梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第二十夜

2009年10月27日 | 芝居
お陰様をもちまして、<乱歩歌舞伎>第2弾『京乱噂鉤爪 ~人間豹の最期~』、千穐楽を迎えることができました。
たった1週間の稽古で、全くの新作歌舞伎の幕が開き、つつがなく興行を終えることができたということは、高麗屋(幸四郎)さんがおっしゃった通り、まさに<奇跡>です。稽古中、本番中、本当にいろいろなことがございましたが、無事勤めることができました。ご来場下さいました皆々様には、心より御礼申し上げます。

復活にしても新作にしても、お芝居を一から生み出してゆく作業は、本当に大変です。私の短い舞台経験のなかでも、例えば澤瀉屋(猿之助)さんの『鎌髭』とか『国姓爺』の通しとか、中村屋(勘三郎)さんと野田秀樹さんとのタッグによる『研辰』『鼠小僧』、あるいは成田屋(團十郎)さんの『宮本武蔵』、成駒屋(福助)さんの『新世紀累』、高麗屋(染五郎)さんの『敷島物語』などの演目に携わるなかで、演出者、主演者がどれだけのご苦労をなさりながら“歌舞伎”を作ってゆかれているかは拝見しておりましたけれども、今回はなおさらその感を強くいたしました。
<九代琴松>のお名前で演出にあたり、<松本幸四郎>として主演なさった高麗屋さんのご意向に、どれだけ沿う演技、仕事ができたかは甚だ心もとないのですが、貴重な勉強をさせて頂きました。

その懐の広さゆえ、はたして「歌舞伎とは?」という問いかけは、この後もますます複雑なものになるかと思います。
私自身も、その答えを探す道のりのさなか(というか始まったばかりというか)にいるわけですが、これからも、さまざまな新しい試みに参加させて頂くことになると思いますけれど、やはり大根(おおね)に古典歌舞伎があってこそでございますから、しっかりと日々の舞台を勤め、古き良きおダシをたっぷり吸収してまいりたいと思います。

とは申せ、今月頂いた3役 はどれも楽しゅうございました。「ええじゃないか」の唄と踊りには疲れましたけどね…。
千穐楽の4日前に、きはものや女房お勝役でいらした紀伊国屋(鐡之助)さんが体調不良で休演なさり、代役をご一門の伊助さんが急遽勤められました。もともとの自分の役も<又替わり>をせずに出ましたから、本当に大変だったと思います。改めて、お疲れさまでしたと申し上げたいです。

また、当月の「優秀賞」には、松吉実は鶴丸実次役の成駒屋(翫雀)さんと、女隠密綾乃役の高麗屋(高麗蔵)さんが受賞されましたが、「特別賞」として、花がたみ役の梅丸と、丁稚長吉役の松本錦成くんが選ばれました。
梅丸は<人形>の役で、セリフはございませんでしたが、『京人形』風の振り事があったり、長時間不動の姿勢でいたりと、マアあまり例がないお役でした。大変なこともあったかと思いますが、このような賞を頂戴し、一門の一人としても本当によかったです。来月はゆっくりしっかり学業に専念してクダサイ。

最後になりましたが、スピーディーな舞台進行を支えて下さった、舞台監督の切替良之さんはじめ、大道具さん小道具さん、特殊効果のアトリエカオスの皆様に、心より御礼を申し上げて、<乱歩歌舞伎>体験日記の筆をおきたいと思います。


(オマケ)師匠が演じた、陰陽師鏑木幻斎の<切り首>。大詰で人間豹恩田乱学が持ってましたね。
舞台稽古の日、真っ白だった原型に、不肖私が彩色しました。

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2 コメント

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お疲れ様でした (SwingingFujisan)
2009-10-29 19:55:27
新作の1カ月、お疲れ様でした。私は初日と千穐楽に拝見しました。
両方とも上から見たので「ええじゃないか」では梅之さんのお姿はわかりませんでしたが、他の2役はしっかり見せていただきました。梅之さんが演じられた貧しい庶民の姿などから、当時の京都の世情が窺え、遠くその世界に思いを馳せました。
梅丸クンの受賞、おめでとうございます。初日に拝見したときにすでにお見事!と感銘を受けたので、私も受賞は嬉しく存じます。
双眼鏡からじ~っと見て、よくできた首だと感心していたあの鏑木幻斎の首、梅之さんが彩色されたのですか!! 嬉しいオドロキです。

11月の「仮名手本」も楽しみにしております。
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お疲れ様でした~~~ (歌舞伎っこ)
2009-10-29 22:09:32
ゼロから作り上げていくことは、本当に大変な作業だと思います。想像できないほどのご苦労があったことでしょう。
梅之さんのブログを毎夜毎夜楽しみにしておりました。「人間豹」そのものに関するお話はもちろんのこと、その他歌舞伎に関するお話も大変面白く、勉強にもなりました。梅之さんのブログで予習して、国立劇場に足を運んだという10月でした。梅之さんの3つのお役、バッチリ観ましたよぉ。
11月の「忠臣蔵」も、とても楽しみです。
インフルエンザ予防等、体調管理にご留意下さい。
ご活躍をお祈りしております。
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