思惟石

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本棚に『家守綺譚』

2017-07-19 15:45:16 | 日記
読書は好きなのですが、
家にスペースがあまりないので
蔵書を増やさないように努めています。

努めてはいるものの…。
って感じですが。

そんな私の本棚でレギュラー入りしているのが
梨木果歩『家守綺譚』。
好きなんです。

売れない物書きの綿貫征四郎は、旧友の生家の家守をしている。
庭を中心とした近在の四季と植物と、怪異。
28の掌編はそれぞれ季節の植物がタイトルになっていて、
綿貫の日常と、その周辺に起こるちょっとした不思議が
静かに、品よく、滋味のある文章で描かれています。

綿貫は、そこそこ若いのに隠居老人みたいで、
不思議なことも犬のゴローも編集者の差し入れも
「そいうこともあろう」といっしょくたにして受け入れる。
懐が深いように見えて、あまり深く考えてないだけな気もするけど、
どうでも良いことをマジメに考えたりもする。
こんな人が隣人だったら、私もせっせと煮物を届けて
面白がってやりたいです。隣のおかみさんになりたい。

基本は、「家守」なので家周辺のお話しで、
その箱庭っぽい感じもまた、愛しい。
ずっと手のひらの中で愛でていたい。
庭の百日紅の幹がすべすべしているのものだから
撫でてみたところ、百日紅に「懸想される」とか、
庭を通る疎水にカッパが迷い込むとか、
ついでに床の間の掛け軸から亡き友がボートを漕いで
やってくるとか、綿貫くんニートなのに忙しすぎ!

そんなニートがせっせと山歩きをする続編が
『冬虫夏草』です。
私は「おうち篇」とも言える第一作の方が好みですが
「おでかけ編」な続編ももちろん大好きです。
イワナの夫婦の宿、行きたいです。
ところで綿貫先生、原稿を待たせすぎではないのか。

ちなみにこの物語の舞台は琵琶湖の近くから
京都山科にかけてらしいですね。
時代設定は100年ほど昔ですが、
おもしろい民俗学的なエピソードや珍しい地名が
たくさん出てきます。
それも実在するのでしょうか。

私は、関東の田舎の生まれ育ちで
西の地理にも文化にも疎いこともあり
一種のファンタジーとして読んでいる感があります。
地元の方が読むと、また違った景色が見えるのかも。
うらやましい。

何気に最高学府を出ているらしい(京大のようです)
綿貫の同級生は面白い人が多く、
友人のひとりである村田くんのトルコ留学記が
『村田エフェンディ滞土録』です。
こちらも日常に同居する愛らしい不思議がいっぱい。
異国情緒も加わって、良い味わいです。

この一味みたいな友人が学生時代に得られたら
良いなあと思います。
ないものねだり。

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