あるところに、不思議な神社があった。なんでも、お賽銭箱に小銭を入れると、後々十倍の金額で返ってくるらしい。
私は今、借金まみれで困っているので、その神社を訪れ、なけなしの金を小銭に変えた物を、全部お賽銭箱の中にぶち込んだ。さあ、今度こそ頼むよ。だって、これで四十回目なんだから。何度小銭を入れても借金が増えていくばかりで、こっちは困ってるんだ!
ちゃっちゃと参拝を終わらせ、古ぼけて苔まみれの鳥居を潜り抜けると、何処からか現れたキツネがこちらの方を一瞬見上げると、猛スピードで去っていった。その時、不穏な声が聞こえた。
「毎度あり!ククク、明日が楽しみでやんすね。」
ビックリして、声の主がどこにいるのかキョロキョロと見渡しても、ここには私一人しかいなかった。そして、何となく明日起ることに察しがつき、急いで鳥居の向こうへ戻ろうとすると、さっきまであったはずの神社は、綺麗さっぱり消えていた。