狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

日本の民意 岩国の民意

2006-03-13 10:46:25 | 普天間移設
昨日(12日)の「報道2001」に「国家の品格」の著者御茶ノ水大教授・藤原正彦が出演した。

数学者である教授は皇室典範の話題で世論について歯切れ良く斬り捨てた。

(皇室に関わるような伝統的な事柄については)

「世論に従う必要は無い」。

「世論はその時々で変わるもの、伝統はその時々で変わるべきものではない」。

流石は数学者。 論理が明快だ。

「世論」とか「民意」と聞くと政治家やテレビコメンテーターは急に態度が弱くなる。

まるで黄門様の印籠の前にひれ伏す悪代官のように。

「世論」や「民意」を批判したら政治家は「唯の人」になってしまうし、テレビ局は視聴率の低下で打撃を受ける。

彼等は論敵を攻撃する時「民意」を錦の御旗として掲げる。

「国民は貴方が思うほど馬鹿ではない」。

この常套句一言で相手は狼狽し言葉に詰まる。

「世論」や「民意」は日本伝統の皇室問題には馴染まないとテレビで断じた藤原教授の論理には目からウロコの感がした。


          ◇         ◇          ◇

「ゴミ処理場は必要だが、わが町に建設するのは反対」。

古くて新しい問題である。

人間は古代ギリシャの時代から「民意」を求めて試行錯誤を繰り返してきた。

「民意」にこだわれば衆愚政治に陥り、「民意」を無視すれば独裁政治となる。

小泉首相は出来るものは「官から民へ」移して「小さな政府」を目指すという。

いくら官から民へといっても、如何しても譲れないものに外交と安全保障がある。

昨日、岩国市は住民投票で、米空母艦載機移駐計画の賛否を問う住民投票で「民意」問うた。

結果は移駐反対票が賛成票を大きく上回った。

新たな基地負担を避けたいという感情が住民の間に強いことはこれ自体「民意」だろう。

今朝の中央5紙でこの問題を社説で取り上げたのは読売新聞一紙だけ。

その中で勇敢にも「民意」に挑戦した。

≪岩国市の条例は、「市の権限に属さない事項」は住民投票の対象外と定めている。

住民からも、「移駐計画は国の専管事項で、住民投票条例にはそぐわない」との声が上がっていた。

・・・いたずらに政府と対立し、混乱を招くことがあってはなるまい。≫

当然の如く朝日新聞は署名入りで「初の民意、国に重圧 」と民意至上の解説記事を掲載している。

同じ問題を抱える沖縄の地元二紙が岩国市の民意を見守っていた。

沖縄タイムス社説は未確認だが、琉球新報社説も(民意が)「ノーと突きつけた」と、得意の論調で「民意」の勝利を高らかに謳い上げている。

しかし住民投票で「民意」を問うならば「外交・安全保障問題を住民投票に委ねる」、それ自体の賛否を住民投票にかけるべきであろう。

それにしても「民意」にうろたえて「やれ産婦人科医だ、今度は基地移設反対」と防衛庁内で揺れ動く島袋名護市長には同情させられる。(琉球新報コラムand3月7日「沖縄のローマ市長)

いや、民主主義の根幹に触れる問題で一番悩んでいるのは名護市長なのかもしれない。

 
          ◇         ◇         ◇


◆3月13日付・読売社説(1)
 [岩国住民投票]「それでも在日米軍再編は必要だ」

 山口県岩国市の住民投票で、在日米軍再編に伴う米空母艦載機移駐計画に「反対」とする票が多数を占めた。

 投票率は59%で、移駐反対票が賛成票を大きく上回った。新たな基地負担を避けたいという感情が住民の間に強いことを示すものだろう。

 投票結果には、法的拘束力はない。だが、米軍再編を円滑に進めるため、政府として、地元の理解を得るよう最善の努力を尽くすのは当然だ。

 日米両政府が合意した計画では、神奈川県・米海軍厚木基地の空母艦載機57機と米兵1600人を米海兵隊岩国基地に移駐する。その代わりに、岩国基地の海上自衛隊機17機と隊員700人を海自の厚木基地へ移す。

 在日米軍再編は、北朝鮮の核開発、中国の軍事大国化という安全保障環境の変化や、国際テロなどの新たな脅威に対処するのが目的だ。日米同盟を強化し、日本の安全保障を、より強固なものとする上で、極めて重要な課題だ。

 住民投票自体には、様々な問題が指摘されていた。

 岩国市の住民投票条例では、投票率が50%に満たない場合、住民投票は不成立となる。そのため、移駐反対派は「反対」の投票を呼び掛け、“移駐容認派”は「棄権」するよう訴えていた。投票が成立すれば、圧倒的な反対多数の結果になることは当初から予測されていた。

 岩国市の井原勝介市長は、地元の意思を国に示す必要がある、として自ら住民投票を発議した。

 しかし、岩国市の条例は、「市の権限に属さない事項」は住民投票の対象外と定めている。住民からも、「移駐計画は国の専管事項で、住民投票条例にはそぐわない」との声が上がっていた。

 岩国市は20日に周辺7町村と合併し、4月には、新・岩国市の市長選が行われる。住民には、住民投票自体が市長選への選挙運動だ、という指摘もあった。移駐に理解を示す周辺町村もある。合併直前に岩国市だけが住民投票を実施したことに疑問の声も出ていた。

 こうした事情を考慮すれば、今後、岩国市側も、いたずらに政府と対立し、混乱を招くことがあってはなるまい。

 政府と地元自治体は、住民の利益に十分配慮しつつ、しっかりと国益を守るよう、誠実に協議することが大事だ。

 沖縄の米海兵隊普天間飛行場移設問題など、地元との調整でなお難題は少なくない。日本側の事情で再編計画が遅れては、日米の信頼関係が損なわれる。政府は、月内を目標とする日米最終合意に向け、全力を挙げなければならない。

(2006年3月13日1時46分 読売新聞)


朝日新聞 解説記事 (2006年3月13日)

◆米軍受け入れ、反対87% 岩国住民投票 投票率58%

 厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機の岩国基地への移転計画の賛否を問う山口県岩国市の住民投票が12日に実施された。投票率は58・68%で即日開票され、反対が87%を占めて有権者数の半数を超えた。投票結果に法的拘束力はないが、井原勝介市長は「重く受け止め、移転案の撤回を求めたい」と語った。近く、住民投票の結果を直接政府に伝える。
(略)

◆(解説)初の民意、国に重圧

 米政府と昨年10月に合意した在日米軍再編計画の詳細を詰め、地元同意を得たうえで3月末に日米両政府で「最終報告」をまとめる――。こんなシナリオを描く日本政府にとって、山口県岩国市の住民投票での「反対多数」は厳しい結果となった。全国各地で受け入れの是非が問題になっている米軍再編で初めて直接示された民意は重い。
(略)
 今後の焦点は、沖縄の普天間移設問題で、政府が地元の合意を取り付けることができるかどうかだ。

 移設先の名護市との調整は難航。先週、稲嶺恵一沖縄県知事や島袋吉和同市長が額賀防衛庁長官らと会談し、調整の兆しが見え始めたばかりだ。

 政府には「岩国でこういう結果になったうえ、名護でも地元とこじれると神奈川や東京だって、おいそれと受け入れを表明するわけにはいかない」(政府関係者)との声がある。普天間で失敗すれば、「反対の連鎖」は全国に広がりかねない。政府の普天間での取り組みは、米軍再編全体を左右する「試金石」となる。

 米側との協議も難航している。期限を設定して合意を急ぐ手法に米側が疑問を呈しているとの見方も政府内にある。強引に進めるより、期限を延ばしてでも地元調整を尽くす姿勢が政府には求められている。(津川章久)


◆琉球新報 社説 (3/13 9:53)

岩国住民投票・国内移転の無理が分かった

 米海兵隊岩国基地の地元・山口県岩国市で12日、米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機受け入れの是非を問う住民投票が行われ、反対が多数を占めた。住民の生命と暮らしを脅かしかねない日米合意に、過半数の意思として「ノー」を突き付けた形だ。
 「米軍再編案は国が決めることとあきらめないでほしい」と訴えてきた井原勝介岩国市長は、投票結果を受け、移転計画の撤回を求めていく考えをあらためて表明した。政府は、住民の選択と市長の方針を重く受け止め、計画を白紙に戻すべきだ。
 岩国市民の選択は、沖縄や神奈川など米軍基地を抱える自治体の動向にも影響を及ぼすだろう。これらの自治体に提起中の移転計画についても、政府は「民意尊重」という政治の原点に立ち返り、見直してもらいたい。(中略)
 再編協議で日本側は当初、沖縄を柱に「負担軽減」を主張していたはずだ。それがいつの間にか、米側の狙いである「東アジアでの抑止力維持」に押され、パズルのような配置換えの結果、基地を抱える地元にツケが回された。
 今回の岩国の選択は、基地機能の国内移転には無理があることを知らしめた、という点でも意味がある。負担軽減を考えるなら、もはや移転先は海外しかない。計画を根本的に練り直す姿勢が日米両政府に求められている。



◆ 琉球新報 金口木舌 (3/13 9:45)

 県立北部病院の産婦人科再開のため、自衛隊医官の派遣を要請した島袋吉和名護市長らに対し、額賀福志郎防衛庁長官は「厳しい」と難色を示した
 ▼要請に同席した小池百合子沖縄担当相は、1月の名護市長選の島袋氏支援の集会で「防衛医官派遣の快諾を得た」と打ち上げ、同病院産婦人科の4月再開に意欲満々だった
 ▼その際、小池沖縄相は「新生児の死亡率は北部地区で2・8%、南部は0・7%。北部は南部の4倍も高い」「北部の産婦人科・小児科の再開・充実が必要」と力説していた
 ▼この間、政府は小泉純一郎首相が1月の施政方針演説で、米軍再編について「抑止力維持と負担軽減」を強調するなど、事あるごとに在沖米軍基地の重要性を訴え「地元の理解」を求めてきた
 ▼「安全保障は国益」というのが政府の考え方だ。普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸移設のため、振興策も絡め、あの手この手で地元説得を続ける。一方で担当相が力説した「北部の産婦人科・小児科の再開・充実」は、政府の積極的な動きが見えない
 ▼国民の生命こそ、国益ではないのか。北部の住民にとって産婦人科はライフラインそのものだ。政府は米軍の抑止力維持の前に、国民の生命という「国益」を大事にしてほしい。





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