平成28年8月3日(水)
障がい者の自立が叫ばれて久しい。しかし、自らが職に就き、経済的な自立を達成することは決して容易なものではありません。
自立するためには社会が受け入れる基本的な能力を、社会に出る前に身に付けることが大切です。このことは、健常者にとっても同じことが言えます。
一言で障がいといっても、人によって様々に異なることから、それぞれの状況に応じた支援が必要になってきます。
今日視察させていただいた、静岡県立あしたか職業訓練校は、全国に19校ある「障がい者職業能力開発校」の一つで、沼津市の西部地区に設置されています。
設置目的は、職業人として自立を目指す身体または知的に障害のある方を対象とした、各人の能力と適性に応じて職業的基礎知識と技能を習得するための職業訓練を目的として設置された、定員が50名、訓練期間1年、原則入寮制の職業訓練施設です。
昭和55年に設置され、これまでに多くの卒業生を輩出し、障がいを持つ人の就職と自立支援に大きな役割を果たしてきました。
設立当初に開設された科目も、時代のニーズに合わせて変化し、現在では、コンピュータ科と生産・サービス科(機械操作コースと加工組み立てコース、流通・環境コースに分かれる)が設置されています。
(あしたか職業訓練校の正面入り口)
施設は3階建てで、1階が訓練施設、2階と3階は男子寮と女子寮となっています。
(2階の男子寮のベランダから)
(男子寮の部屋は4人部屋)
約2時間半の視察の内、1時間を施設説明と質疑応答に、残りの1時間半は施設内を見て回りました。
一般的に、障がいを持つ人が特別支援学校高等部を卒業した後は、一般就労が37.4%、進学が2%、あしたか職業訓練校に1%、障害福祉施設等に57.6%、在宅が3%未満であり、見ての通り職業訓練校には、ごくわずかしか入ってこない厳しい現状があります。
しかし、社会に出る前に職業訓練校で1年間学ぶと、大きなメリットがあるにもかかわらず、特別支援学校も保護者もそのメリットをほとんど知らないといいます。
メリットとは、企業への就職率がほぼ100%であること。経済的支援では、授業料は無料であり、受講中は訓練手当(月約10万円)が支給される。寮を完備しており、共同生活を通じて、社会性や協調性を身に付けることができ、帰省も年8回程度可能としています。
授業料は無料、手当が得られ、基礎的な能力を身に付け、それに応じて就職率が高ければ、1年間遅れて社会に出ても何のハンディはなく、むしろ安定が得られる方がいいに決まっています。健常者でも就職に有利な、簿記・パソコン操作・英会話などの資格を取得する人は少なくなく、それと同じことが言えます。
私は視察の前にいくつかの質問を投げかけてありましたが、その回答については、きめ細やかなデータを添えた資料を提供していただきました。
質問内容は、「卒業後の進路先」、「障がいの内容によってどのような職業分野に就いたのか」、「就職を進めるために、企業から本校への要望は」、「就労支援についての課題」、「県議会への要望」などで、その回答内容は、今後の議員活動に活かさせていただきます。
(説明していただいた校長先生達)
(生徒数が減ってきていることは懸念材料)
施設内の視察では、訓練中の各教室や寮などを見せていただき、真剣に取り組む学生達の姿を目の当たりにしました。特に、アビリンピック(障がい者技能競技大会)の県大会が終わり、中には優秀な成績を残した学生もいて、彼らとの意見交換では、将来に期待が持てる感触を受けたことが何よりの成果だったと思います。
特に、全国大会に出場する学生の、最後の仕上げに向けた意気込みには、感心させられました。
(機械操作コースで使用する旋盤)
(やすりを使った実習作品。右端の真鍮の円柱を手で削って、最後は左端の真球に)
(木工作品。このチームから全国大会出場の選手がでた)
(PC実習)
(アビリンピックに向け、縫製実習の作品が並ぶ)
(スーパーのバックヤードでの商品準備実習室。本物の商品が陳列されている)
(各コースを紹介するパネル)
きめ細やかな支援体制、特に訓練生に愛情を持って接する先生達には頭が下がる思いです。
(最終目標は、技能を身に付け就職すること。就職試験対策も行われている
施設がかなり老朽化しているのは気に掛かるところですが、就職率など全国でもトップレベルに近い成果を出していることをふまえ、職業訓練施設の将来像がどのようになっていくのか、これからも注視していきます。
(寮内の食堂。駿河湾を望む憩いの場でもある)
(先生達が手作りで整備した中庭。寮生活には運動スペースも大切)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます