梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

『仙石屋敷』から

2009年03月15日 | 芝居
『仙石屋敷』「大書院の場」での、大石内蔵助の台詞に、
「…三日以来の大雪、ことさら昨夜は月の光冴え渡り(略)…まずは“雀色時”の薄明かりほどでございました」
というくだりがございまして、“雀色時”とは何時くらいなのかしらと思って調べてみますと、夕暮れの頃を指すようですね。
雀色というのが、雀の羽の色のような、やや灰色がかった茶色のことだそうで、たしかに黄昏どきの空はそんな色をしているようにも見えますね(夕空の色は複雑ですけど…)。

討ち入りは吉田忠左衛門が言うように、八つ過ぎ(深夜2時から3時の間)だったようですが、雪明かりと皓々と照る月に助けられ、夕方くらいの明るさはあったということわけですね。とはいえ江戸時代の夕まぐれですから、今とはかなり違う感覚でしょうが。

雀色時。いい言葉ですね。

                   ◯

最後の「元の大玄関」、浪士たちがそれぞれのお預かり先に赴く場面で、数日前から新たな音響効果が加わりました。
仙石邸から出てきた浪士たちを見物に来ている群衆の<声>です。
大石の台詞にもあるように、<世上百万の眼>が注目するであろう義士たちの快挙。噂を聞きつけ、屋敷のまわりにはすでに野次馬が集まっているというこころで、ワヤワヤとしたざわめきが、玄関先にも聞こえてくるのです。

この場の雰囲気、大いに変わりました。お確かめ頂ければと思います。