思惟石

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『ザリガニの鳴くところ』ミステリではなく、湿地文学です

2022-06-03 14:18:37 | 日記
『ザリガニの鳴くところ』
ディーリア・オーエンズ
友廣純:訳

冒頭でいきなり死体が見つかるので
なんとなくミステリ的な盛り上がりを期待してしまったが、
これはミステリではなく「湿地純文学」です。

大事なことなのでもう一度言いますが、
これは
ミステリではなく!!!
湿地純文学!!!です!!!!

はい。文学ね。

湿地の小屋で孤独に育つ少女カイアの成長と、
湿地や沼地の生き生きとした描写を読む本です。
ちゃんとそういうつもりで読むと、とっても良い本です。
(ミステリ脳で読むんじゃない!!ということです。しつこいけど。)

カイアの孤独や、それでも人の温もりを求めてしまう寂しさは、
しみじみ読んでしまいますね。
良い出会いもあるけど、悲しい別れもたくさんある。
出会ってしまうと、期待もしちゃうよね。人間だもの。
カイアの愛憎の話しでもある。

潟湖(せきこ)という表現は初めて見たんですが、
(「かたこ」とも読むらしい。ラグーン。海から砂州で区切られた湖のこと)
沼地・湿地の暮らしの描写もステキです。
作者は動物学者でフィールドワークの本も出版しているので、
本職なんですね。

1950年代アメリカの、有色人種へのゴリゴリの差別意識と、
ヒエラルキー下部の白色人種へのネットリした差別意識は、
なるほどなあ、と思いました。

ミステリ的な部分に関しては、「だよね!」というものだから
期待してはいけない。期待したわたしが悪い。
しつこくてすみません。

2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位

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