思惟石

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高野和明ふたつ『13階段』『ジェノサイド』

2017-10-04 12:54:01 | 日記
だいぶ前に『グレイヴディッガー』を面白く読んで、
壮大なウソ設定が上手なエンタメ力高い人、
という印象がありました。
(連続殺人のモチーフとなった中世イギリスの伝説が
 リアリティのある創作なんです。すごい)
作品ごとに社会的なテーマを扱ってる人でもあります。

で、他作品も読んでみた、という次第。

『13階段』
第47回(2001年) 江戸川乱歩賞受賞。
これがデビュー作だそうです。
すごいな…。
ミステリとしてとても面白い上に
現代日本の死刑制度についての細部が
ものすごく勉強になりますし、色々考えさせられます。
どうでもいい評価ポイントですが、
通勤読書人の私にとって、文量もぴったりでした(意外と大事)。
ミステリ好きには、途中で筋が読めてしまうかもしれませんが、
そういった読みやすさも含めて、良いと思います。

『ジェノサイド』
第65回日本推理作家協会賞。
第2回山田風太郎賞。
2012年版このミステリーがすごい!1位。
2011年週刊文春ミステリーベスト10・1位。
賞歴が華やかですね。
このご時世に100万部突破したベストセラーでもあるようです。
創薬科学、進化論、軍事技術、生物学、人類史、戦争史、政治…
広範囲のテーマと専門的知識がギュッと詰まって
しかもパラレルストーリーでそれぞれが良い感じに
謎を提示したりヒントが出てきたりして盛り上げる。
プロットすごい…。
おまけに初出が連載ですって!
よくこんな壮大な物語を連載する気になったな…。
とことん詰めてからのスタートだと思いますが、
どこかで矛盾やら軌道修正したい箇所やらが出たら
どうするんでしょう。
なんてことを考えるような矮小な頭脳だったら
こんな大作は書かないと思うけど。
うむ、大作です。
すごいわ…。
と言いつつ、ゲリラの暴力描写と、少年兵の辺り、
あと権力が絡む政治的諍いの愚かしさは
読んでいて辛かった。
人間が愚かだってことは分かりましたから、
もう勘弁してください、という気持ちになりました。
なぜ、唯一の趣味である読書の時間に
こんなにつらい気持ちを味わわねばならんのか、と。
いや、もちろん、立派な大作ですよ。
ただ、ちょっと、辛かったな。


蛇足ですが、ネタバレ込みの感想も。

『13階段』
純一の過去はなんとなく察しがついていましたが、
それはさておき、サウスウインドベーカリーは、
純一が開店するってエンディングではないの!?
開店しないのかよ!
そこの予想は、裏切るんだね!!
実家の手伝いは開店資金を貯めるためだよね!
おい!!!

『ジェノサイド』
ハイズマンもルーベンスも、
そこまで察したなら日本に来ればいいのに。
エマとアキリを探しに。
そしてミックはなんであんなに簡単に退場させられちゃったの?
作者が愛せなかったから?
コメント
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