~~「やられたら、やり返せ!やっつけるまで帰ってくるな!」~~
~~私は、いつも親にこう言われて、強く育てられました。~~
テレビ番組などで、子供のたくましい育て方として、こういった親の言葉が紹介されることがあります。私は、こうしたやり方を否定するわけではありません。実際、いじめっ子になめられると後々まで引きずるし、どこかでガツンとやってやることは重要なことだとは思います。
けれども「やられたら、やり返す」、「目には目を、歯には歯を」的な発想から、そろそろ抜け出していかないといけない時代に入ってきているのではないかとも思います。兎角、今の時代は競争社会で、子供から大人までの誰もが先を争って生きていますが、「力をもって、力を制す」といった考え方や価値観には限界がきているし、このままでは人間も世界もひどく疲弊し、いずれ破綻をきたすような気がしてなりません。
たとえば、子供でいえば学校の成績。社会人でいえば年収やキャリア。企業でいえば業界シェア。国家でいえば軍事力や経済力。
みんなが先を争えば争うほど、それがエネルギーとなって、世の中が便利になったり、技術が上がったりするのも事実ですが、一方で戦争やら環境破壊やらで、目に届かないところで多くの人々が苦しめられたり、自分たちが住む地球をダメにしてしまうような事態が引き起こされつつあるのも、紛れもない事実ではないかと思うのです。
「やられても、グッと我慢しろ。お前が正しければ、いつか相手がその間違いに気付くはずだ!」
私は明示的に子供たちに対して、こんなことを言っているわけではありませんが、これからの世界のあり方として、私はこれからの子供たちには、こう言ってあげたいと思います。
先日、ある子供向けのプレイランドでの出来事。
プレイランドで息子を遊ばせて、私はボーッとベンチに座っていましたが、プレイランド内で遊んでいた息子が、ふとやって来て、私の横に座り込みました。
「もう遊ぶのを止めたのかな?」と思っていると、息子を追ってくるように、少し大きめの男の子がやって来て、息子に対して「パズル、一緒にやろうぜ!」と言ってきました。
しかし息子は、悔しさを押し殺したような表情で「やらない」と言いました。それからしばらくの間、その大きめの男の子は、息子に対してパズルの勧誘を続けていたのですが、息子があまりに頑なに断るので、結局、その子は諦めて、私たちのもとを去って行きました。
私はどうにも息子の様子がおかしいと思い、「パズル、やらないのか?」と聞いてみると、今度は悔しさをこらえきれなくなったようで、息子は泣き出して「あの子は、僕が作ったパズルを壊すんだ」と訴えました。
-なるほど、そういうことか-
私は息子を抱きかかえ、頭を撫でてやりながら「ま、時間もあんまりないし、せっかく来たんだから、何か他のモノで遊んで行こう」と言ってやりました。すると息子は無言のままうなずいて、またプレイランドの奥の方に向かっていきました。
しばらくすると、プレイランドの中央あたりで、その大きめの男の子と息子が一緒にいました。その大きめの男の子は、息子に「ごめんね」と謝り、息子は別に気にかけないといった様子で、二人は一緒に仲良く遊び始めました。
どうも、その大きめの男の子は、私が息子を抱きかかえて、慰めていた様子もみていたらしく、その後、私のところにも頻繁にやって来て、いろいろと話しかけてきました。
-この子なりに、悪いことをしたと思っているんだろうな-
結局、その日は閉館まで、その大きめの男の子と私を含めて、何やら楽しい時間を過ごすことができました。大きめの男の子は、その後、息子と相撲などもしましたが、今度は、わざと負けてあげたりというお兄ちゃんらしい優しさまでみせてくれました。
「パズルを壊されたから、壊し返す」のではなく、パズルを壊された悔しさをグッとこらえるという息子の心の強さが、その大きめの男の子の心を動かしたのであり、その日の楽しい時間は、息子が私たちにくれたプレゼントだと思いました。
「やられたら、やり返す」ではなく、「やられても、グッと我慢する」という心の強さ。それが真の強さであり、これからの時代、私たちに求められている強さであると思えてなりません。
一方で、そうした心の強さを持つことはものすごく大変で、ときに子供にとってとても残酷なことでもあります。「情けない!」と切り捨てるのではなく、そうした心の強さをもっている子供に対しては、大いに褒めてやり、自信を持たせてやる。ときには、泣いたりするだろうけれど、元気づけて送り出す。子供の強さを育てるために、「やり返せ!」とは、ちょっと違う親の優しさや愛情があってもいいと思うのです。
※「抜かせてはならぬ最強の剣」参照
子供ってすごいですね。どうやって成長しているんでしょうかねー?(笑)
そうですね。実は、こういう強さを息子に教え込むのは、少々残酷なことだとも思っています。息子は他の子供にぶたれても、ぶち返すことをしません。この間は、自分をぶつ他の子供に対して、叩かれながら「大好きよぉ」と抱きついていました。ま、こうなると、ほとんどケンカになりません。
その場では、なかなか言えないので、そういう時はきまって、あとから息子にコッソリ言ってやるのです。
「お前、強かったな。カッコよかったぞ」って。