思惟石

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ハミルトン『解錠師』おもしろかった

2018-12-19 16:04:25 | 日記
ちょっとタイトルで損している気がしますが、
そんなことは関係なく華やかな受賞歴をお持ちの
スティーヴ・ハミルトン『解錠師』を読みました。

このミステリーがすごい! 2013海外編 第1位。
週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門 第1位。
MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など
世界のミステリ賞も獲得しているとのこと。
すごいですね。

あらすじは、
8歳のときの事件がきっかけで声を失った主人公マイクルが、
ひょんなことからプロの金庫破りになってあれこれあって…
そんな自分の人生を振り返って語ります。

というあらすじだと、長いスパンでの成長譚かと思うのだけど、
実際に語られるのはほとんど一年ちょっとの出来事です。
17歳と18歳。
高校2年生の普通の少年が恋をしつつ
不穏な世界に徐々に巻き込まれてしまう話しと、
プロの解錠師として犯罪者たちと仕事をしながら
ずぶずぶ泥沼に溺れつつどうにか脱出を試みる話しが、
交互に語られています。

たった2年弱の凝縮された期間の話し。
それがまた、密度高いなあ…って感じの読み応えである。

ミステリというより、成長譚且つ恋愛ストーリーな気もするけど、
後半の疾走感はハラハラしたしおもしろかった。
読書中も楽しいですし、読後感も良い感じです。
人に薦めやすい良品。

しかしまあ、奇跡の少年で声を失っていて美少年で
絵が上手くて金庫破りもできて初恋も成就しててって、
なんかマイクルのスペックすごくないか。

あと、しつこいですが、タイトルで損してると思うけど、
原題も『The Lock Artist』なのでしょうがないのかな。
翻訳は越前敏弥。『ダヴィンチ・コード』で有名な人だそうです。
タイトルでグッと来なかった人には、
ハヤカワ・ミステリ文庫の表紙を参照するのがおススメかと。
やわらかいイラストが小説の内容やトンマナを
よく捉えていると思います。
ハヤカワ・ポケッ・トミステリはちょっとソリッドすぎないか。
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ケイト・モートン『忘れられた花園』

2018-12-19 15:23:23 | 日記
青木 純子 (翻訳)、創元推理文庫で上下巻。

第3回翻訳ミステリー大賞の受賞作。
作者にとっては第二作目の小説だそうです。売れるの早いですね。

1913年、オーストラリアに入港したイギリス船で
ひとり取り残された記憶の無い4歳の少女。
という、謎めいた導入から、2005年の現在、1975年前後、
1903年前後と、年代・場面が切り替わりながら
3人の女性の生き様を軸に、物語が進みます。

とはいえ、本格ミステリって感じではないですね。
場面の切り替わりで、ちょっとした謎の解明がブリッジになったりして、
いい具合に時空が接続して、お話しは進んでいきます。
そこそこページ数がありますが、通勤読書で細切れに読むのに
ちょうどいいテンポ感と密度の物語。

まあまあ面白く読みましたが、気になる部分も多くて、
足し引きすると、平均点に落ち着く感じかな。



以下、ネタバレの感想を書きますよ~



ミステリしすぎないのは良かったけど、
ネルの母親はメアリでは?のミスリード?寄り道?は
要らなかったですよね。
誰もそこに期待していないというか。

イライザがどうなったか、という点にも終始一貫して
想像力を働かせなさすぎではないでしょうか。
「なぜおばさまは4歳のネルを見捨てたのか」という思考から
動けないのは、ちょっとどうかと。
船に戻れない事情・事故が発生した。という仮説を
まるごと放置したままエンディングまで行くのは
不自然だと思うのだけど。

というマイナスがありつつ、3つの時代の3人の女性の物語の
並走感は良かったです。
飛び過ぎて混乱することもなく、スッと読み進められた。

まあ、星みっつ、かな。
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