思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

会社で断捨離。

2017-10-19 10:34:59 | 日記
オフィスのフロア移転に伴って、
10年を超える会社員生活で溜まりに溜まった
雑多なものたちを断捨離しまくっています。

世知辛いことに、引っ越しの後のフロアでは
個人スペースが縮小されるとか……。
で、捨てるにはしのびないものたちは
段ボールに詰めて自宅に送ることに。

仕事関係でいただいたグッズとか、
資料で買った本とか、単なる私物の本とか。
意外と多い。

というわけで自宅にて、
週末指定で届いた段ボールを片付けていたところ、
案の定ですよ。

なんで、同じ本が2冊あるの?

という案件が多数発生しました。

チャンドラーは、まあ、しょうがないですよね。
村上春樹訳もいいけど、清水俊二氏の訳も捨てがたい。
というわけで重複してもいいじゃないですか。
『長いお別れ』と『ロング・グッドバイ』の読み比べ、楽しいじゃないですか。
と思ったら、村上訳の『リトル・シスター』が2冊あるじゃないか。
ホントに自分のポンコツっぷりには我ながら惚れ惚れします。

エッセーなんかは、タイトルが曖昧になりがちだから、
重複やむなしって感じですよね。
丸谷才一の『快楽としてのミステリー』は
タイトルも中身もよく覚えている方ですが……。
本棚にあるかどうかは忘れていたらしい。

純然たる重複ではありませんが
『ペンギン・ハイウェイ』は単行本と文庫で
2冊ありました。
これはね、うすうす気づいてましたよ!
でも通勤電車で読むなら文庫でしょ!って思って
ついゲットしちゃったんです。
もちろん単行本も読んだけど。

あとは剣客商売の「2」とか、坂の上の雲の「3」とか、
なぜ、そこだけ?
という謎の半端本も多数。

週末はブックオフで小銭を稼ごうと思います。
行くたびに、収入より支出の方が大きいのだけど……。
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『笑う警官』マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー&佐々木 譲

2017-10-17 16:54:17 | 日記
読んだ順番としては、佐々木譲の『笑う警官』が先でした。
氏の「道警シリーズ」第一作。
結構、評判が良いみたいだから…と読んだ割に
私はピンと来なかったんですよね。

物語の背景として、実際にあった北海道警察の大々的な不祥事
というものが据えられているのですが。
説明がちょっと少なかったというか
「みんな知ってる、あの事件だよ~」って感じで。
要するに、世事に疎い私が悪いのだが…。

ミステリとしては、うん、犯人わかる。という程度のものですが、
お話しのメインは警察機構の腐り方や、
それでも一部の人間にはある仲間意識やプライドや、
そこから生じるゆがみだったりして、
それらはとても面白く読めました。

と思ったら、この小説は名作警察小説へのオマージュなのですね。
チャームポイントが、まるごと、本家のものでしたよ。

というわけで本家本元の
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー夫妻による
『笑う警官』を、読んだ次第です。

おお!
こちらは流石です!
面白い!!!

スウェーデン・ストックホルムが舞台の警察シリーズです。
1960年代の作品ですが、古さはあまり感じません。
まあ、スウェーデン事情に疎いってだけですが。
でもね!疎くても楽しめるんです!
そういうのって、大事じゃないですか!
ポンコツな私に優しくしてくれ!!(求めすぎか?)

主人公はマルティン・ベックであるものの、
個性溢れる刑事たちがチームとして動き、
それぞれがそれぞれの特長や主義を持って
地道(ホントに地味!)に捜査を進める物語。

この、地味~な活動の積み重ねが、
侮りがたいほどにリアルだし共感できるし
魅力的。且つ面白い。

1960年代スウェーデンの、反アメリカ感情(反戦感情)とか、
世界情勢に疎い私はふむふむと思って勉強になりました。
訛りで地方者出身だとバレる感じとか
(そもそもスウェーデンの地域に言語差があるなんて
考えてみたことなかった)、
ストックホルムと地方の価値観の違いや偏見に、ふむふむと。

もちろん今も昔も変わらない夫婦間のアレコレや
人間関係の機微にも、ふむふむ。

犯人捜しの本筋だけでなく、全体を通して面白く読めます。
個人的にはグンが裸でミルクつくるシーンが最高に良い。
30秒(だっけ?)でできないじゃない!ってぷりぷりしてるとこ。

ちなみにこちらの『笑う警官』は、
「マルティン・ベック」シリーズの第4作目だそうです。
第1作目の『ロセアンナ』も読んでおこうっと。

ちなみにちなみに道警シリーズは、
単行本では『うたう警官』というタイトルだったそうです。
文庫化の際に、名作に寄せたタイトルに改題したようです。
まったく私的な感想ですが、
元のタイトルにしておいた方が良かったんじゃないのか。
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桜木紫乃『ホテルローヤル』

2017-10-06 13:31:31 | 日記
ホテルローヤルという名前のラブホテルにまつわる、
グランドホテル形式の短編集。

と説明するより、
第149回直木賞受賞作。
と言った方がわかりやすいのかもですね。

それぞれの短編ごとにリンクがあったりしますが、
時系列はバラバラで、さかのぼっていくように収録されています。

最初の「シャッターチャンス」という短編が
べたべたに薄っぺらくて、暗澹とした気持ちになったんですが
(この作家さんの作品として初めてだったので、
 全体の上がりをちょっと疑ってしまった)
「えっち屋」辺りから人物や話しがグッと面白くなりました。

特に「バブルバス」と「星を見ていた」が良かったです。

ラブホテルには後ろ暗くてほの悲しいエピソードしかないのか…
と思わせてからの、「バブルバス」。
たった五千円の余裕ができたからオットを誘ってローヤルに行こう、
と言う恵という主婦。
五千円あれば、あれができる、これが買える、って思いながら、
また五千円が浮いたらまたローヤルに行くよ、って言う主婦。
良いなあ。うまいなあと思います。

心中エピソードを無駄に描写しないで、
ただ起こった事実として行間に入れる感じとかも、
うまいなあと思いました。

しかし、「せんせぇ」からの流れで心中するもんかな。

5点満点としたら、私的には3.5点ですが、
なにはともあれ、読んで良かったとは思いました。さすが直木賞。
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『ピカルディの薔薇』と『虚無への供物』

2017-10-05 14:20:15 | 日記
日本探偵小説の三大奇書って、ご存知でしょうか。
夢野久作『ドグラ・マグラ』(1935年)
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』(1935年)
中井英夫『虚無への供物』(1964年)
と言われています。

それぞれクセが強い上に、それぞれ結構なページ数を誇っています。
私は20代前半のあたら若い時間を棒に振って読破してみました。

三冊ともそれなりに楽しく読みましたが、
まあ、読まなくても人生何も困らない三冊でもあります。
身も蓋もないな…。

そういう話しではなく。

津原 泰水『ピカルディの薔薇』を読みました、という話しです。

怪異と怖い女ばかり寄ってくる猿渡くんというダメ男が
何かと酷い目に遭うという短編シリーズです。
シリーズ第一作の『蘆屋家の崩壊』は
ホラーのなかにミステリ的な要素もあったのですが、
第二作の『ピカルディの薔薇』は
幻想怪奇小説の趣が濃くなっています。

この本に収録されている表題作『ピカルディの薔薇』が、
『虚無への供物』へのオマージュ作品らしいのです。

もちろん、ポンコツな私は、一読して気づきませんでした。
安定のポンコツ感!

というわけで『虚無への供物』を見返してみると、
モチーフがふんだんに盛り込まれているようです。

以下、『ピカルディの薔薇』のネタバレってほどでもないですが
詳細に触れます。

作中で人形作家の星くんが育てている薔薇の品種名
「オフランド・オゥ・ネアン」は
『虚無への供物』で氷室紅司が育てていた試作品の薔薇の名前。
正確には、咲いたら命名しようと考えていた名前ですが、
彼は連続殺人の被害者になってしまうので
作中では未完成だったはず。
猿渡くんのいる世界では品種改良は成功したようです。
良かったね。

また、作家である猿渡とその編集者である奈々村女史が
バーで「1954年」のできごとをテンポよく列挙しあう
くだりがあるのですが。
1954年は『虚無への供物』の舞台となった年ですね。
洞爺丸の事故についてだけ会話が踏み込んでいるのも
意識してのことでしょう。
もちろんバーで聴いてる音楽はシャンソンです。

ちなみに編集者の奈々村女史は、『虚無への供物』に出る
素人探偵・奈々村久生の姪という設定のようで。
珍しい苗字だと思ったら、そこから来ていたのか。

という感じで『虚無への供物』とのリンクが面白いので、
こういうときに三大奇書なんぞというものを
読んでおいて良かったな(20代の花ざかりに!)と思います。
思うようにしています。

星くんの思考はイマイチわからなかった。

短編作品としては白鳥社長の出る二本が良かったです。
『籠虫花』と『フルーツ白玉』。
蛭のエピソードを伯爵が一言で台無しにする感じ、
共感を覚えます。
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高野和明ふたつ『13階段』『ジェノサイド』

2017-10-04 12:54:01 | 日記
だいぶ前に『グレイヴディッガー』を面白く読んで、
壮大なウソ設定が上手なエンタメ力高い人、
という印象がありました。
(連続殺人のモチーフとなった中世イギリスの伝説が
 リアリティのある創作なんです。すごい)
作品ごとに社会的なテーマを扱ってる人でもあります。

で、他作品も読んでみた、という次第。

『13階段』
第47回(2001年) 江戸川乱歩賞受賞。
これがデビュー作だそうです。
すごいな…。
ミステリとしてとても面白い上に
現代日本の死刑制度についての細部が
ものすごく勉強になりますし、色々考えさせられます。
どうでもいい評価ポイントですが、
通勤読書人の私にとって、文量もぴったりでした(意外と大事)。
ミステリ好きには、途中で筋が読めてしまうかもしれませんが、
そういった読みやすさも含めて、良いと思います。

『ジェノサイド』
第65回日本推理作家協会賞。
第2回山田風太郎賞。
2012年版このミステリーがすごい!1位。
2011年週刊文春ミステリーベスト10・1位。
賞歴が華やかですね。
このご時世に100万部突破したベストセラーでもあるようです。
創薬科学、進化論、軍事技術、生物学、人類史、戦争史、政治…
広範囲のテーマと専門的知識がギュッと詰まって
しかもパラレルストーリーでそれぞれが良い感じに
謎を提示したりヒントが出てきたりして盛り上げる。
プロットすごい…。
おまけに初出が連載ですって!
よくこんな壮大な物語を連載する気になったな…。
とことん詰めてからのスタートだと思いますが、
どこかで矛盾やら軌道修正したい箇所やらが出たら
どうするんでしょう。
なんてことを考えるような矮小な頭脳だったら
こんな大作は書かないと思うけど。
うむ、大作です。
すごいわ…。
と言いつつ、ゲリラの暴力描写と、少年兵の辺り、
あと権力が絡む政治的諍いの愚かしさは
読んでいて辛かった。
人間が愚かだってことは分かりましたから、
もう勘弁してください、という気持ちになりました。
なぜ、唯一の趣味である読書の時間に
こんなにつらい気持ちを味わわねばならんのか、と。
いや、もちろん、立派な大作ですよ。
ただ、ちょっと、辛かったな。


蛇足ですが、ネタバレ込みの感想も。

『13階段』
純一の過去はなんとなく察しがついていましたが、
それはさておき、サウスウインドベーカリーは、
純一が開店するってエンディングではないの!?
開店しないのかよ!
そこの予想は、裏切るんだね!!
実家の手伝いは開店資金を貯めるためだよね!
おい!!!

『ジェノサイド』
ハイズマンもルーベンスも、
そこまで察したなら日本に来ればいいのに。
エマとアキリを探しに。
そしてミックはなんであんなに簡単に退場させられちゃったの?
作者が愛せなかったから?
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