思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2014年6月 ③ 女性作家の作品たち

2020-12-15 16:57:28 | 日記
<読書メモ 2014年6月 ③>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。
なんだか、乱読したなあ、という月の、その3。
定期的に図書館で手を伸ばす女性作家さんたち。


『夜明けの縁をさ迷う人々』小川洋子
短編集。
『曲芸と野球』しかちゃんと読めなかったけど、
おもしろかったです。

(不思議で、風変わりな、9つの短編集。
 図書館で借りたんです。
 2週間でぜんぶ読めなかったんでしょうね。図書館あるある。
 小川洋子さんは、全作読みたいと思える「好き」感。
 そういう意味で、読み急いでないとも言える。
 いつか、ぜんぶ読む。と思ってるので)


『ざらざら』川上弘美
ステキ短編集。
この人の文章を読むたびに、
こういうお話しを書けるようになりたいなあと思う。
きっとすごく難しいことだけど。

(恋愛にまつわる23篇の短い物語。
 短編というより、ショートショートという感じなので、
 手元に置いて気晴らしにちょこちょこ読むのに良い一冊。
 新潮文庫の川上弘美作品は、表紙のデザインが
 どれも良い感じで好きです)


『45°』長野まゆみ
(メモなし。
 ちょっとダークで、不思議で、少々モヤっとする短編集。
 各章の記号的なタイトルが、いい感じ意味深。

 『11:55』『45°』『/Y』『●』『+-』『W.C.』『2°』『×』『P.』

 4篇目は「黒星」。5篇目は「加減」。7篇目は「フォリオ」
 8篇目は「閉じる」。9篇目は「ピードット」と読む。

 「フォリオ」は二つ折りにした紙の意味で、二世帯住宅のお話し。
 「閉じる」は葬儀社の遺品整理のお話し。
 「/Y」にはY字になっている三叉の橋がモチーフとして登場します。
 どのタイトルも、なんとなーく物語のキーワードになってるのが
 おもしろいです。
 ピードットはちょっとわからなかったけど、
 数学物理でいつも逃げてる点Pなのかな?
 いつもの作風と違う感じですが、この短編集は好きです)


『お友だちからお願いします』三浦しをん
エッセイ集。
三浦しをんはエッセイが本当におもしろい。

(いい意味で直木賞作家とは思えない
 力の抜けたエッセイ。
 ジャージとポテチが似合う感じ。
 ほんと好き)
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【読書メモ】2014年6月 ②

2020-12-14 15:50:56 | 【読書メモ】2014年
<読書メモ 2014年6月 ②>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。
なんだか、乱読したなあ、という月の、その2。


『クラインの壷』岡嶋二人
期待した分だけがっかり。
悪くはないのだけど、
バーチャルとリアルが入り交じってどーのこーの、という話しなら
ちょっと前に読んだ『完全なる首長竜』の方が
ラストの盛り上げ方が上手だったなあと思ってしまった。
といいつつ、この設定で1989年初出ってすごくないか。
すごいわ。
でもやっぱりエンディング尻窄みかなあ。うーん。


『刑事の墓場』首藤瓜於
『脳男』の作家さん。
印象が違う作品だけど、おもしろかった。
エンタメ的というか、実写向きなんじゃなかろうか。


『まほろ駅前番外地』三浦しをん
元ネタというか一冊目というか、の
『まほろ駅前多田便利軒』を読んだのが昔すぎて
設定をすべて忘れたので、このスピンオフやらの短編集、
理解できないところが多かった。

(7年空いてますから。そりゃ忘れるよね…。
 『まほろ駅前番外地』は、直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』の
 スピンオフ短編集。
 第一作に出演したサブキャラたちが主人公のお話しがほとんどです。
 さすがに曽根田のばあちゃんとか、覚えてないよ…。
 まあ、ストーリーがうまいので覚えてなくても楽しめますけど!ただの言い訳だけど!
 やっぱり覚えていた方が楽しめると思うけど!)


『星降り山荘の殺人』倉知淳
(以下、ネタバレなので反転文字です)
探偵役を誤解させるところで見事にひっかかった。
けどなあ…。という感想。
スターウオッチャーの身の上話しをした段階では
殺人は起きてなかったんだし、
この伏線の回収を放棄するのは雑ではなかろうか。

(ここまで)
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中島京子の『長いお別れ』ゆっくりお別れをする

2020-12-11 12:42:02 | 日記
中島京子の『長いお別れ』を読みました。
認知症を発症した父と家族との
10年に渡る「ながいお別れ」です。

最初は、「長いお別れ」と言えばチャンドラー でしょ!
と思っていたのですが、
マーロウの「長い間ご無沙汰」する感じと、
こちらの「長い時間をかけてお別れ」する感じは
だいぶ異なりますよね。
似て非なるもの、絶対的に。

難しいテーマに切り込んだなあと思いましたが、
各篇が軽妙なタッチで描かれていて、
さすがの中島京子です。

70代の母も、気もちがパワフルで読んでいて励まされる。
もちろん現実の日々は、辛く厳しいものだと思うけれど、
疲弊のリアルを描いて読者を疲弊させることが
小説の仕事ではないと、私は思う。

ふむふむ、ほうほう、と
軽快な文章と飄々とした人間臭さとで
素直に読み進められました。

とはいえ30代40代である三姉妹たちの家庭や仕事と、
実父の介護との距離感。
他人事だと思って読めない点も多々ありまして。
ドキッとしてグサっときたり。

ちょっと週末、ご機嫌伺に行こうかと思います。はい。
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【読書メモ】2014年6月 ① 米澤穂信から西澤保彦へ

2020-12-07 13:22:57 | 【読書メモ】2014年
<読書メモ 2014年6月 ①>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。
なんだか、乱読したなあ、という月です。
4月あたりから色々と読んでいた米澤穂信がここら辺でひと段落。
6−7月で西澤保彦を手当たり次第読み漁ります。
わかりやすいですね笑


『追想五断章』米澤穂信
おもしろかった!
内容もいいけど、タイトルもいい!
作品内の断章の文章も好きだ。すごくいい。

(作中で、主人公が“結末のない5つの掌編”を探し求めるうちに
 過去の事件も見えてきて…という連作短編集。
 ちょっと暗めのトーンで、謎の答えも読者に委ねる感じ。
 10代青春ミステリー系の作品とは雰囲気が違うので
 賛否両論あるようですね)



『春季限定いちごタルト事件』米澤穂信
うーん、思春期の自意識過剰な云々が胸焼けする。
高校生モノはもういい。

(思春期の話が苦手なんですよ。
 自分のアレコレを思い出して悶絶するから。
 というわけで米澤穂信という話題の作家の話題作が
 10代青春ミステリだと知っていたものの、
 それじゃないノンシリーズのヤツばっかり読んでたわけだ笑
 で。
 そろそろ読もうかなと思って手に取りました。
 <小市民>シリーズと呼ばれている高校生男女のお話し。
 日常の謎の連作短編。
 推理力を隠して小市民として生きようとする主人公。
 という設定が、もう、10代っぽい自意識過剰で無理ですすみません…)


『七回死んだ男』西澤保彦
すごくおもしろい。
トンデモSF設定ミステリ。
うまいなあと思う。

(めちゃくちゃおもしろい!!
 西澤保彦の初期傑作というか、出世作というか、
 私的トンデモミステリ大賞だな!!
 主人公が「特定の日をループする体質」というトンデモ設定で、
 オリジナルの1日で起きなかった殺人が、なぜか、
 2巡目から起きてしまう。なんで?!という話し。
 トンデモ設定だし、親族のどろっとした人間関係もあるのに、
 軽快なタッチで楽しく読める。すごい。おすすめ)


『彼女が死んだ夜』西澤保彦
西澤作品のなかでは一番好き。
SF無しシリーズ。
二転三転するストーリーづくりが上手なんだなあと
しみじみ思う。

(<タック・タカチ>シリーズもしくは<匠千暁>シリーズと呼ばれている
 大学生四人組が酒を延々と飲みながら延々と推理合戦する
 最高のシリーズです(初期だけの設定だけど)。
 短編であっちこっちに時間が前後したりする上に
 作品によっては版元が異なるという事情もあり。
 出版順ではなく、作品内の時系列順で読むのがオススメです。
 『彼女が死んだ夜』
 『麦酒の家の冒険』
 『仔羊たちの聖夜』
 『スコッチ・ゲーム』
 の順番で読めばOKです。
 さらに登場人物の未来が描かれる短編集2冊
 『解体諸因』『謎亭論処』
 まで楽しめれば万々歳!!
 それ以降は、酒の量と楽しい推理合戦が減少しますので
 個人的嗜好で言ったら、まあ、読んでも読まなくても、まあ)
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『クアトロ・ラガッツィ』史料から見る天正遣欧少年使節

2020-12-02 12:03:51 | 日記
『クアトロ・ラガッツィ ー天正少年使節と世界帝国ー』
集英社文庫の上下巻で読みました。
なかなかのボリューム!!

作者の若桑みどりさんは西洋美術史の教授だった方で、
この作品は第31回大佛次郎賞受賞作。

というわけで、小説ではないです念のため。
(大佛次郎賞はたまに小説も受賞するけど
 ほぼほぼ歴史や評伝系の賞って感じですよね)

西洋の歴史に詳しい作者ならではの、
西洋側に残された史料を踏まえて眺めた16世紀前後の日本です。

私は天正少年使節の4人に興味を持って読み始めたんですが、
上巻3分の2くらいまで(400ページ以上!)は登場しません。
戦国時代の日本に宣教師たちが如何にしてやってきたか、
当時を学ぶパートです。
長い!

ちょっとくじけそうになった笑
ざっくりでも登場人物表とかあったらよくないですか?

ザビエル:
1549年に来日した最初の宣教師。
スペイン・ポルトガルのお家芸「布教→征服」は、
日本では得策ではないと報告した。ありがとう。
とはいえ、本当は中国に行きたかったのでさっさと退場する。

アルメイダ:
最初期にやってきたポルトガル人宣教師。
いいひと。
病院や学校つくりたい!そのためにお金必要!
ということで医学の才に加えて商才を爆発させる。

ルイス・フロイス:
1563年の来日から死ぬまでの36年を日本で過ごす。
その割に、日本人を見下している言動が多いんだけど。
ポルトガル人。
報告魔。手紙魔。

カブラル:
最初期のイエズス会布教長で、非常に征服者的思考の人。
権力者を改宗させて領民一気にキリスト教化!という垂直型布教スタイル。
日本の言語風習に興味がなく、「高度な」自分たちの文化に
合わせることを強要する人。日本語も話せない(学ばない)。
何しに来たの?

ヴァリニャーノ:
超いいひと。イタリア人。巡察使として来日。
スペイン・ポルトガル人が何かと征服的なのに対して、
イタリア人は文化教養的な傾向がある。
だからルネッサンスが花開いたんでしょうね。

この5人の性格と、
信長怖いよねイケイケだよね!というあの時代の雰囲気を
掴めれば、長い導入もいける気がします。

そしたら天正少年使節の4人が登場するよ!
メディチさんにもフェリペ国王にも、
もちろん教皇にも会えちゃうし舞踏会にも出ちゃうよ!!

そして後半、帰国後にさらに苛烈になっている禁教令。

秀吉の情緒不安定でヒステリックっぷりも怖いけど、
家康の「断固」感も超怖い。
弾圧や拷問が過酷になるのは家康の時代になってからってのが
怖さマックスですよ。

若桑さんは学術の人なので、
想像ではなく史料に基づく事実を書くと明言していますが、
ラストは、ちょっと物語的な描写です。
(というかちょこちょこと想像や解釈が入ってますが)

と思っても、やっぱり涙なしには読めないラスト!!!
ジュリアン!!!

歴史において無名だろうがなんだろうが、
強い意志をもって自らの人生をまっとうした人は
その人生においてヒーローなのである。と。
4人それぞれの人生が、当時を生きた全ての民衆の人生が、
まっすぐに肯定されていると思う。

途中でくじけそうになったのも忘れて感動した。
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