「自分を信じろ」？

　今日、ワシのかかわるある団体の機関誌を読んでたら、「心に残る一言」というコラムがあった。そこに書かれていたのは、ある受験生が講師に言われた「自分を信じろ」という言葉だった。彼はきっと努力もしたし、「自分は頭だって悪くない」と思っていたのだろう。そうなれば後は度胸ということで、「自分を信じろ」という一言は効果的だったのかもしれない。そして結果は希望通りだったので、「自分を信じろ」の一言が、良い意味で心に残ったのかも知れない。
　しかし、もしこれが、あまり努力もしていなくて、勉強も得意でない受験生に「自分を信じろ」と言ったらどうなるか。きっと結果は惨憺たるものになるだろう。そして「自分を信じて」受験に臨んだ本人は、講師が行った「自分を信じろ」という言葉をどう思うか？または信じた自分をどう思うか？
　「自分を信じろ」という言葉は力強い。しかし相手によっては安易に使ってはいけない言葉のようにも思う。また「自分の思い」ばかりを優先したわがままな言葉のようにも思える。
　自分は努力した。しかし結果はどうなるかわからない。でもチャレンジした結果はどうであれ、それを素直に受け止めれば、努力したこと自体が果実であろうし、結果もその後の自分の指針となるはずだ。

　ワシはクライミングで頑張っている人に声をかけることが多い。でも失敗する可能性の高い人には「自分を信じろ」と言う言葉はかけないのだ。だって「自分を信じ」て失敗したら信じたものが失われちゃうもの。そういう時には「当たって砕けろ！」という。