあった。
ネタバレになってしまうかもしれないけど、私は後半で、「えっ、被告って???」という感じで、歳のせいかなんで勘違いしたのかと思い、再度最初の方を読み直しました。しかし、それが綿密なトリックのようなので、歳のせいではないようでした。そのような意外性が面白かったです。
このトリックに騙されないと、全く面白くない可能性大です。また、アガサクリスティとかエラリークイーンなどのミステリーを楽しんだ人でないと、情景描写などが、楽しめずにうっとおしく感じるかもしれません。白鯨は情景描写が長すぎて途中で諦めた私でも楽しめましたというか情景描写を味わえました。作中に、アガサクリスティの「アクロイド殺人事件」などのタイトルが出てくるけど、著者はアクロイド殺人事件も参考にしているんでしょうね。禁じ手だそうですが、「アクロイド殺人事件」のトリックには驚かされました。
名作ということのようですが、昭和38年(1963年)の作品と知って驚きでした。著者は昭和60年(1985年)に亡くなっている。昭和の人向けのミステリってことになるのかな?私は湊かなえさんのいうとおり、確かに名作だと思いました。しかし、色々な方の書評を見ると、賛否両論のようですね。最後にAmazonのある方の感想も載せておきます。
JJ
5つ星のうち5.0
前知識なしで読んでください
何でこんなつまらない女の独り言みたいな小説が名作なんだろうな。
薄幸で頭の緩い馬鹿女の身の上話で退屈です。
でも昭和の古臭い言い回しが新鮮で、文章は読みやすかった。
(未読の方は、ここから先読まないでね)
で、見事騙されましたね。
まさに、逆さ富士。
叙述トリックっていうのは、トリックの核心が面白い、に加えて 逆さ富士に気づいたときに、人物像やいくつもの印象的な台詞が まったく異なってみえてくる、そこに妙味があると感じました。
素晴らしい、に尽きます。

ダイハツ不正その後〜今後に注目したい〜

2024-01-18 14:01:52 | ニュース
2024年が明けましたね。
地震と航空機事故で「無事に」とは言えない新年でした。私も今年は年賀状も辞めたので、年末年始とのんびりしすぎたので、2024年初めての投稿が本日ということで非常に遅くなってしまいました。
さて昨年末に投稿したダイハツの不正事件、具体的に記述のある投稿がありましたので引用します。
■「鉛筆を舐める」は、どの現場でも少なからず行われている…が… 上記のような事情があって、実験部員が実験データに手を加える…というほどではないにしろ、車両性能や安全に支障が出ない範囲で、「データを選別する」ということは、他のメーカーでも大なり小なりはやっているだろう(繰り返しになるが、今回明らかになったダイハツほど酷い不正ではないにしろ)。
たとえば、衝突試験などの実験データは、担当エンジニアがダミー人形を用いて身体や頭部にかかる加速度を測定して行われるが、生のデータはノイズだらけ。
その生データを見やすくするため、担当エンジニアがトリミング(不要な波形を切り取る)したり、ノイズフィルター(評価に不要な周波数成分を取り除く)をかけるなどをして、障害値という代表値を求める。
そのうえで、実験結果には必ずばらつきがある。少なくとも5回実施して上限下限の2例を除いて平均をとる等が必要だが、それをやるかやらないかは、その時の判断にゆだねられることもある。
また、たとえば目標値が「100未満」の実験において、実験結果が99ならばOKだが、101の場合をNGとするかも、担当エンジニアのセンスに託されることがある。
今回のダイハツの事例のように、最終工程へ開発遅れのしわ寄せが継承されてきた場合、しかも実験のチャンスが一度きりの場合ならば、数パーセントの外れは「見なしOK(※目標値未達だが実験誤差を加味して±10%の範囲なのでOK)」とする判断はあり得る。
この事件は、その後、2024年になって、国交相が認証試験のやり直しをしたり、認証取り消しをしたりしている。また、トヨタも現場に人を送ったりしているようだ。
体制や組織そのものが、これらを是としてきた組織なので、本当に変わるのは大変難しいだろうが、今後も注目していきたい。

ダイハツ不正問題〜追記〜

2023-12-30 22:57:27 | ニュース
先に、以下のように、ダイハツ不正問題というタイトルで投稿したが、下の記述の部分で少し言い忘れたので追加で投稿する。
また、認証試験や生産ライン出荷時には、各部品にバラツキがあり、結果的に出力や排ガスなどの結果にある幅が生じる。その幅は±3%くらいにもなり、それを前提で出力や燃費の公表値は発表・認知されている。
上のようなバラツキがあるので、私のいた会社および付き合いのあった会社(日本及び海外の会社)では、いわゆる生産時に公表される出力、燃費や排ガス試験の数字には、開発中には開発目標値が、余裕をもって達成できるように、数%あるいはそれ以上の数値に設定されていて、生産時にバラついて規制値をオーバーするとか、公表値に達さないということにならないようにしている。開発時にこれらの数値は生産の約1年前や数ヶ月前2〜3回、品質保証部門あるいは認証部門にチェックされて、生産をむかえることになっている。
ダイハツの例を見ると、これらの開発目標が設定されていないで、生産直前に、目標値を達成できないことになっているように感じる。これも常識とはずいぶん違う。どうなっているんだろう。関係トップマネージメントの総入れ替え、開発や認証の組織体制の根本的な変更が必要と思われる。

ダイハツ不正問題〜メディアでなかなか紹介されないので、具体的にどんな不正かを調べてみた〜

2023-12-30 16:47:07 | ニュース
ダイハツの不正問題、前代未聞の全車種出荷停止となっていますが、不正の内容が一部以外紹介されていないので調べてみました。
以下のサイトに「25の試験項目で計174件の不正行為が確認され、最も古いものは1989年までさかのぼる。対象はすでに生産終了した車種も含めて64車種(トヨタやマツダ、スバルが販売している車種を含む)に及ぶ。」と一部具体的な内容が記載されている。
「衝突試験」で繰り返された不正  具体的にどのような不正行為があったのか。
4月に発覚したのは、側面から衝突された時の乗員に対する安全性を確かめる「側面衝突試験」の不正で、ドアに量産時と異なる加工を施して試験を受けていた。

 5月のケースは、電柱などのポールに斜めから衝突した際の安全性を確かめる「ポール側面衝突試験」で、助手席側の試験データを運転席側のデータに流用していた。
一般に、運転席側にはハンドルなどがあるため、衝突安全性の基準をクリアするのが難しいとされている。

 今回新たに発覚した不正は、側面衝突時に作動するエアバッグを、試験の段階で制御装置が未開発であったため、タイマーで作動させていたり、前面衝突試験の結果をリハーサル試験の結果に差し替えていたといった不正で、非常に広範囲にわたっている。
また、以下のサイトでは、ミライイースの成功体験が、このような事態を招いたとの考察が載っている。
当時はトヨタ自動車の「プリウス」に代表されるHVが有力な低燃費の技術だった。
筆者は当時、大阪府のダイハツ本社でミライースの開発責任者にインタビューしたが、「車両重量が重くなるHVは軽自動車には不向きだ。価格も高くなってしまう。このためダイハツはHVを採用しない。
軽量化とエンジンの改良で低燃費を実現する」と語っていたのが印象的だった。

 ミライースはHVと遜色ない低燃費を実現しながら、価格はプリウスの半分程度の79万5000円に抑えた。そんな低燃費と低価格を武器にミライースは大ヒット。受注台数は発売後2週間で月販目標の約3.6倍に当たる約2万5000台に達した。
確かに上のサイトの考察は、わかるがもっと具体的に自分なりに考えたくてダイハツのサイトで調査報告書をダウンロードして熟読してみて、結果的には長くなってしまったが以下のようにまとめてみた。
ダイハツのサイトは以下のとおり、下のサイトから調査報告書のPDFをダウンロードした。皆様の方でもさらに詳細な内容を知りたい方は、以下のサイトから報告書をダウンロードして参照してください。
当社は、2023年4月28日に公表した認証申請における不正行為を踏まえ、公正で独立した第三者委員会を本年5月15日付で設置し、事案の全容解明および原因分析に加え、当社の組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだ再発防止策の提言を依頼し、この度、その報告書を受領いたしました。その調査報告書について公表いたします。 この度の問題に関し、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
さて、以下からは私がまとめた内容になります。このトピックの最後の方に作成した表をペーストしました。字が小さくかつ、まだ内容が盛りだくさんなので、さらにまとめてみます。上のサイトでは、以下のように3つの具体例が書かれている。
1.電柱などのポールに斜めから衝突した際の安全性を確かめる「ポール側面衝突試験」で、助手席側の試験データを運転席側のデータに流用していた。
2.側面衝突時に作動するエアバッグを、試験の段階で制御装置が未開発であったため、タイマーで作動させていた
3.前面衝突試験の結果をリハーサル試験の結果に差し替えていた
要するに、データ流用と試験そのものを変えて認証を受けていたということ、そしてテスト結果の差し替えである。
この中で、私が詳細をまとめた資料でも、流用はいくつもある。短期開発を最優先するために、立会認証管に説明したり、再試験をするのでは生産を遅らせる必要があるため、それを省略してしまうことが日常化していることがわかる。
また、認証試験では試験条件として、法規で重量や速度の範囲を決めているが、それが法規の範囲を超えてしまう際に、例えば、計測値は42mmだった際に法規内の数値41.5mmに独断で安全上問題ないだろうと変えてしまっているのがわかる。
また、試験車に車台番号が刻印されていないのに虚偽の車台番号を記入して申請している。
7項、後面衝突試験における不正行為の1. 衝突速度の虚偽記載の例では、「速度が基準を超過していたが不利な条件下での結果だったため安全上問題ないと判断して虚偽の速度を記載」とこれも独断で安全だろうと判断して虚偽記載をして申請してしまっている。
15. ヒップポイント試験における不正行為では、1.室内安全試験の評価項目として実施される試験における座席加工において、「立会試験の前日夜にはさみやカッターで着座位置を低くする加工を加えて調整した」とまさに犯罪行為をしていると言える行動をしていることは驚きだ。
このようなことを10件、20件と重ねているとは全く驚きである。
最後の24. 排出ガス・燃費試験における不正行為、25. 原動機車載出力認証試験における不正行為については、品質保証関係ではないが、開発として、私のしていた仕事に密接に関係している。
オイル温度を上げる、排ガスを漏らす、新しい触媒を使う、走行抵抗を小さくするなどは、誰もがすぐ思いつき開発中に課題解決のため色々トライした経験はエンジン技術者だったら誰でも持っているだろう。
出力に関しても、吸気通路を磨く、修正係数をいじるなども同様で、開発中の定番の課題解決方策だ。
しかし、あくまで、開発中であり、認証試験で、このようなことをするのは基本的には考えられない。ところが、ダイハツでは、都合の悪い数値は認証申請においては、日常的に書き換えるという風土となっていたと思われる。通常は品質保証部門は技術部とは別の組織として、トップの役員→部長→課長→係長(主任、班長)という組織が、品質保証部門と技術開発部門とそれぞれ独立してあって、技術部門が開発を急ぐあまり、上に見られる行動をとった場合、品質保証部門が待ったをかけるという組織になっているものだが、このダイハツの例では、品質(認証)担当部門と技術開発部門の責任分担がはっきり分かれていないように感じる。
また、認証試験や生産ライン出荷時には、各部品にバラツキがあり、結果的に出力や排ガスなどの結果にある幅が生じる。その幅は±3%くらいにもなり、それを前提で出力や燃費の公表値は発表・認知されている。だから、記者が試乗する車両などでは、その上限になるような準備をすることはあるが、それを認証試験で実行するというのは、なんということだという感じである。
私はこのような仕事に関わってきた人間なので、上記のような感想を持っているが、このような仕事に関わっていない人には、これらの不正に対していったいどのように感じるのかは興味深い。
以下が私の作成した不正のリスト一覧。



久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった。 読了 〜今のキャスターやMCは皆、同じことを言ってる、面白いわけがない〜

2023-12-24 17:48:34 | 
久米宏さん、初の書き下ろし自叙伝。
TBS入社から50周年を迎える今年、メディアに生きた日々を振り返ります。 入社試験の顛末から、病気に苦しんだ新人時代。
永六輔さんに「拾われた」『土曜ワイドラジオTOKYO』、 『ぴったし カン・カン』『ザ・ベストテン』『久米宏のTVスクランブル』『ニュースステーション』の18年半、『久米宏 ラジオなんですけど』の現在まで。
久米宏の歴史=メディア史の意味もあり、時代の証言として、なによりも 「ない番組」を切り開いてきた、一人の人間の成長物語として、読み応えのある1冊です。
初日の惨敗から ニュース番組の革命といわれるまでの『ニュースステーション』は、圧巻のドキュメント。伝説の番組は、 時代の空気を鮮やかに甦らせます。
覚えていなけど、この本は、TVかなんかで知ったんだと思う。予約を入れようと図書館で検索したらすぐ借りれそうなので、タイミングを見て予約を入れすぐ借りれた。タイトルの「久米宏です」のあとの「ニュースステーションはザ・ベストテンだった。」という言葉が興味を引いた。
目次は以下の通り。
【目次】 【プロローグ】 『ニュースステーション』初日の惨敗
【第1章】 ―青春のラジオ時代―
寝坊で最終面接に遅刻 アナウンスブースでの危機 栄養失調から結核に
ひたすら電話番の日々 なぜ永六輔さんに拾われたか 「番組つぶしの久米」 【第2章】 ―テレビ番組大成功―
『ぴったし カン・カン』大ヒット 『ザ・ベストテン』発進 公正なランキングによる大波乱
『ザ・ベストテン』と『ニュースステーション』 百恵さんのお尻をむんず 「健康な努力家」黒柳徹子さん
【第3章】 ―生放送は暴走する―
視聴率100パーセントの超多忙 オフィス・トゥー・ワンとの出会い フリー転身で得たもの、失ったもの
テレビだけができる番組 本音で勝負する横山やすしさん 裏番組は大河ドラマ 久米君はワシを必要としてるんか
【第4章】 ―『ニュースステーション』に賭ける―
中学生でもわかるニュース 電通の快挙と暴挙 テレビ朝日が社運を賭けた
三つのタブーを犯す すべての生番組を降板 初日から低迷する視聴率 せっぱ詰まってのお祓い
チャレンジャー事故報道で転機 奇跡のフィリピン革命放送 風俗を語るように政治を語れ
【第5章】 ―神は細部に宿る―
ブーメラン形のテーブル 犠牲者520人分の靴 話し言葉でニュースを読む ニュアンスのある無表情
オリジナルを最優先したコメント 出演者同士の対決を演出
【第6章】 ―ニュース番組の使命―
ニュース戦争勃発 日本が再び戦争をしないように 素人から半ジャーナリストへ 久米・田原連立政権
椿事件に巻き込まれる 大きなミスだったダイオキシン問題 テレビと政治の不義密通
【第7章】 ―『ニュースステーション』が終わるとき―
終戦時の長嶋茂雄少年 レクター博士を怒らせた ロッテ-近鉄戦を中継せよ 巨人優勝で丸刈りに
Jリーグ発足とサッカー熱 「いつやめるか」という課題 契約が切れた三ヶ月間 最終回の手酌ビール
【第8章】 ―ラジオ再び 番組の中で「生きる」―
【エピローグ】 ―簡単に まとめてみる―

内容は、久米宏という人はチャレンジの人だということ。歌番組「ザ・ベストテン」での挑戦、ニュース番組「ニュースステーション」での挑戦、さらにTVスクランブルという番組でのTV業界での挑戦など、挑戦の話題ばかりだ。
今、自民党の裏金で話題だけど、自民党議員の不祥事に、アナウンサーとして「けしからん」「国民をばかにしてる」では何も新しい視点を提供できない。「まぁ、仕方ないでしょう。党の幹事長なんだから。こういう発言をしなかったら立場がないでしょうねぇ」とコメントしたそうだ。人と違うことにこだわっていたとのことだ。今の、ニュース番組は、コメンテーターなど出演者は、そのような気配は全くなく、皆同じことを言っている。
また、「コメンテーターの意見にキャスターが逐一うなづく必要はない。「それは違う」という日があってもいい。」とも書いている。
ニュースステーションでは、小宮悦子さんとのコンビが絶妙だったが、「小宮さんは美人で、僕はプレイボーイのイメージがある。すると潜在意識で「久米と小宮の関係」を疑うだろう。だから、その期待に応えて月に一度は「悦ちゃん」と読んだ」とも書いてある。
そのほか、自民党の政治家から久米のニュースに出る時は気をつけろなどと警戒されるのを嫌ったようだ。特別な偉い人と思われるのではなく、素人の感覚を忘れたくなかったそうだ。
有名人のインタビューをする際に、いろいろなニュース番組に登場するスターに他の局で聞いたことをまた質問するのを嫌い、他局で聴いたことは聞かないようにしていたようだ。だから「今朝、朝食はなにを食べましたか?」などの質問をすることは、皆と同じ質問するより、ちゃんと考えた価値のある言葉となると書かれている。
いずれにしても、非常にいろいろなことを考え、準備して番組のキャスターをしていたことがわかる。
いまのニュース番組のキャスターを見ていると、このような努力をしているとは感じられない気がする。最近のニュースが面白くないわけだ。
一気に読める、なかなか興味深い本でした。


デンソー燃料ポンプ不具合事故 〜不具合に対する自由な発想が足りないのでは?〜

2023-12-16 22:34:16 | ニュース
このところ、読書に関する投稿以外あまりしていないので、今日は技術的な少し仕事であった技術的な話題を投稿したい。
10月に仕事を辞めたので、それまで、当事者で書けなかったことが今後は少し書けるようになったことだし、そのような記事も書いていきたい。しかし、年齢のせいかめんどくさい。笑
さて、ここ数日デンソー製燃料ポンプの不具合のニュースがいくつか紹介されている。
というのも、「今回のような事故は、今後も起こる危険性がある」(自動車の専門家)という声が上がっているからだ。
「クルマを運転中にエンストが起きると、運転者はパニックになり、冷静に路肩に停車できないどころか、停車するまでに追突される可能性も出てくる」(同専門家)と。
理由は、この欠陥燃料ポンプにはフェイルセーフ設計の視点が欠けていることにある。
その中で、上のニュースはフェイルセーフという言葉を使っている。まさに、私もこの事象はフェイルセーフ設計の視点が欠けていると思う。
みなさんは、自動車で高速道路を走っているときなど、一番安全上、危険な事象はなんだと思いますか?。上の記事はあたかも、急に停止したら危ないことに気が付かないのはエンジニアとしては問題だという論調だ。しかし、どうだろう、普通の人やエンジニアはスロットルあるいはアクセルが全開になって暴走するのが一番危険だと思うのではないだろうか。私もそう思う。
実際、電子スロットルを水上オートバイに採用した際に、私も、最初はそう思っていた。しかし、上で言うFMEAというフェールセーフの考えを織り込む手法で、スロットルが閉じる方が危険だという検討結果を経験した。なぜなら、全開による暴走は、ブレーキを使って、人間の意志で止める手段が存在する。しかし、全閉になってしまう事象は人間の意志では、手の施しようがないのだ。FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)という手法では、いろいろな不具合を発想豊かに想定して、それぞれの事象に点数をつけ、どれが一番安全上問題かを皆で認識し合い、それぞれに対応案を考え、対策をうつのだ。
このとき、私は、暴走よりも突然灯ってしまうことの方が危険だというのは想定外の結果だった。
FMEA(故障モード影響度解析)とは
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)とは、製品や製造プロセスに潜在する故障モードを事前に洗い出し、影響を分析評価したうえで対策を講じる解析手法です。
故障モードとは、故障を引き起こす不具合(原因)を指し、故障そのものを意味するわけではありません。
故障モードの洗い出しにはFMEA評価フォーマット(FMEAシート)が活用されます。
当時、FMEAは新設計の機構などを開発する際には必ず実施するように決められていた。グループ討議などで、メンバーが順番でいろいろな不具合を提示し合うのだが、その際、多くの人は発想が乏しくて、「パス」する人が多かった。そう、地震が起きたら、とか津波が来たらとかいうことも、批判せず検討に入れるのがルールなのだが、皆あまり突拍子もないことが言えない。
そこで、過去からこの燃料ポンプの件の最近まで、いろいろな不具合において、私は、エンジニアの不具合に対する発想が貧困になっているのではないかと心配になる事象が多いと思う。
原発の津波による電力喪失、ホイールのボルトの緩み、システム更新時のITシステムの不具合、ロケット発射時の燃料漏れや発火など、きちんと想定して対応が組み込まれていれば、避けられていたのではと思う。プロがプロの仕事ができていないと感じる。
発想豊かに、いろいろな不具合を想定し、対策すれば、このようなことはかなり防げるはずだ。私たちの世代は、排ガス規制でエンジンなどはそれまで経験のない部品をつけ、経験のないシステムを構築してきた中で、ゼロから、いろいろな不具合を想定し、それに対して、対策を打ってきた。また、それが大変だけど非常に面白かった。ところが、最近のエンジニアは、立派なマニュアルがあるし、先人がやったFMEAの結果をベースに仕事をしてきた結果、不具合を想定する発想が貧困となっているのではないだろうか?マニュアルや過去の結果に頼るのではなく、ゼロから考え直すような訓練や組織としての姿勢が必要ではないかと思う。
さらに、自動運転などが話題となっているが、高齢者の運転する車の暴走事故が多いことから、自動運転車が暴走することに目が向いているかもしれないが、突然止まることも、それ以上に危険だという認識が、それらに関わるエンジニアに当然あると期待するが、大丈夫だろうか?。
TVであるコメンテーターだかタレントが、ハトを轢いて罰せられた事件から発想して、「自動運転車は、ハトなどが道を横切る際、それがハトだと判断して、急ブレーキをかけるべきか否か判断できるのだろうか?」と疑問を呈していたが、本当に大丈夫だろうか?また、ハトでもなく、路上に舞う落ち葉や紙屑などを、適切に判断して、急ブレーキをかけるべきか、そのまま速度を維持した方がドライバーや同乗者に安全となるという判断が適切にできるのだろうか?。どうなんだろう?当然、それらの事象を想定して、対策のロジックが織り込まれているんでしょうね?。