常識について思うこと

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教育は共育なり

2008年01月18日 | 教育

昨日、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会が、次期学習指導要領の改定方針をまとめたというニュースがありました。以下、同審議会によってまとめられた「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」答申からの抜粋を含めて、私が思ったことを簡単に整理したいと思います(答申は151ページから成り立っており、分量の問題もあるため、その中身について細かく取り上げることができない点は、ご容赦いただきたいと思います)。

まず総論として、書かれている内容は大変素晴らしいと思います。また、現在の閉塞感ある社会状況のなかで、教育という観点から、何とかしてこれを打開していこうという試みを続けているということ自体、評価されるべきことでしょう。具体的な方策や実質的な効果が望めるかといった議論はさておき、とにかく次世代のためにできることとして、教育を何とかしようという問題意識から、大人としての責任を果たそうとすることは、非常に大切なことだと思います。

続いて内容についてですが、この答申は「生きる力」を育むことを基本理念においています。答申によると、その理念と「生きる力」の関係については、以下のとおり述べられています。

「変化の激しい社会を担う子どもたちに必要な力は、基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」であるとの理念に立脚している。」

このなかで私は、とくに「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え」という部分が重要であろうと考えます。また別のページでは、以下のようにも記述されています。

「基礎的・基本的な知識・技能の習得やそれらを活用して課題を見いだし、解決するための思考力・判断力・表現力等が必要」

つまり単純明快。教育の要は、「自ら課題を見出し、それを解決していく力を伸ばすこと」にあるわけです。

それと、もうひとつ、けっして見逃すことができない重要なポイントがあります。以下も、答申からの抜粋です。

「しかも、知識・技能は、陳腐化しないよう常に更新する必要がある。生涯にわたって学ぶことが求められており、学校教育はそのための重要な基盤である。」

当たり前のことですが、学習は生涯にわたって必要であり、学校はその基盤に過ぎないということです。つまり、学校教育が終わったとしても、生きている限り大人も学び続けなければいけないということです。さらに別の場所では、次のような表現が使われています。

「社会の構造的な変化の中で大人自身が変化に対応する能力を求められている。そのことを前提に・・・(以下略)」

私がこの答申を素晴らしいと思ったのは、子供にだけ一方的に「教育のなんたるか」を押し付けるのではなく、これをとりまとめた大人自身が、「生きる力」を育んでいくことを宣言しているところです。そして、もう少し突っ込んで言うならば、子供に対する教育の現場で、大人のそうした姿勢をきちんと示していくことが肝要であると思います。

「大人も学んでいる。子供も学べ。」
「大人も「生きる力」を育てている。子供も「生きる力」を育てよ。」

このことは、大変勇気がいることです。大人にも至らない点があると素直に認めることは、なかなか受け入れ難いことかもしれません。しかし、それはとても大切なことです。

今、社会を動かしている大人にとっての課題とは何でしょう。今の大人は、「生きる力」の根幹である「自ら課題を見つけ、それを解決する力」を持ち合わせているでしょうか。

目前に迫りつつある人類にとっての最大の課題、「いかに地球に住み続けるか」という問題をきちんと見つめ、それについての解決策を見出し、実行し、実現できていない限り、大人はいつまでたっても「至らない」存在です。その点、大人は謙虚にならなければいけません(至らない存在であることを認めて謙虚になることは、卑屈になるのとは大いに違うので、その点は注意が必要です)。

もう少し具体的に、例えば科学の教育の現場において、科学で分かっていることを教えることだけが、教育ではないという点は重要です。教育者は科学の教育現場で、今の科学をもってしても、いかに分かっていないことが多いかを、子供たちに伝えていくことも立派な教育のかたちであることを認識しなければなりません(「万能でない科学」、「アイディアの重要性」等参照)。いかに科学が至らないかを伝える教育者は、自ずと自らを「至らない」存在であることを認め、謙虚になることができるし、また子供からしてみれば、「科学」の未知の分野を発掘・開拓していこうという意欲を掻き立てることになります。

教育という観点から、子供はもちろん、大人にもしっかりと頑張ってもらいましょう。そしてまた、共に頑張っていきましょう。

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