思惟石

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中島京子『夢見る帝国図書館』一冊で3度おいしい!

2021-03-03 10:56:56 | 日記
中島京子『夢見る帝国図書館』。
優勝。
あれ?この小説まだ何も受賞してないの?
すでにひと通りの文学賞はお持ちの作者ですが…
こちらに何かください。誰か!山田くん!

はい。

小説家の<わたし>が語る、
上野の図書館が大好きな喜和子さんという変わったおばあちゃん
(と言っては失礼なくらい若々しいけれど)のお話しです。

喜和子さんという不思議な女性の物語に、
<わたし>が喜和子さんから聞き取ったと思われる
帝国図書館の歴史話しが挿入されている。

この作中作が、最高に良い!
真面目にとぼけた文書で、史実はしっかりしている。

永井荷風の父・久一郎氏の憤激。
図書館に通う綺羅星のような一校生徒たち
(和辻哲郎、谷崎潤一郎、菊池寛、佐野文夫、芥川龍之介)。
図書館が恋した樋口一葉(半井桃水ダメ男説には同意だ)。
吉屋信子の日比谷図書館・中条百合子の帝国図書館。
すごく良い。
すごく面白い!!

後半、明らかになる喜和子さんの過去は
ザ・封建時代な女性の扱われ方を浮き彫りにしていて。
それは物語の底に静かにずっと流れているテーマでもある。
ちょっとつらい。
昭和の田舎生まれの私にとっては未知ではないというか、
思うところがたくさんある。

とはいえもちろんジェンダー小説ではないのです。
ものすごく上質な物語の上に、
図書館と文学と政治との知識が凄い濃い。凄い密。リッチ!!
作者は本当に博覧強記なんだな。

優勝!!!

ちなみに単行本の表紙ですが、
以前ツイッターで見かけていいなと思っていた
「路地裏シェルフ」の写真でした。

単行本の背表紙サイズの路地裏ジオラマ。
本棚に秘密の通路が拓ける風景がつくれちゃう!素敵!
mondeさんというアーティストの作品だそうで、
量産はされていないのだけど、見ると欲しくなる。

喜和子さんのおうちも、上野・芸大を抜けた向こう、
路地裏にある元長屋の狭小2階建。
玄関のタタキ脇の狭い台所、その上にかかる急な階段、
6畳一間にちゃぶ台、銭湯通い…、憧れる!
私もそこの2階に下宿したい!!

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