東京・大手町の夜である。
私は勝手に「大手町摩天楼」などと呼んでいるが
オフィス街の夜景が懐かしい。
久しぶりの大手町である。
以前はテレビの番組収録で毎週のように通っていたが
最近はトンどご無沙汰だった。
どのくらいご無沙汰だったかと言うと・・・
うーん、思い出せない。
どこかに紛れ込んでいた名刺を慌てて取り出す始末だった。
日本経済新聞社のビルの中に
経済番組専門のさほど大きくもないスタジオがあって
そこでの収録だった。
収録そのものは無事に終わったのだが
用意して来た２０枚ほどの名刺がすったり底をついてしまった。
新番組のスタートとあって
局の営業担当やスポンサーの連中がゾロゾロと詰めかけて
名刺が足らないほどだった。
めったに客がなくてそろそろ店仕舞いも考えていた古ぼけた八百屋が
突然の活況を呈して店主大いに戸惑うの図であった。
まさにこんなに来るとはなあ・・・
収録後は関係者のお誘いを丁重に断って
途中の安居酒屋で例によって一人酒盛りと相成った。
この店も久しぶりである。
揚げだし豆腐と米なすの田楽で冷たいビールをやりながら
ああ、名刺を頼まなきゃなあ・・・
なぜか大きなため息をついてしまうのだった。
今日は「文化の日」である。
久しぶりに文化的な日を過ごしたいと思いつつ
何ををしたらいいのかわからない。
ととりあえず名刺か・・・