梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

雑感

2009年03月04日 | 芝居
『元禄忠臣蔵』3日目。御坊主 関久和のお役は、僅かずつですが、落ち着いてまいりました。
歌舞伎座の大舞台での25日間のチャンス。絶対無駄にはできません。お役の気持ちを大切に、少しでも進歩できるよう努力してまいります。

…歌舞伎座での、<新歌舞伎の通し狂言>といいますのは、私にとりましては初体験。国立劇場での公演は、どんなに長くても4時間くらいですが、こちらでは10時間近い長さ。丸一日をかけての上演は、普段の時代物の通し狂言よりもある意味“濃厚”な面もあり、気分的にはなかなかこたえます。
場割り、役数の多さ、現代語に近い台詞の応酬、見得がないツケもない、舞踊場面がない、三味線が聞こえてこない、女形の出番が少ない、柝は刻まれないし定式幕すら使われない…!
でも、これも<歌舞伎>なのですね。2代目の高島屋(左團次)さんを中心として、『大石最後の一日』の昭和9(1934)年の初演以来、70余年の歳月をかけて、歌舞伎俳優の手で練り上げられてきた作品。台詞まわしにしても要所要所の演出にしても、やっぱり歌舞伎の芝居なんだなァ…。
“新”歌舞伎というカテゴリなのかもしれませんが、だんだんと古典となりつつあるのかもしれませんね。

古典オンパレードの1、2月公演から引き続いての仲間からは、「同じ歌舞伎座という感じがしない」なんて声も聞かれますが、それだけ歌舞伎の懐が深いのでしょうし、どちらも興行にかけることができる“歌舞伎座”という劇場の懐も、とっても深いのではないでしょうか。