温故知新~温新知故?

音楽ネタが多いだろうけど、ネタのキーワードは、古きを訪ねて新しきを知ると同時に新しきを訪ねて古きを知るも!!

女らしさは誰のため? ジェーン・スー 中野伸子著 読了〜正解や最適解を得られずに悩むことが我々の繁栄に寄与したのかも〜

2024-07-13 17:56:42 | 
この本は、カミさんの希望で借りた。ジェーン・スーのTBSラジオ「生活は踊る」は私の愛聴番組である。東京へ行く車の中でラジオクラウドでいつも聴いている。
カミさんの読みたいという要望で借りたのだが、ラジオで興味があったので私も読んでみたら、なかなか興味深いキーワードがいっぱいあった。以下に列記する。

ー中野:「若さ」や「美人」のように、一般的に「得」と世間にみなされているものは、ほとんど長期的には使えない価値なんだよね。
ースー:おっしゃる通り、すべての人類は今日が一番若い。そして明日になると1日分、年を取る。
ー中野:損得というのは必ずしも一元的ではない、金銭的報酬・物理的報酬だけが報酬ではないんです。人間としてどう扱われるか、という社会的報酬、もっとシンプルな感覚的報酬、知的好奇心がみたされる知的報酬もある。
ー「おごられる」ことは相手の支配を受け入れること、中野:私自身は、おごられることはそう好きな方じゃない。ちょっと気が重い・・・・「自己決定権を手放すことことにつながりかねないから」なんだよね。
ー「男ウケ」と「女ウケ」。中野:「加齢による劣化を少しでも感じさせない」ということにいつも心的リソース割かなきゃいけない。・・・・でも女ウケを考えた場合は、価値が目減りしないんですよ。
ースー:保守系の女性政治家って保守的な男性にウケが良いスタイリング、メイク、髪形をしているよね。あの界隈では「男ウケする女」のほうが都合がいいのかな。
ー東大のサークル。中野:飲み会の支払いは「東大男子5000円、女子は1000円、東大女子は3000円」みたいな価値設定になるんです。
ー中野:仕事ができない男の課長はいても、仕事ができない女の課長はいないからね。
ースー:今後は「仕事ができない女性管理職」が爆誕していいんですよ。
ー中野:IQが高いからといって生きやすいわけでも何でもないしね。スー:説得力ある。中野:すごくあるでしょう?(笑)生きづらいですよ、むしろ、でもIQが高いと「ずるい」とか妬まれるのに、コミュニケーション能力がある人は「コミュ力高くてずるい」とは言われないんだよね。
ースー:死ぬまでの間は環境の変化に伴って「私の幸せ」を相対化させていけばいい。「これさえあれば絶対に幸せ」ではなく、幸せな状態を導く手段を変化させていくのです。
(ベティ・L・ハラガンによれば、男性は、子供の頃から個人の利益より集団の利益を重んじるゲーム(野球やサッカーなど)に親しんでいるから)相手に自分を理解させるよりも、互いの利益を減じない方法を採用するのは、彼らの方が得意なのです。
ー中野:「誰かのために生きる」って、恐ろしいことに、実に心地よいことなんだよね。
ー中野:「地球にやさしい生活を」という言葉をよく聞くけど、あれは人類の生存にとって都合の良い「完新世の地球をそのまま保つ」という意味しかないとも言える。だって、地球は別にどんな変化が起きようが何とも思わないでしょうからね。
ー中野:(正解をもとめない)バカロレアはそういう意味で、すごくいいトレーニングになるんじゃないかな、日本人は正解を選ぶ力は世界的に見ても高いはずよ、でも失敗を修正する力は低いかもね。
ー中野:あなたは選んだ答えを正解にできる人だから、と、以前、ある人に言われたことがあった。
ー中野:個性は悪目立ちしてしまうために足を引っ張る特性にもなりかねない、個性を伸ばそう、というお題目は、まあ、まずきれいごとの域を出ないといっていいだろう。
ー中野:ある確率で最適解を選ばないことが、私たちの繁栄のカギであったのなら、今もその性質が私たちの中に残っている理由が明確になる。いわば、私たちは、よく迷い、よく間違えるように仕組まれているということになる。

死ぬまでの間は環境の変化に伴って「私の幸せ」を相対化させていけばいい。「これさえあれば絶対に幸せ」ではなく、幸せな状態を導く手段を変化させていくのです。ーーー絶対的な幸せなんてない。幸せに思うことが大事。
「誰かのために生きる」って、恐ろしいことに、実に心地よいことなんだよね。ーーー安易に誰かのために生きるなんて言わないし、そうしないほうがいい。
「地球にやさしい生活を」という言葉をよく聞くけど、あれは人類の生存にとって都合の良い「完新世の地球をそのまま保つ」という意味しかない。ーーー賛成!!!

私は正解を求めたり、最適解を選ぶ会社生活は心地よくなかった。むしろ、正解や最適解をもとめられず、悩んだおかげで我々は繁栄してきたのかもしれない。!

面白く、興味深い内容の本でした。


 ファラオの密室 白川尚史 著 読了 〜ミステリーというよりも歴史小説のよう!〜

2024-06-24 16:12:50 | 
この本は、『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作!というので図書館で予約。
第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作!

紀元前1300年代後半、古代エジプト。
死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。
欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。
ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。
棺に収められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。
この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか?
タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!
浪漫に満ちた、空前絶後の本格ミステリー。
内容だが、ミステリーというよりも歴史小説のようだった。それはエジプトの古代ピラミッドを作っていた時代の様子がわかるのだ。それも小難しい歴史書ではなく、ミステリーを楽しみながら、古代のエジプト人の生活を垣間見ながら知ることができる。また、当時のエジプト人独特の考え方を他の国の人から見ると当たり前の疑問が生まれるという視点も描かれている。

『このミステリーがすごい!』大賞選考委員も絶賛のようです。
【選考委員 大絶賛!】
死者が甦る世界でなければ書けない魅惑的な謎に正面から挑んでいる。
これだけ野心的な設定を用意して、壮大な物語をきちんと着地させた点を高く評価。
このミステリーはたしかにすごい。
――大森 望(翻飲家、書評家)

現世に蘇ったミイラが何の違和感もなく受け入れられるあたり、
落語にも似たとぼけた味わいがあり、思わず吹き出しそうになった。
奇想天外な謎作りといい友情溢れる人間関係劇といい大賞の価値あり。
――香山二三郎(コラムニスト)

探偵役がミイラ、タイムリミット有り、不可能犯罪のほか謎がちりばめられ、
読ませるポイントが随所に用意されている。
古代エジプトに興味をもてない方々もぜひ読んでほしい。
――瀧井朝世(ライター)
下の著者白川尚史さんのインタビュー記事でも紹介されているが、著者は若いし、取締役(マネックス、AIベンチャー関係のよう)もしている。それも非常に意外で興味深い。
ピラミッドの構造、どのように遺体が移動したかなどの記述を読んだ際に、これは文系でなくて理系の人かなと思った。
ブルー・オーシャン戦略で古代エジプトに挑む
 宝島社主催の第二十二回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞した『ファラオの密室』は古代エジプトを舞台にした作品。著者の白川尚史は34歳の若さでマネックスグループの取締役を務めるビジネスマンだ。なぜ小説を書こうと思ったのか、なぜミステリーなのか、なぜ古代エジプトなのか。受賞作とその背景について話を聞いた。
取材・文=瀧井朝世 撮影=浅野剛
大賞受賞作は古代エジプトが舞台

 探偵役はなんと、ミイラである。自分の欠けた心臓を探すために三日間だけ現世に蘇った死者が、自身の死の謎と、ピラミッドから王の遺体が消失した謎を追いかける──そんな意表を突く設定で第二十二回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を射止めた白川尚史さんの『ファラオの密室』。歴史ものと聞くと構えてしまいそうな読者にも分かりやすい描写で、本格的な謎解きと人間ドラマを堪能させるエンターテインメント作品だ。
非常にユニークで面白い本に会いました。
下にAmazonの読者コメントもいくつか紹介しておきます。
ALFA
作品の世界観に気付くと引き込まれていました
なんでしょう、読み始めて気が付いたら、設定や人物、展開に違和感なく思考が溶け込んでいる私がいました。
不思議ですが、極端な登場人物などでてこず、フックになるようなエピソードを出してくるようなものでもないのに。
しかしながら、終わった後に爽やかなのは本当に不思議です。
たぶん読後、読んでいる途中の方には理解してもらえるのかな、と。 とりあえず手に取って読んでみましょう。
長々とした設定紹介、人間関係紹介、この作品はこういう作品なんだよ、という私にとっては疲れる出だしではありませんでした。

ソース

古代エジプトの独特な世界観に引き込まれた
ミステリーはそこまで読まず、エジプトの様式なども全然知らないで読んだのですが、とても楽しく読めました。読後感も良いです。
他にもあるんでしょうが、自分はミステリーで、ここまで宗教というか神を前提とした物語が展開されているものを初めて読みました。雑に言えばファンタジー色が強いとも言えるのかもしれませんが、世界観がうまく描写されており、引き込まれました。ストーリー的にもとても良かったと思います。
以下面白いと思った部分です。
主人公が冥界から現世に戻り、周りが普通に受け入れるという状況にまず面白みを感じましたね。現代からするとつっこみたくなる設定ですが、エジプトの死生観などが分かりやすく描かれているおかげで、すんなり受け入れることができたと思います。
死後の世界から戻る際、死ぬと心臓が秤に乗せられて、羽より重かったら魂が消されるという、そんなん絶対無理やん!って設定もガチで描写されており、大多数の人間にとっては怖い世界だなぁと思いました。
次に、短い本ながらキャラが魅力的だと思いました。奴隷が普通にピラミッド建設に使われている厳しい世界では、優しさがより際立ちますね。
誰がとは書きませんが、ヒーローみたいなカッコいい奴(そこまで描写は多くないですが)がいます。そういうキャラがいる小説はお気に入りになりやすく、この本もそうなりました。

最後に、物語の終わり方がいいと思いました。詳しくは書きませんが、すっきりできて、いろいろ希望が持てるエンドで良いと思いました。
以上、あまりミステリーを読まない自分ですが大変面白く感じ、本来移動中のみ読もうと思っていたものを、そのまま家で読んでしまいました。それくらい面白いと思った今作、興味ある方はエジプトだからと尻込みせずぜひ読んでみていただきたいです。

イーロン・マスク 下 ウォルター・アイザックソン  井口耕二著 読了 〜イーロン・マスクの意外な一面を知った〜

2024-06-03 11:37:12 | 
イーロン・マスク下 を読了した。
下にあるように4月に読んだ上巻の続きだ。
まず、この本は上下2巻あるが、この上巻を読んでる途中に下巻を予約したので、下巻の順番が来るまでまだ数週間(所蔵5冊で12番)あるので、まず上巻を読んだところで投稿することとした。
この本の作者と訳者は、下にリンクを書いたけど、以前読んだ「スティーブ・ジョブズ」(下にリンクを書いた、上の写真でわかるように、この頃は本買っていたんですね。
あるいは何回か読み返すつもりで買ったのかな?)と同じ人だ。この「スティーブ・ジョブズ」は以前読んだとき面白かったので、今回も460ページだけど1日50ページくらい楽しくスムーズに読めた。
それぞれの章が5~6ページくらいで細かく分かれているので、読みやすかった。
目次は上と同じように以下の通り
第52章 スターリンク スペースX
第53章 スターシップ スペースX
第54章 オートノミー・デイ テスラ
第55章 ギガテキサス テスラ
第56章 家族
第57章 フルスロットル スペースX
第58章 ベゾス対マスク(第2ラウンド) スペースX
第59章 スターシップのシュラバ スペースX
第60章 ソーラーのシュラバ
第61章 夜遊び
第62章 インスピレーション4 スペースX
第63章 ラプターの大改造 スペースX
第64章 オプティマス誕生 テスラ
第65章 ニューラリンク
第66章 ビジョンのみ テスラ
第67章 お金
第68章 今年の父
第69章 政治
第70章 ウクライナ
第71章 ビル・ゲイツ
第72章 積極的な投資家 ツイッター
第73章 「申し入れをした」 ツイッター
第74章 熱と冷 ツイッター
第75章 父の日
第76章 スターベースのオーバーホール スペースX
第77章 オプティマスプライム テスラ
第78章 波乱含み ツイッター
第79章 オプティマス発表 テスラ
第80章 ロボタクシー テスラ
第81章 「洗いざらい」 ツイッター
第82章 買収 ツイッター
第83章 三銃士 ツイッター
第84章 コンテンツモデレーション ツイッター
第85章 ハロウィーン ツイッター
第86章 青いチェックマーク ツイッター
第87章 オールイン ツイッター
第88章 本気 ツイッター
第89章 奇跡 ニューラリンク
第90章 ツイッターファイル ツイッター
第91章 迷い道 ツイッター
第92章 クリスマスの大騒ぎ
第93章 軍用AI テスラ
第94章 人間用AI X・AI
第95章 スターシップの打ち上げ スペースX
私は、この本を読む前は、イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズ以上に資本主義の成功者で頭に金儲けしかない男かと思っていたが、この本を読むことによって、そんな彼の違った面を知った。悪い所だらけかと思ったが、結構良い所もあるし、感心する言動もある。人類を救うために、火星に人類を移住させるのが目標のようだが、その他にも、子供はたくさん産まなければいけないなどの思いがあるようだ。技術的には、以下の「5つの戒律」が共感できる。
  1. 要件はすべて疑え。国の要件もせいぜい「勧告」として扱え。
  2. 部品や工程はできる限り減らせ。減らしすぎて後で増やすくらいが良い。
  3. その上で、シンプルに最適にしろ。
  4. さらにその上で、サイクルタイムを短く、スピードアップしろ。
  5. そして最終的に自動化しろ。
この目次からわかるように、マスクは、テスラ、スペースX/スターリンク部門、ツイッター、ザ・ボーリングカンパニー、ニューラリンク、X・AIという6社を経営している。

また、スターリンクやスターシップによって、宇宙での通信衛星も何個も打ち上げており、スターシップによってロケットは20回以上?宇宙に飛ばしておりNASA以上だし、かつブースター?は回収して使える用にしている。つまり以下のエピソードでわかるが、戦争でも絶対の力を使おうと思えば使える状態なのだ。その気になれば戦争を支配できる。
ーエピソードー
「第70章 ウクライナ」でマスクは、ウクライナのロシアの妨害で使えなくなった衛星通信をスターリンクで復活させて無人潜水艦でロシアを攻撃したいという要求を断っている。”マスクは無人潜水艦の設計は素晴らしいと思うが、接続の回復はできない。ウクライナは「やりすぎて、戦略的敗北の道を進んできる”と言って断ったとのことである。

その他の印象に残ったエピソードを以下に紹介する。

ーマスクはツイッターで「最近はメディアがどんどん集団的浅慮に走って同調圧力が高まっており、みんなと足並みをそろえなければ排斥されたり黙らされたりすることになります。」 ”確かに!、私も同じように思う”

ーマスクは自律運転にオールインする。自動運転でなく自律運転すなわち車を持つ必要がなくなるものを目指している。鍵を握るのはロボタクシー。「運転手なしで、呼べば来て目的地まで乗せていってくれ、そこから次の乗客の元へ走り去る。」これが自由に手軽に利用できたら、車を持つ必要はない。 
”まさにその通り、自動運転でなく自律運転にしなくちゃ!、でも、自動車要らなくなる?!”

”自動運転でLiDAR などのセンサーより、画像による情報を大事にすること、なぜならテスラによって、多くの画像データがテスラにはすでに蓄積されている。”

ーニューラルネットワークプランナーが解析したテスラの自動運転映像は、2023年の頭、1000万フレームほどに達した。でもこの方法では、平均的なドライバー並みの運転しかできるようにならないのではないだろうか。
「それは違います。状況に上手に対応した例だけを使っているからです」とショフ(担当者)は言う。
そんなある日、ショフが最新の成果を見せてくれた。すごいなと感心しつつ、マスクは、そもそもこういうことをする必要が本当にあるのかという疑問を感じた。大がかりすぎるのではないか?ハエを殺すならハエたたきにすべきで、巡航ミサイルを使うのは愚の骨頂だ。(私も同感。このようにマスクはまともだ。)ニューラルネットワークというややこしいことは、ほとんど遭遇しない特殊ケースに対応する以外には不要なのではないか?
”これが上で述べた自律運転に関連するエピソードだ。色々なシチュエーションで、人間がどのように行動をしているかが動画として蓄積されているのは、他の会社ができていないことだろう。私は自動運転に疑問を持っているが、このような事例を動画として持っていて、それがAIの学習データとして何年も築先され適切に使われるのであれば、人間を超えるかもしれないと思う”

ーさ、出発だ。駐車場に止めた車の中で、マスクが行き先を地図で指定し、完全自動運転をクリックする。そして、ハンドルから手を離す。表の道路に出たところで、さっそく、ひやりとする状況に直面した。自転車がやってきたのだ。
「我々はみんな息を飲みました。自転車はおかしな動きをすることがありますから。とショフは言う。
だがマスクは気にした様子もなく、ホイールを握ろうという動きも見せなかった。車は自動的に道を譲る。
「人間ならそうするだろうなと思う動きをした。」
”自転車厄介ですよね、人間は、何年も運転してきたドライバーであれば、この自転車は、こんな特徴的な動きをしているから、こんなシチュエーションでは、こんな動きをしそうとか予測できる、そして、たぶん現状のセンサーだらけの自動運転車より上手に対応できるはず。”

著者のウォルター・アイザックソンは本当にマスクに信頼されているのだなあと思わせる記述がたくさんある。それは、マスクの各企業の重要な決定がどのような経緯を経てなされているかが書かれているからだ。マスクが何を悩み、迷っているかが記述されている。そのような場に著者が同席しているし、メールなどが送られているのだ。

ジョブズの本は、私はアップル勢品を愛用しているので、面白そうと思ったし、面白く読めた。しかし、イーロン・マスクについては、あまり好印象を持っていなかったので、期待していなかったが、この本で彼の違う面を知って、むしろジョブズより、好印象を持てる部分があることを知った。面白い本でした。

なお、この本意はマスクが自分の赤ちゃんの世話をする写真がいっぱい載っている、それも違うマスクを知るのに良い資料だ。



世界でいちばん透きとおった物語 読了 〜紙の本でしかできない仕掛けってなに? ぜひ体験してほしい。タイトルもいい〜

2024-05-18 21:31:39 | 
この本は、いつもの朝日新聞の書評ではなく、以下の愛聴番組である東京MXの「5時に夢中」の新潮社執行役員の中瀬さんの推薦本だったと思う。タイトルも意味深で興味深かった。
中瀬親方のコメント「この本は文庫書き下ろしで、電子化は絶対に不可能。つまり、紙の本でしか体験できない特別な感動が味わえるということで、YouTube でバズって、それが各方面に飛び火して話題を呼んでいる大注目の1冊で、今ものすごく売れています。ネタバレ不可なので、何も情報を入れずに読んでほしい作品です。
内容は、いろいろな書評にあるように紙の本でないとできない仕掛けがある。これはすごいとしか言いようのない仕掛けである。
その仕掛けについては、ネタバレになるので書くことができない。いやあ、本当にすごい仕掛けだ。著者も、編集者も、構成者も大変だったろうとだけ書いておく。私も後半で、もう一度初めに戻って何ページも確認した。
いや、感動の本でした。皆さんも、ぜひこの感動を体験してほしいです。
下に作者とのインタビューがあったの紹介する。
文庫書き下ろしのミステリー小説『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮社)が快進撃を続けている。2023年5月の発売後、動画メディアでの紹介をきっかけにヒットの波に乗り、25万部を突破。帯には「紙の書籍でしか不可能」や「ネタバレ厳禁」がうたわれ、期待値の高さに応える巧みな仕掛けが、既読者のクチコミを呼び、未読者の好奇心をかき立てた。電子化時代に大胆な「紙のトリック」を打ち出した著者に、創作の背景を聞いた。
インタビューの中で、作者が言っているし、作品の中で、小説家が参考にしたと言う本は気になるな。探して読んでみたい。
作品の原点となった少年時代の衝撃の読書体験 ――本作は、杉井さんが今までの読書体験の中でも最大の衝撃を受けたという「ある小説」にインスパイアされて書かれたことを公言されています。改めて、その一冊との出合いについて教えてください。

続 窓ぎわのトットちゃん 読了 〜戦争時の庶民の日常体験がさりげなく描かれているところが感銘を受ける〜

2024-04-25 13:25:36 | 
この本は、やはり朝日新聞の読書欄を読んで予約した。現在予約数は228と多いが所蔵数が24冊もあるので、割とすぐに順番が来た。

著者のあとがきにもあるが、この本は「私が経験した戦争のことを書き残しておきたいと考えたことが、『続 窓ぎわのトットちゃん』を書くきっかけの一つだということも、このあとがきに書いておきたかった」とのことだ。おかげさまで、以下の私の感想を書くことができる。
この本のなかで、私の印象に残ったのは、「トット、疎開する」という章だ。そこには、戦争中、疎開先への移動、疎開先での生活などが描かれている。過去に「シリア 戦場からの声 単行本 〜桜木 武史 (著)」という本を読んだときにも目から鱗だったのは、戦争をしている国には普通の日常生活があるということだ。戦闘ばかりではない、普通の庶民は毎日を戦争前と同じように生きているのだ。
「犠牲者が何百人でた、悲惨です、私は憤りを感じます」みたいないかにも正義のジャーナリストという感じで、報告するが、それがいかに虚しいかが分かる。
みなこの桜木氏のように反政府軍の兵士と一緒に銃も持たずに戦闘に同行せよとは言わないけど、このようなひとが報告する内容と比べると、ネット検索や安全が確保された中での取材は虚しいかが分かる。
しかも、桜木さんは「死」でなく「生」に重きをおいて報告してくれる。
だから、この黒柳徹子さんの戦争体験で語られる小さな日常ではない体験を語り継ぐことが大事だと思う。わたしは70歳を超えたが、この本のような体験はしていないが、それをリアリティを持って語ることができる最後の世代だと思いう。
一番、強烈なのはトットちゃんが混んだ列車で駅に停車した際に、窓からお尻を出しておしっこする場面だ。トットちゃんは、その前に一度列車のトイレに行くのだが、トイレのまわりに人がいっぱいだし、便器の向こうに男の人が座っていて、とてもおしっこはできなかった。また、トットちゃんが窓からする前に、親切な隣のおばさんが、こうするんだよとやってくれたので、なんとか用をたせたという話だ。トットちゃんが混雑した社内をトイレに行くまで、周りの人が親切に道を譲る様子も、今とは違う何かを感じる。
そもそも、トットちゃんは青森まで疎開するのに当然おかあさんと兄弟は一緒にいたのだが、上野駅ではぐれてしまい、次の列車で行くことになるのだが、そのときも今とは違いまわりは最小限の親切心で接してくれる。
疎開先の青森ではリンゴ小屋に住むのだが、ふろしき代わりに使っていたゴブラン織の生地を、今度はソファがわりに使ったり、さらにはトットちゃんの確か入学式の服にまで利用するのである。
ほかにも、当時、移動の時は、お米は、米そのままで携帯し、訪れた先の近くで、お米を炊いてくれませんかとお願いして炊いてもらったり、おにぎりにしてもらったのだそうだ。お米は炊いてしまうと、腐る前に食べなくてはいけないので、炊かずに持ち歩いていたのだそうだ。
また、トットちゃんのママは、食堂のようなことをやって商売し、その後家を建てるくらいの蓄えを貯めることになる。
これらの逸話は、まさに先の桜木 武史 氏著の「シリア 戦場からの声」を読んで私が書いた「「死」でなく「生」に重きをおいて報告してくれる。」という部分だ。みな生きるのに一生懸命だ。


イーロン・マスク 上 読了 〜ジョブズの現実歪曲フィールドとマスクの双極性障害アスペルガー症候群が新しいプロダクトの実現に寄与?〜

2024-04-18 16:51:16 | 
「イーロン・マスク」、これは話題の本だが、朝日新聞の書評でもどこかで触れていたと思う。図書館でも予約はいっぱい入っていたが、所蔵数が5冊くらいあったので結構早く順番が回ってきた。
ウォルター・アイザックソン (著), 井口 耕二 (翻訳)
世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』伝記作家だからこそ描けた傑作。
いま、世界で一番の注目を集め、議論の的である起業家イーロン・マスクの赤裸々な等身大ストーリー­。マスクはルールにとらわれないビジョナリーで、電気自動車、宇宙開発、AIの時代へ世界を導いた。そして、先日ツイッターを買収したばかりだ。
イーロン・マスクは、南アフリカにいた子ども時代、よくいじめられていた。よってたかってコンクリートの階段に押さえつけられ頭を蹴られ、顔が腫れ上がってしまったこともある。このときは1週間も入院した。
だがそれほどの傷も、父エロール・マスクから受けた心の傷に比べればたいしたことはない。エンジニアの父親は身勝手な空想に溺れる性悪で、まっとうとは言いがたい。
いまなおイーロンにとって頭痛の種だ。このときも、病院から戻ったイーロンを1時間も立たせ、大ばかだ、ろくでなしだとさんざんどやしつけたという。
まず、この本は上下2巻あるが、この上巻を読んでる途中に下巻を予約したので、下巻の順番が来るまでまだ数週間(所蔵5冊で12番)あるので、まず上巻を読んだところで投稿することとした。
この本の作者と訳者は、下にリンクを書いたけど、以前読んだ「スティーブ・ジョブズ」(下にリンクを書いた、上の写真でわかるように、この頃は本買っていたんですね。あるいは何回か読み返すつもりで買ったのかな?)と同じ人だ。この「スティーブ・ジョブズ」は以前読んだとき面白かったので、今回も460ページだけど1日50ページくらい楽しくスムーズに読めた。それぞれの章が5~6ページくらいで細かく分かれているので、読みやすかった。
スティーブジョブズを読み終えた。 本の腰巻きに孫さんの「…でも、これまた何故かワクワクして早く先が読みたくなる。…」というのが同感で、一気に読んだという感じだった。 1と2と2つに別れていて、まとめて感想を書こうと思ったけど、長くなりそうなので2回にわけて書くことにした。
まず、読んでみてジョブズという人は素晴らしい製品や会社を生み出した人だが、私としてはリスペクトできる人物ではないと思った。一緒に仕事はしたくない部類の人だ。生まれてすぐ養子に預けられたということが大きく作用していると思うが性格的にも問題があるようだ。
さてこの本の内容だが、上の「スティーブジョブズ」を読んだ際の感想にも書いたが、このような天才と言われる人は、決してリスペクトしたい人物ではない、一緒に仕事をしたくない人物だ。笑
でも、下のこの上巻の目次の一部を見てもすごいことをいろいろ実行しているし、それぞれの会社で倒産の危機を経験している。マスクの場合は複数の会社を同時期に経営していて、同時期に数社で危機を経験している。そしてそれを乗り越えている。双極性障害、アスペルガー症候群らしい、このような病気があるからこそ乗り切れていると言ってもいいかもしれない。スティーブ・ジョブズの本では「現実歪曲フィールド」という言葉が何回も出てきたが、マスクの場合は双極性障害、アスペルガー症候群という言葉がキーワードとなる。

下に目次の一部を紹介するが、ペイパルの参加やテスラ、スペースX /ロケット、上巻最後の51章スペーストラックまで、色々なプロダクトを世に出してきた。そして、下巻も52章から始まり95章まで、色々なプロダクトが出てくるのだろう。
目次
序章 火の女神
第1章 冒険者の系譜
第2章 マスク自身の心
第3章 父との暮らし
第4章 探究者
第5章 脱出速度
第6章 カナダ
第7章 クイーンズ大学
第8章 ペンシルバニア大学
第9章 西へ
第10章 Zip2
第11章 ジャスティン
第12章 Xドットコム
第13章 クーデター
第14章 火星 スペースX
第15章 ロケット開発に乗りだす
第16章 父と息子
第17章 回転を上げる
第18章 ロケット建造のマスク流ルール
第19章 マスク、ワシントンへ行く
第20章 創業者そろい踏み
藍21章 ロードスター
第22章 クワジェ
・・・・・・
第25章 ハンドルを握る
第26章 離婚
第27章 タルラ
・・・・・・
第30章 4回目の打ち上げ
第31章 テスラを救う
第32章 モデルS
第33章 民間による宇宙開発
第34章 ファルコン9、リフトオフ
第35章 タルラと離婚
・・・・・・
第37章 マスクとべゾフ
・・・・・・
第40章 人工知能
第41章 オートパイロットの導入
第42章 ソーラー
第43章 ザ・ボーリング
・・・・・・
第51章 サイバートラック
これらのプロダクトの多さは、ジョブズより多いと言えるだろう。
テスラを週2000台の生産能力を数ヶ月で週5000台達成まで実現するくだりもエキサイティングだ。みずから生産現場まで行って、問題を見つけ解決するなど現地現物主義を大事にするとことも私は共感持てる。
その他、AIに関して、いわゆるシンギュラリティについて「暴走してみずから目標や意図を持つようになりかねないシステムではなく、一人ひとりの意志を拡張するものにすればいいわけだ。このあとマスクはニューラリンクなる会社を立ち上げ、人の脳を直接コンピュータにつなぐチップの開発に乗り出すのだが、それもこう考えたからである」という記述は、なるほどそういう話だったのかと思った。また、自動運転における障害物検知のLiDARというセンシング技術も、私はそれより映像データ処理の方がいいと思っている点も彼と意見が一致した。さらに、41章オートパイロットの章で、アメリカのインターステートのあるカーブで白線が薄くなってオートパイロットが誤作動する下りもおもしろい。


マルクス解体 斉藤幸平著 読了 〜農業革命以前の古代文明は興味深い、見直すべきだ〜

2024-03-23 14:31:59 | 
この本は、いつも通り、朝日新聞の書評を見て図書館に予約したと思う。
 本書は派手に広告されているが、その内容は晩期マルクスの環境思想を発掘しようとする実直な研究書である。しかも、もとは英語で刊行された。<br>人文・社会科学の分野で、日本人が外国語で理論的著作を発表し、それが好評を得ることはめったにない。この快挙は、著者が普遍的な地平で思考してきたことを物語る。
 マルクスの『資本論』は未完に終わったが、その代わり晩年にかけて大量の研究ノートと草稿が遺(のこ)された。著者はこのノートの核心に、エコロジカルな経済学批判を認める。マルクスは自然科学に熱中し、特にリービッヒによる掠奪(りゃくだつ)農業批判に触発された。
掠奪的な資本主義は、自然と人間のあいだの「物質代謝」の循環に亀裂を入れ、土壌を荒廃させ、そこから来るトラブルを他に「転嫁」することで拡大する。彼はこの資本の飽くなき成長が、世界規模の裂け目を生じさせることを予想していた。  ゆえに、晩年のマルクスが前資本主義的な「最古」の協同生活を評価したのも不思議ではない。
自然の支配に駆り立てられた近代のプロメテウス主義、自然と社会の区別をあいまいにするB・ラトゥール流の現代の一元論、そのいずれも批判する著者は、ルカーチ流の「方法論的二元論」に立つ。そして、具体的な実践の手がかりを、古い社会にあった「協同的富」の回復が「ラディカルな潤沢さ」につながるというマルクスの考えに求める。それが「物質代謝の亀裂」を修復する道なのである。
内容に関しては、まず、私としては、以下のAmazonのどなたかの書評に近い感想だ。
まずは、「膨大な予備知識が必要だ」ということだ。
まず、この本は「大変な本」である。何が大変か、と言えば、まず、総てを読みこなすには、膨大な予備知識が必要だということだ。
ルカッチの「再検討」から、エンゲルス批判、ローザ、ハーヴィー、シジェク等々の批判的検討についていくのが大変だ。
「100分で名著」の番組を見たり、「人新世の資本論」読んで、マルクスや斎藤氏の主張に共感を覚えたばかりの方や、私のような「理系の人間」にとって、すべてを追いかけるのはとても難しい。 つまりは、斎藤氏がマルクス同様、先行研究を丁寧にしているということなのだが。
さらに、どのように難しいかを説明すると、下に引用したAmazonの他の方の評にあるように、下に出てくる人の名前や「物質代謝」、「一元論か二元論か」、「脱成長派」、「 加速主義 」、「環境社会主義 」、「プロメテウスの夢」などの言葉の意味を知っている必要があるということだ。私はこれら言葉の意味は想像はつくが、一応辞書で確認すると、哲学でよく使うような言葉のようで、簡単な説明を読んで、「ああ、そういう意味ね」と一部は確認しながら読まざるを得なかった。
yasuji
マルクスを参照すれば、名案が浮かぶことを期待して
原題は、「Marx in the Anthropocene: Towards the Idea of Degrowth Communism」である。Anthropocene(人新世)は、アメリカ合衆国の生態学者ユージン・F・ストーマーが1980年代に造った用語とされていることが多く、オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したオランダの大気化学者パウル・クルッツェンがそれを独自に再発見して普及したとされている(ウィキペディア 2023.10.26)。
人新世の研究は、環境問題や地質学ばかりでなく、生物学、人類史などに拡大している。
そのうねりの中にマルクスを登場させる意味はあるのだろうか。それぞれの科学はマルクスの時代より圧倒的に知識を蓄えている。マルクス研究者として、マルクスが資本主義の弊害の一つとして環境問題を扱ったことを知らしめるのは意味あることかもしれないが、それだけでは本書に価値はないだろう。
それともマルクスが嘗(かつ)て近代社会の未来に希望(共産主義社会)を提示したように、人新世の時代に新たな希望が提示できるのだろうか。
1.物質代謝  本書は資本の論理ではなく、物質代謝の論理から始まる。物質代謝は、絶えざる人間と自然の相互作用の循環である。従って、労働は人間と自然の物質代謝の媒介活動として定義される(p.33)。
ーーーーーーー略ーーーーーーー
2.一元論か二元論か  アクター・ネットワーク理論で有名なブルーノ・ラトゥールは、晩年にはエコロジストとして有名だったそうだ。なぜ彼はエコロジストになったのか、その答えを提供してくれるのが、福島直人氏の論文である。カトリック信者のラトゥールが書いた博士論文は、ドイツのプロテスタント神学者ブルマンであった(福島p.25)。
ーーーーーーー略ーーーーーーー
3.諸派  著者に限らず、「人新世」や「エコロジー」などの言葉を使って人類の危機を訴える学者は数えきれないほど存在する。そこで僭越ながら、脱成長派、加速主義、環境社会主義の3派に分けてみた。 ①脱成長派 ②加速主義 ③環境社会主義 ④プロメテウスの夢
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4.脱成長コミュニズム  著者の提言は、「脱成長コミュニズム(Degrowth Communism)」である。
つまり、経済成長なきポスト希少性社会という理念である(p.374)。ポスト希少性社会がコミュニズムということになるのだが、少し説明が必要であろう。
色々な言い訳が先になってしまったが、いろいろ予備知識がない中で不消化ではあるが、先日読んだ「万物の黎明」にもつながるが、古代文明というのは、狩猟採取民族で、定住していなかった、組織的な農耕はなく国家を形成する必要はまだなかったあるいは敢えて国家を作らなかったなどの考えがあったのでは?と述べられていることが古代民族はすごいなという感想を持つ。現代は資本主義で、皆、欲望のおもむくまま破滅に向かっているというのは、私も破滅に向かっているかはともかく、起きている現象として実感できる。私には、十分理解できる知識のない、難しい内容の本であったが、いつものように印象に残ったキーワードを挙げておく。
ー…………古代の考え方は、生産が人間の目的として現れ、富が生産の目的として現れている近代世界に対比すれば、はるかに高尚なものであるように思われるのである。
ーリービッヒは、農作物が遠方の大都市で販売されると水洗トイレを通じて、土壌養分は失われ、堆肥として元の土壌に還らないことを問題視した。
ー(土壌回復に使われるアンモニアの生産は)大量の二酸化炭素を排出する。こうして工業的農業は水だけでなく大量の化石燃料も消費するため、気象変動の推進力となっている。
ー「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」という資本家のスローガンは「大洪水よ、我が隣人に来れ!」となっている。
ーディストピアを恐れて科学技術の進歩を遅らせる代わりに、ポスト資本主義における人間解放に向けて、その進歩をさらに加速させることを主張する左派がいるのだ。
ー資本の生産力は労働者を従属させ支配するために生み出されるため、それを使って自由で平等な社会に移行することはできない。
ー資本主義の危機は「資本主義制度の消滅によって終結し、また、近代社会が集団的な所有及び生産の「原古的な」型のより高次な形態へと復帰することによって終結するであろう。
斉藤幸平氏の他の書籍を読んでから、この本を読んだ方が良かったかもしれない。しかし、大変示唆に富んだ本でした。


日本史を暴く 礒田道史著 読了 〜この本で概要を知り、詳しい内容はYouTubeや新たな本で読むべきかな?〜

2024-03-13 10:12:41 | 
この本は、有名だけど、やはり朝日新聞の書評がきっかけだと思った。大変人気のある本のようで図書館予約人数は100人くらいだったかな。
内容は、基本的に磯田氏が手に入れた古文書から、歴史の裏側的な話を以下のような目次で簡単に紹介している。
目次
第1章 戦国の怪物たち(大仏を焼いたのは松永久秀か;久秀が大悪人にされた理由 ほか)
第2章 江戸の殿様・庶民・猫(三代・徳川家光の「女装」;甲賀忍者も勤め人 ほか)
第3章 幕末維新の光と闇(西郷隆盛、闇も抱えた男;幕末、公家の花見行 ほか)
第4章 疫病と災害の歴史に学ぶ(ねやごとにも自粛要請;感染楽観で繰り返した悲劇 ほか)
好書好日で紹介されている、織田信長の遺骸の話、秀頼の実父は祈禱師、儒学者の貝原益軒がカブトムシを嫌っていたなど、私にとっては興味深い話がいろいろある。本書によれば江戸時代は、一部の一般庶民の日記まで古文書として残っているとのことだ。ちょっと、古文書を探してみたくなる。しかし、くずし字が読めなければいけないし、歴史のある程度の知識が必要だ。(私にはないな)

大河ドラマなどの歴史時代劇で描かれる時代と言えば、戦国時代か幕末維新と、最近は、おおよそ相場が決まっている。
 理由は歴史小説などの題材として盛んにとりあげられてきたため、登場人物になじみのある名前が多く、視聴者が入り込みやすいこと。もう一つは同じ理由から、コアな歴史ファンがすでについていることだ。
 本書は歴史番組などのコメンテーター・モデレーターとして、すっかりおなじみになった歴史学者、磯田道史(みちふみ)・国際日本文化研究センター教授が2017年から22年にかけて新聞に連載したコラムをまとめたもの。
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  1582年に起きた本能寺の変で討たれたまま行方不明となった戦国武将・織田信長の遺骸が、実は本能寺近くの阿弥陀寺の僧侶によって収容され、同寺に葬られていたという史料があるとの話は、その真偽は別として、どきっとさせられた。
   さらに「豊臣秀吉の子とされる秀頼の実父は祈禱師(きとうし)だった可能性が高い」とした服部英雄・九州大学名誉教授の説を踏まえながら、父親の名を史料で追いかけ、当時の公家の日記に出てくる、ある人物に注目するくだりには思わず引き込まれた。
   このほか、本草学者で儒学者の貝原益軒がカブトムシを嫌っていた話や、初代首相・伊藤博文と安芸の宮島をめぐるエピソードまで、全4章のうち2章を戦国と幕末維新に割きつつ、自らの専門の近世史や最近関心が高まっている感染症史などについても、幅広く目配りしている。
また、磯田氏は忍者について興味があり、他のことも詳しいが忍者に関しては以下のように特に詳しいようだ。肩書きも「国際日本文化研究センター教授」、「甲賀市ニンジャファインダーズ団長」とのことである。
【前編】「忍者を追う歴史学」磯田道史教授/シリーズ「日本研究のトビラをひらく」
YouTube上には礒田氏の解説動画がいろいろあるようで、この本で触れた内容が詳しく説明されている。時間のある方、興味のある方はYouTubeの方がいいかもしれない。
そうそう、江戸時代の感染症の話やスペイン風流行の話なども本書では触れている。YouTubeでも述べられているので参考までリンクを紹介しておく。
【磯田道史解説】恐怖の感染症で人口3割減とも 幕末のワクチン接種とは(2023年2月19日)

万物の黎明 読了 〜常識を覆す、興味深い本。〜

2024-02-28 15:46:37 | 
この本は、いろいろメディアで取り上げられているのだが、やはり朝日新聞の書評で興味を持ったのだろう。
「万物の黎明」 [著]デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ  数年に一度、人類史の全体像を提示する本が現れ、国際的なベストセラーとなることがある。
原書が2年前に英語で刊行された本書も、その一冊だ。
副題を見て『サピエンス全史』のような本を思い浮かべるかもしれないが、その印象は裏切られるだろう。人類学者と考古学者の手で書かれた本書は、このジャンルの前提に正面から挑戦する。
 その前提とは、人間社会が一定のパターンに沿って進化するということだ。典型的には、小規模で平等な狩猟採集社会が、定住農耕による生産力の向上を経て、階級格差を伴う大規模な国家へと発展する。
 本書によれば、こうした思考は西洋人の偏見にすぎない。近年の考古学は、農耕が始まる前に巨大な都市が築かれたことを示す遺跡など、従来の先史時代のイメージに反する事例を数多く発掘してきた。
また、人類学は、一般的には「未開」だと見なされる人々の暮らす社会が、実は極めて豊かな多様性を持つことを明らかにしてきた。
中身は、下に見開きページを撮った写真を紹介するが、2段、全約640ページというヴォリューム、かつ下の写真の左側にあるように、随所に脚注が小さな文字である。借りて手に取った途端、これは2週間では読了できないなと諦めていたが、毎日50~100ページというペースでなんとか読了できた。しかし、脚注は無視したし、随所に出てくる人物名や地名、遺跡、歴史的人物のなんたるかは追求しないことでやっと読了できた。本来は購入して、手元におき、じっくりと史実や説明を熟読して読むべきだろう。
さて内容だが、以下のAmazonのある方の書評が簡潔に集約したものだろう。古代についての現在の常識がくつがえる内容だ。
ゲームチェンジャー
私たちが頭までどっぷりと浸かっている西欧中心的な歴史観、社会観が、ガラガラと崩れ落ちる体験をした。
今2度目の精読をしている。一番の強みは考古学や文化史の事実の見直しに基づいていることだ。社会科学のゲームチェンジャーといえる。既存の学説に依存している権威者には是非論争を起こしてほしい。
内容が膨大なので、本書の内容を詳しく紹介したり、要約することは大変難しい。よって、いかにいくつか私がポストイットをつけた内容について紹介する。
すなわち、古代の人類は原始的な未開の民だという常識がいくつかの例でそうとは限らないことが述べられている。
古代は、戦闘にあけくれ平等主義とは遠い世界と考えられていたが、そうではないようだ。古代に対して、なぜヨーロッパ人は競争心がかくも強いのか、なぜヨーロッパ人は食べ物を分かち合わないのか?なぜヨーロッパ人は競争心がかくも強いのか?なぜヨーロッパ人は他人の命令に服従するのか?という形で色々な例示が示されている。
そのなかで、我々は現代社会の常識で古代の生活や社会様式を説明してしまいがちであるが、一つの例を挙げると、シェイクスピアの時代の事柄を恐竜に例えてしまったりするが、シェイクスピアの時代にはだれも恐竜の存在を知らなかったはずなので、あたかもそれが当時の人たちの考えと叙述してしまうのは危険だろう。
アメリカインディアンについても、西部劇で描かれ、そこから我々はある既成概念を持ってしまうが、下のポヴァティポイントの例をみても、もしかしたら、彼らは我々より進んだ社会形態を実現していたかもしれないのだ。
ポヴァティ・ポイントの記念碑的土塁群
ポヴァティ・ポイントの記念碑的土塁群は、ルイジアナ州ウェスト・キャロル・パリッシュにあるアメリカ先住民族の遺跡です。
2014年に世界遺産に登録されました。ポヴァティ・ポイントの名は、遺跡の近くにある19世紀のプランテーションか名付けられました。
ミシシッピ渓谷の中の小高く狭いところにあります。
ここは紀元前1500年から紀元前700年の間、狩猟採集民が居住や祭礼の場として数百年間使っていたと考えられています。
周囲は森林と湿地で、これらを利用して都市が造られたと考えられています。中心部は6つの同心八角形から成り、最も外側の直径は約1.3km。1つずつ土を盛った畝で出来ています。
農耕の発達がブレークスルーとなって世界は大きく変わったという考えが主流だが、いいかえると、世界は、コムギ、コメ、キビ、トウモロコシによって養われているのであって、これらのない現代生活を想像することは難しい世界となって、それによる制約に縛られる世界となっている。
日本でも弥生時代に農耕文化が成立して、進化した弥生時代の農耕民と進化前の縄文時代の狩猟採集民という考えが主流となっているが三内丸山遺跡の発見で、その考えの修正が必要ではないかとなっている。
三内丸山遺跡とは
 三内丸山遺跡では、平成4年(1992年)から始まった発掘調査で、縄文時代前期~中期(紀元前約3,900~2,200年 現在から約5,900~4,200年前)の大規模な集落跡が見つかりました。
たくさんの竪穴建物跡や掘立柱建物跡、盛土、大人や子供の墓などのほか、多量の土器や石器、貴重な木製品、骨角製品などが出土しました。
 青森県は遺跡の重要性から、平成6年(1994年)に遺跡の保存を決定しました。
平成7年(1995年)から遺跡の整備と公開を行い、平成9年(1997年)3月には史跡に指定され、さらに平成12年(2000年)11月には特別史跡に、平成15年(2003年)5月には出土品1958点が重要文化財に指定されました。
また、令和3年(2021年)7月には三内丸山遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されました。
 青森県では、縄文時代の「ムラ」を体験できる場所として、三内丸山遺跡の保存・整備・活用をこれからも進めていきます。
その他、現代選挙に金がかかるので政治には裏金が必要だという話題がメディアを賑わしているが、古代には真に民主的である役職の選出方法はくじ引きであると考えられていた時代もあったようだ。私も、公平な選挙あるいは金のかからない選挙のためには抽選も一つの選択肢になりうると思う。古代にこのような考えがあったというのは大変驚きであった。
その他、不消化だが気になったキーワードを挙げておく。
ー 三つの原理(暴力の統制、情報の統制、個人のカリスマ性)が社会的権力の三つの可能な基盤である
ー 南北アメリカのいくつかの地域では、競技スポーツが戦争の代理として機能していた。e sportsなどでゲーマーが職業となっているが、人間は本来戦うのが好きだ。戦争をなくすには、それをゲームに置き換えることができれば戦争で犠牲者が発生するのをなくすことができるのではと思う。
ー 「バンド」、「部族」、「首長性」、「国家」という進化の過程は?
ー 古代は農耕を離脱する動きが選択の自由としてあった。フレキシブルな社会であった。
ー 女性のリーダーは古代にもあった。新石器時代の社会における革新は、ある天才的な男性が孤高のヴィジョンを実現するというものではなく、主に女性たちによって、何世紀にもわたって蓄積されてきた知識の集合にもとづいており、そこには一見すると地味であるものの実際にはきわめて重要な発見が延々と繰り返されていた。例:酵母という微生物を加えることでパンを膨らませることを最初に考えたのはだれだったのだろう?それは女性であることはほぼ間違いない。
ー 社会が複雑化すれば国家が形成されるし、国家が形成されているところは社会が複雑であるという常識。
膨大な内容で、原書は英語特有の関係代名詞が使われているのか、単語の説明的な部分が多いので、非常に読みにくいが、じっくり読むべき本だと思う。現状の打破にむかうヒントがいろいろあると思う。

師匠はつらいよ 杉本昌隆著 読了 〜将棋の師匠や棋士の生活や悩みが新鮮〜

2024-02-15 15:19:08 | 
この本は、やはり下の朝日新聞を読んで予約したと思う。
現代の若者のことを、Z世代、と呼ぶことがある。
案外この言葉が世間で定着し、広く使われているのは、「Z世代の若者とどう接していいかわからない」という悩みが普遍的なものだからではないだろうか。
そんな悩みをもった大人たちに手渡したいのが、本書である。
本書はZ世代の筆頭である将棋棋士・藤井聡太さんを弟子に持った、通称「杉本師匠」の日常エッセイである。
私の感想は、以下のAmazonの書評を書かれた方と同様で、藤井聡太・八冠とのやりとりが微笑ましい。また、とても想像できない将棋の棋士・師匠の日常が語られているのが、興味深い。ほっこりする本です。
引用した方のコメントでも取り上げている以下の6つが私的には面白かったというか、印象に残りました。各エピソードが1〜2ページなので、細切れで読めて楽しめました。
★ 第23回 「 A I 」との付き合い方
★ 第43回 棋士とバレンタインデー
👑第54回 パソコンショップでの攻防
★ 第67回 家族サービス
★ 第76回 「人間将棋」の妙味
★ 第78回 「おやつ」のルール
〝観る将〟の父ともども、心楽しく、さくさく読めたエッセイ集。ほっこりとしたおかしみに、癒やされました。
『週刊文春』をよく読んでいる父から、「この連載、毎回楽しみにしてるんだ。
一冊にまとまったのを読んでみたいから、買ってくれないか」頼まれて購入した一冊。将棋好きの父がさくさくっと読み終えたみたいなので、「〝観る将〟の僕も読んでみたいんやけど、貸してもろても良いですか?」言うて、借りて読んでみました。
藤井聡太・八冠(2023年12月の現時点で。本書の初めでは二冠だったが、最後のほうでは〈棋王〉を獲得して六冠に)とのやり取りのなんとも言えないおかしみ、微笑(ほほえ)ましさを始め、師匠の日常のあれやこれやがのびのびと綴られていて、心が随分癒(い)やされました。なんというか、〝おやつ〟もろたみたいな、嬉(うれ)し懐(なつ)かしほっこりした心持ちになりましてん。
師匠の人柄を端々(はしばし)に感じる、温かみのあるユーモラスなエッセイの数々。ほんま、あちこちでくすり、にやり、させてもらいましたわ。
師匠が十代の頃から大好きだという星 新一のショートショート(第23回の文章に記載あり)。あの妙味に通じる、とぼけているようでハッとさせられるおかしみがあるようにも感じました。
本書に収められた 100のエッセイ + 先崎 学 九段との対談の中、以下に挙げる24のエッセイが良かったですね。(👑印の回の文章には、特に心惹かれました。)
★ 第4回 スギモト一族
★ 第9回 対局前夜症候群
👑第12回 縁台将棋愛好家たちの挽歌(ばんか)
👑特別編 先崎 学 × 杉本昌隆 「藤井聡太と羽生善治」
★ 第18回 棋士に向いている五輪競技?
👑第22回 二人のスーパースター
★ 第23回 「 A I 」との付き合い方
★ 第32回 最高の誕生日
★ 第43回 棋士とバレンタインデー
★ 第45回 将棋との出会い
👑第49回 一人暮らしのススメ
👑第54回 パソコンショップでの攻防
👑第57回 棋士の涙
★ 第66回 愛(いと)しき動物たち
★ 第67回 家族サービス
★ 第72回 「詰め将棋」の天才
★ 第75回 将棋を愛する人たち
★ 第76回 「人間将棋」の妙味
★ 第77回 「将棋は体力」
★ 第78回 「おやつ」のルール
👑第84回 最高のプレゼント
👑第91回 修羅(しゅら)の道
★ 第92回 ぎっくり腰はつらいよ
★ 第100回 連載百回の〝感想戦〟