梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

新しいお客様へ

2006年07月05日 | 芝居
先日お話ししました、芝居に先立つ『歌舞伎のみかた』一幕。なかなか好評のようで、学生さん方も楽しそうにご覧下さっております。今回、舞台にスクリーンを降ろして、あらかじめ撮影された映像をお見せしているのですが、なんと私もちゃっかり一部に映っております。『歌舞伎のみかた』の舞台稽古のとき、私は『毛谷村』での自分のお役の拵え中だったのですが、どこかで聞いたような声が楽屋モニターから流れてくるので、(?)と思ってテレビを見たら、スクリーンの中に私が! ちょっとビックリ、それから急激に恥ずかしくなりました。どんなお芝居のどんな場面かは、ご覧頂くまでのお楽しみといたしましょう。

さて<歌舞伎鑑賞教室>に出演するたびに思うのですが、日によって客席の反応がガラリと変わるのには、演じる立場の者としては大変おどろかされます。拍手もなければ笑いも驚きの声もあがらない「おとなしい」日もあれば、幕が開けば口笛まじりの歓声があがり、トンボを返れば「おお~」と嘆声、見せ場ではさかんな拍手、の「賑やかな」日。この二つを両極として、実にさまざまな反応の仕方が、舞台にいると感じられます。
まあお客様に受けようが受けまいが、常と変わらぬ演技をするのが我々ですが、熱い反応が伝わってくると、やはり「よしっ!」と気合いが入ってきます。逆に、うっかり視界の中につまらなそうにしている顔が入ってきてしまうと……。
ある大先輩から伺ったのですが「客席の背もたれに寄っかかって観ている人を、前へ前へと乗り出させるくらいの<伝える>演技をしなくてはだめなんだ」という言葉があるそうです。もちろん時と場合、己の分をわきまえることが一番大切なのですが、今回のような<鑑賞教室>では、歌舞伎初心者ばかりが集まるわけですから、こういうときこそこの言葉が生きてくるのかもしれませんね。とはいえまだまだ私の技倆では…。

終演後、ゾロゾロと帰ってゆく学生さん達を見ておりますと、(歌舞伎、好きになってくれたかな…?)と、ちょっと気になったりしてしまいます。